眼瞼下垂症ブログ|機能的な眼瞼形成手術を追究して

眼瞼下垂症の病態生理

眼瞼下垂症とは、まぶたが下がって視界が狭くなる病態のことを言います。

眼瞼下垂症を機能解剖、神経生理学で見る

眼瞼下垂と解剖

まぶたを持ち上げる筋肉を眼瞼挙筋(がんけんきょきん)といいます。

眼瞼挙筋は眼窩(眼球が収まっているソケット状の構造)の奥から眼球の上を回り込んでまぶたの縁(ふち)につながります。

 

横顔眼窩

まぶたの解剖(横から)

眼瞼の解剖

まぶたの解剖。眼瞼挙筋は目の奥から目の玉の上を回り込んでまぶたの縁に繋がる

眼瞼挙筋が収縮して縮むと眼瞼挙筋腱膜(②)を通してチカラが伝わり、まぶたが持ち上げられます。

一方、眼瞼挙筋腱膜はもともとルーズな構造をしています。繋がりかたに滑り(あそび)があり、眼瞼挙筋が収縮してもダイレクトにまぶたが持ち上がるのではなく、少し遅れてまぶたが持ち上がります。

この滑り(あそび)が年月とともに大きくなります。

歳をとると挙筋腱膜が劣化し、伸びてしまいます。進行すると、挙筋腱膜がまぶたの縁にある瞼板(けんばん)からはずれます。

その結果、眼瞼挙筋の力が伝わりにくくなり、まぶたが持ち上がりにくくなります。

この病態を腱膜性(けんまくせい)眼瞼下垂症(がんけんかすいしょう)といいます。

初期は(おでこにしわを寄せて)眉を挙げ、眼瞼挙筋を過収縮させてまぶたを持ち上げます(代償期)が、進行するとまぶたが下がり、視野をさえぎるように(非代償期)なってきます。

開瞼(かいけん;目を開けること)の抵抗成分(靭帯、脂肪、眼輪筋など)が発達しているとまぶたを持ち上げる力に対してブレーキがかかります。結果、まぶたが重く感じられます。これも広義に眼瞼下垂に含めることも有ります(議論も有ります)。

症候性眼瞼下垂症

腱膜性眼瞼下垂症ではなく、病的に眼瞼下垂になることがあります。眼瞼挙筋が病的に麻痺したり弱ることによります。

  • 筋原性疾患:重症筋無力症、ミトコンドリア脳筋症など
  • 動眼神経麻痺:脳血管障害、脳腫瘍、ウィルス感染症など
  • 神経変性疾患:ニューロパチー、ジストロフィ

などです。生まれつきにまぶたの動きが弱い場合を先天性眼瞼下垂症といいます。

眼瞼下垂と神経生理学

上眼瞼負荷に対する反射のメカニズムの存在により、関連する筋肉が収縮するため、無意識下に筋緊張が起こります。

まぶたの重さを感知するセンサーが眼瞼挙筋腱膜の裏(結膜側)にあります。これをミュラー筋と呼び、これが筋紡錘(注1)を持たない眼瞼挙筋の筋紡錘としての役割を担っています。われわれヒトが開瞼(まぶたを開く)する際には、まず眼瞼挙筋の速筋がミュラー筋を刺激します。ミュラー筋に生じたシグナルが脳幹を介して眼瞼挙筋の遅筋(注2)を収縮させ、開瞼を維持します。

加齢や物理的な刺激により腱膜性眼瞼下垂症が進行すると、ミュラー筋にかかる伸展ストレスが大きくなり、ミュラー筋からの信号が脳幹を介して前頭後頭筋を収縮させます。そのために肩こり・筋緊張性頭痛がおきます。

また、ミュラー筋からの信号は青斑核(注3)を介して交感神経を刺激します。さらにミュラー筋自体を収縮させようと歯をかみしめて歯根膜を刺激し、交感神経を賦活します。このことが慢性の交感神経刺激症状(不安障害、めまい、睡眠障害)を引き起こすと考えられています。

つまり、腱膜性眼瞼下垂が進行すると、これまでの眼瞼挙筋のチカラに頼れなくなったので前頭筋やミュラー筋の力に依存するようになります。生体の代償機構が働くようになります。

生まれつき眼の細い、いわゆる東洋人らしい目つきをした人はまぶたを持ち上げための負担が大きく、若い時から症状が出現しやすいと予想されています。

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◎Eyelid Opening with Trigeminal Proprioceptive Activation Regulates a Brainstem Arousal Mechanism.
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注1)筋紡錘:筋肉の伸びを感じるセンサー。たとえば膝蓋腱反射はこれを刺激することにより起こる。

注2)速筋、遅筋:速筋に対して遅筋は疲れない筋肉。赤身の魚は遅筋優位。

注3)青斑核:ノルアドレナリンを放出するいわゆるアクセル役。

腱膜性眼瞼下垂症になる原因

挙筋腱膜の遠位端(端っこ)は瞼板と瞼板前(あたりの)皮膚と眼輪筋につながります。つながる構造は極めてルーズであり、物理的な刺激で容易に緩んできます。そのため、以下の原因で腱膜性眼瞼下垂が進行します。

  • コンタクトレンズ長期着用
  • 花粉症などのアレルギーでまぶたを擦る癖
  • 化粧をする習慣
  • まぶたの手術(ものもらいの切開、白内障手術)
  • まぶたの怪我

など。

さらに、加齢により挙筋腱膜が劣化して腱膜性眼瞼下垂は進行します。

生まれつき一重で厚ぼったいまぶたのヒトは開瞼抵抗(注4)が大きく、症状が若いとき(中学生くらい)から出現します。

注4)開瞼抵抗:眼輪筋、眼輪筋下脂肪(隔膜前脂肪)、横方向の各種靭帯や眼窩隔膜、挙筋腱膜自体の横方向の緊張など。瞼を開けるための拮抗成分。挙筋の運動をアクセルとすると、開瞼抵抗はサイドブレーキ役。

眼瞼下垂症を疑う徴候

  • ひたいのしわ(まゆをしっかり持ち上げて目を開けているため)
  • 目の落ち窪み・眠たい目
  • あごを突き出してテレビを見る・運転する
  • 肩こり・頭痛
  • コンタクトレンズ長期装用
  • 花粉症
  • 目をこする癖(挙筋腱膜が外れてしまうため)
  • 逆さまつげ
  • 二重の幅が広くなった(一重だったのが二重になった)

セルフチェックで診断できます。

眼瞼下垂症の治療を見てみましょう。

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代表管理人:金沢雄一郎



まぶた治療に特化した形成外科専門医。12年間まぶた治療に専念。まぶた治療経験は1023例。埼玉県でNo.1の手術件数(DPC病院データ)の実績。

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