眼瞼下垂にも種類がある|学術的分類

眼瞼下垂の分類
眼瞼下垂症と聞くと、加齢現象を連想します。しかしそれだけではないのです。診断によって治療方針は違ってきます。まぶたが下がってしまった人はいきなり美容外科に行くのではなく、まずは医学的な診断をすることが大事です。

(1)先天性、後天性に分類する

先天性:生まれつきに「眼瞼下垂」を持つということです。congenital。

  • 上眼瞼挙筋自体の異常
  • 上眼瞼挙筋を動かす神経のエラー (例:Marcus Gun 症候群)
  • 瞼裂狭小症候群
  • その他(蒙古系の元々細い目もこちらに分類されることもある)

後天性:生まれた時には異常が見つからないが、何か(病気や怪我、老化)をきっかけに上眼瞼が上がりにくくなること。先天性の眼瞼下垂を除いたもの。acquired, involutional。

先天性の場合は内科的な治療は存在しません。視機能の発達に悪影響がないか眼科で見てもらう必要があります。
要は眼瞼挙筋が動いているかどうかが注目されます。眼瞼挙筋が動いていない場合は代替の動力源を利用しますが、まぶたの自然な動きには遠くおよびません。

(2)病理学的に分類(機械論的に分類)する

”先天的”とか”後天的”の単語を考えに入れなくなってはじめて、論理的な分類ができるようになったと思われる。『Bear’s眼瞼下垂』(第4版)

筋原性:眼瞼挙筋やミュラー筋の動きが不良

まぶたを動かす筋肉がうまく働かない状態。パワーを発揮できない状態。

外眼筋(目玉を動かす筋肉)が侵されるために複視(物がダブって見える)になることもある。

  • 重症筋無力症:夕方になると階段が辛い。アセチルコリンレセプターに対する自己抗体。関連記事1
  • 筋ジストロフィー:筋肉自体の病的変性
  • 眼咽頭ジストロフィー
  • ミトコンドリア脳筋症:慢性進行性外眼筋麻痺を含む。ミトコンドリアの異常によるエネルギー代謝障害。
  • 原因不明の発育異常
まずは内科的治療の効果が期待されるので内科的治療が優先されます。これ以上の効果が期待できないと判断された段階で外科的治療を検討します。

一時的なものとして

  • ボツリヌス毒素注射:眼瞼挙筋の筋弛緩
  • 局所麻酔薬:眼瞼挙筋の麻痺、ミュラー筋の麻痺

時間が解決します。

腱膜性:挙筋腱膜の連結のゆるみにより挙筋のチカラが伝わりにくい状態

いわば「アキレス腱が切れちゃった」「スジが伸びちゃった」状態です。ミュラー筋が働いているうちは眼瞼下垂は顕在化しません。

  • 老人性、加齢性
  • 外傷や応力:ケガ、白内障手術、コンタクトレンズ長期使用、切開重瞼術、目をこする癖、むくみやすいまぶた
  • 妊娠後:リラキシンによる膠原線維の緩み、浮腫などによる
これが、多くの人に関係のある眼瞼下垂です。手術治療による改善が期待できます。

神経原性:筋肉を動かす神経のエラー

  • 動眼神経麻痺:動脈瘤、帯状疱疹、脳梗塞
  • 腫瘍摘出後:涙腺神経切断
  • ホルネル(Horner)症候群:交感神経麻痺(外科手術、神経ブロックなど)関連記事1
  • マーカスガン(Marcus Gunn)症候群
  • 多発性硬化症
  • ニューロパチー(神経炎):糖尿病、ギランバレー症候群
  • 群発頭痛:自律神経の関与か?
  • SUNCT症候群:自律神経の関与?
内科的治療が優先されるのは筋原性と同じです。しかし、神経切断後などは改善が期待できません。手術治療が検討されます。

機械的、構造的な問題

  • 腫瘍:物理的に開瞼を邪魔する
  • 瘢痕:やけどやケガのあとで組織が硬くなり、まぶたが挙がりにくくなる
  • 異物:異物が開瞼の邪魔をする。埋没の糸、木片、、、など
  • 瞼裂狭小症候群:生まれつきまぶたの縦方向および横方向ともに狭く短い。
  • 眼球陥凹(目が落ち窪む事):眼窩容積の拡大。相対的な挙筋長の余り
  • 皮膚弛緩:皮膚の垂れ下がり(加齢性、前頭筋麻痺による眉毛位置の変化)
  • 生まれつき(遺伝的に)に厚ぼったいまぶた
  • 埋没法重瞼術:まぶたの動きがロッキングされる
  • その他
見落とされがちな要因です。

その他:分類しにくいもの、一過性のもの

  • 炎症による腫脹:虫刺され、打撲、アレルギー
  • むくみ:泣いた後、甲状腺機能低下
  • 眼輪筋の緊張亢進、開瞼失行、失調症:眼瞼けいれん、錐体外路疾患、眼球使用困難症

おわりに

単に「眼瞼下垂」といってもこれだけの要因があるのですね。病気って、ある日突然かかるものもあれば、気づかないうちに少しずつ進行しているものもあります。

さらに、まぶたの構造の個人差(骨格、性差、年齢、栄養状態、、、)がそれに匹敵するばらつきを持ちます。

だから診断て、簡単ではないのですね。

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