過去にまぶたの手術をした。だけど「不自然さを解消したい」という女性。医師との過去のやりとりが思い出されるのか、複雑な感情が湧いていることが読み取れます。
彼女が求めるものは何?
どこをどうすれば”不自然さ”を解消できるのか?それを解決したら彼女の心は救われるのか?私は思いを馳せます。
自然さ。
少なくともこれを一言で表現することはできません。いわんや患者さん側がこれを言語にするのは簡単ではありません。
まず大切なのは、今起きている問題を整理すること。問題点を可能な限り抽出し、言語化します。私はこれを”因数分解”と呼びます。
様々な要因の掛け算の結果が、今の表現形。
- 前葉に起きている問題点は?
- 後葉に起きている問題点は?
- 前葉と後葉との連動に問題は?
こうした要素を一つずつ分けて考えます。いろんな要素の掛け算の結果が、今目の前にある「不自然さ」なのです。
a✖︎b✖︎c✖︎d✖︎e=Z(現状)

すると、やるべきことが見えてきます。そして、ストラテジー(戦略)を立てます。
aが不足したらbを補強し…bを強めたらdを少し抑える…。そうやって全体のバランスを調整。そして最後は未知の係数であるe(本人のポテンシャル)が結果を大きく握ります。

プランができたら、それを患者さんと共有。不安の霧が少しずつ晴れてきて、視界が明るくなります。
そして大事なこと。患者さんと執刀医とで80点を目標とすることを共有。100点満点は目指しません。100点に近づくほど大きなリスクを取る必要があるから。極力安全な道を選ぶこと。気持ちの余裕がお互いに生まれます。
さらにこの姿勢にはもうひとつの利点があります。患者と執刀医の価値観のずれを”-20点”で緩衝できます(価値観が完全に一致することはありえない)。
モデルさんその1
「治せるでしょうか…」
重瞼のラインが複数…各々のラインが譲り合うことなく、競い合うように自己主張するのがわかります。
新しい(骨格的、機能的にふさわしい)二重ラインをデザインし、これをしっかり支えることで改善を図りました。上に例として挙げた因数分解と戦略が、本ケースにあたります。改めて見直してみてください。
ひとつひとつ丁寧にクリアしていきます。術後半年。新しいデザインの主張は強いですね。とはいうものの、ここまで強めにサポートしないと他のラインの主張を打ち消すことはできなかったと想像します。


正直なところ、組織不足の中、たった一回の手術でよくぞここまで治ってくれたという、胸を撫で下ろす思いです。未知数(不確定な要素)が多い中、やはり本人のポテンシャルに依存するのがこの類の手術でございます。シェアに協力いただき心より感謝申し上げます。※あくまでn=1ストーリーです。結果は各個人で異なります。
追記「自然な形」とはなんでしょう?(個人的主観)
「手術で自然にする」という言葉には矛盾があります。
「自然であること」はすなわち、手付かずのままの状態であろうと思うのです。つまり、「手術で自然にする」って本質的に矛盾するんですね。正確には、「自然に見えるようにする」「自然ぽく仕上げる」ということです。つまり、人工的な操作の中に「手付かずっぽさ」を盛り込むのです。だから、そこには私の「意図」が反映されるし、ある種の人工的な成果物であることには変わりはないのですね☺️。それでも「自然ぽさ」を追求することが、外科医にできる最大の努力だと考えます。
関連note記事『アンチエイジング手術が求める「自然さ」とは何か?』
眼瞼下垂手術のリスク、併発症(合併症)
<短期的なもの>腫れ、出血、感染、傷の離開、目の閉じにくさ、視力の変化、ふたえの線の乱れ
<長期的なもの>眼脂(めやに)・涙の増加、眩しさ、まぶたの腫れぼったさと赤み、稗粒腫、霰粒腫、縫合糸の露出、目の違和感・ツッパリ感、皮膚のしびれ・痛み、目立つ瘢痕、低矯正・過矯正
<仕上がりに関するもの> 左右差、眉毛下垂・顔貌の変化、まぶたの見かけに対する違和感、眼瞼下垂の再発、眼瞼けいれんの顕在化・悪化
左右眼瞼下垂他院修正手術:60〜87万円程度

