まぶた治療に特化した形成外科専門医が作った眼瞼下垂情報

【眼瞼下垂の原因】病理学的に分類、原因を分析することの重要性

眼瞼下垂症がんけんかすいしょう」と聞くと、加齢現象を連想しますよね。
しかしながら眼瞼下垂の原因はそれだけではないのです。診断によって治療方針は違ってきます。
まぶたが下がってしまった人はいきなり美容外科に行くのではなく、まずは医学的な診断をすることが大事です。
筋肉は動いているのか?神経は機能しているのか?過去に何かやらかしていないか??きちんと見極める必要があります。

先天性、後天性に分類

先天性:生まれつきに「眼瞼下垂」を持つということです。congenital。

  • 眼瞼挙筋自体の異常
  • 眼瞼挙筋を動かす神経のエラー (例:Marcus Gun 症候群)
  • 瞼裂狭小けんれつきょうしょう症候群
  • その他(生まれもった細い目もこちらに分類されることもある)

遺伝性(家族性)のものもあれば、そうでないものもあります。

 

後天性:生まれた時には異常が見つからないが、何かをきっかけに上まぶたが上がりにくくなること。先天性の眼瞼下垂を除いたもの。acquired, involutional。

  • 加齢
  • 外傷
  • 病気
  • 物理的ストレス

などを契機に発症します。

通常の眼瞼下垂手術が対象にしているのはこの「後天性」です。

「先天性」とつくと、親が自責の念に苛まれます。「後天性」とつくと、後悔の念に苛まれます。その点では厄介な言葉だなあと感じます。

病理学的に分類(機械論的に)

まぶたが上がらない原因、要因にフォーカスします。こちらの方が科学的な態度です。

”先天的”とか”後天的”の単語を考えに入れなくなってはじめて、論理的な分類ができるようになったと思われる。

引用:『Bear’s眼瞼下垂』(第4版)

眼瞼下垂の分類

筋原性:眼瞼挙筋やミュラー筋自体のトラブル

まぶたを動かす筋肉そのものが病的でうまく働かない(収縮できない)状態。

外眼筋がいがんきん(目玉を動かす筋肉)が侵されるために複視ふくし(物がダブって見える)になることもあります。

  • 重症筋無力症:夕方になると階段が辛い。アセチルコリンレセプターに対する自己抗体。関連記事1
  • 筋ジストロフィー:筋肉自体の病的変性
  • 眼咽頭ジストロフィー
  • ミトコンドリア脳筋症:慢性進行性外眼筋麻痺を含む。ミトコンドリアの異常によるエネルギー代謝障害。
  • 原因不明の発育異常
内科的治療の効果が期待されるので内科的治療が優先されます。これ以上の効果が期待できないと判断された段階で外科的治療を検討します。

一時的なものとして

  • ボツリヌス毒素注射:眼瞼挙筋の筋弛緩(麻痺)
  • 局所麻酔薬:眼瞼挙筋の麻痺、ミュラー筋の麻痺

これらは薬剤の効果が切れれば戻ります。時間が解決します。

腱膜性:挙筋腱膜の連結のゆるみにより挙筋のチカラが伝わりにくい状態

いわば「アキレス腱が切れちゃった」「スジが伸びちゃった」状態です。ミュラー筋が働いているうちは眼瞼下垂は顕在化しません。

  • 老人性、加齢性
  • 外傷や応力:ケガ、白内障手術、コンタクトレンズ長期使用、切開重瞼術、目をこする癖、むくみやすいまぶた
  • 妊娠後:リラキシンによる膠原線維の緩み、浮腫などによる
これが、多くの人に関係のある眼瞼下垂です。手術治療による改善が期待できます。

神経原性:筋肉を動かす神経のエラー

3番目の脳神経、動眼神経が眼瞼挙筋へ指令を伝えます。その伝達が滞ると筋肉は正常に働けなくなります。もうひとつは交感神経の麻痺で、ミュラー筋の機能も落ちます。

  • 動眼神経どうがんしんけい麻痺:動脈瘤、帯状疱疹、脳梗塞
  • 腫瘍摘出後:涙腺神経切断
  • ホルネル(Horner)症候群:交感神経麻痺(外科手術、神経ブロックなど)
  • マーカスガン(Marcus Gunn)症候群
  • 多発性硬化症
  • ニューロパチー(神経炎):糖尿病、ギランバレー症候群
  • 群発頭痛:自律神経の関与か?
  • SUNCT症候群:自律神経の関与?
内科的治療が優先されるのは筋原性と同じです。しかし、神経切断後などは改善が期待できません。手術治療が検討されます。

機械的、構造的な問題

  • 腫瘍:物理的に開瞼(かいけん:目を開くこと)を邪魔する
  • 瘢痕:やけどやケガのあとで組織が硬くなり、まぶたが挙がりにくくなる
  • 異物:異物が開瞼の邪魔をする。埋没法の糸、木片…など
  • 瞼裂狭小症候群:まぶたの縦方向および横方向ともに狭く短い。
  • 眼球陥凹かんおう(目が落ちくぼむ事):眼窩がんか容積の拡大。相対的な挙筋長の余り。加齢。
  • 皮膚弛緩:皮膚の垂れ下がり(加齢性、前頭筋麻痺による眉毛位置の変化)
  • 生まれつき(遺伝的に)に厚ぼったいまぶた
  • 埋没法重瞼術:まぶたの動きがロッキングされる
  • その他
これらは国家試験に出ません😅見落とされがちな要因です。
医師も戸惑うことがあります。

その他:分類しにくいもの、一過性のもの

  • 炎症による腫脹:虫刺され、打撲、アレルギー
  • むくみ:泣いた後、甲状腺機能低下
  • 眼輪筋がんりんきんの緊張亢進、開瞼失行かいけんしっこう、失調症:眼瞼けいれん、錐体外路疾患、眼球使用困難症

意外にも多いのが眼輪筋の緊張亢進(眼瞼けいれん)です。視野が狭くなってきたのに眉が挙上されていない、しかめつらをしている場合は疑われます。

おわりに

単に「眼瞼下垂」といってもこれだけの要因があるのですね。病気って、ある日突然かかるものもあれば、気づかないうちに少しずつ進行しているものもあります。

おまけに、まぶたの構造の個人差(骨格、性差、年齢、栄養状態…)に大きなばらつきがあります。

だから診断て、簡単ではないのですね。

 

参考

○BEARD’S PTOSIS 『眼瞼下垂』(第4版)Michael Callahan and Crowell Beard メディカル葵出版

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