こんにちは、形成外科専門医の金沢です。
「切らない眼瞼下垂手術ってなあに?」
最近よく聞かれる質問です。まぶたの裏(結膜側)から糸を通す術式です。まぶたの表の皮膚に切開縫合線の痕が残りにくく、ダウンタイムが短いメリットがあります。
一方、切らない下垂手術の術後修正を求めて受診される方も今までに5名ありました。修正には皮膚切開が必要です。それぞれの術式について、複数の視点から比較・検討します。
眼瞼下垂の各種術式について各項目ごとに比較
ダウンタイムだけでまぶたの術式を比較検討していませんか?
ダウンタイムが短いことは言うまでもなく望まれる要素。一方、後戻りの頻度やその修正手術の難易度も、それぞれに異なります。それらも含めて術前に検討する必要があります。
「この術式が絶対的に優れている」というものはありません。
患者さんのまぶたの状態や気持ち、生活環境などにより、適した術式が選択されます。皮膚切開に抵抗のある人もいれば全く抵抗のない人もいます。
以下は私個人の見解です。担当する医師の知識・技量により、結果はばらつきます。あくまで「一般の形成外科専門医が担当した場合」のものとご理解ください。
眼瞼下垂手術比較表
挙筋前転法 | ミュラー筋前転法 | 上眼瞼リフト | 切らない眼瞼下垂手術 | 経結膜眼瞼下垂手術 | |
別の言い方 | 腱膜固定 | ミュラータック | 眉下切開 | 埋没式下垂手術 | |
手術時間 | 40分〜120分 | 60分〜120分 | 40分〜90分 | 15分〜30分 | 30分〜60分 経皮的アプローチを併用すればその分伸びる |
執刀する医師数 | 多い | 少ない | 中くらい | 少ない | 少ない |
ダウンタイム | 長 | 長 | 普通 | 短 | 短 |
腫れ | 強 | 強 | 普通 | 少ない | 少ない |
後戻り | 少ない | 普通 | 普通 | 多い | 普通 |
再手術の難易度 | 平易 | 困難 | 平易 | 困難 | 困難 |
微調整 | 平易 | 困難 | 中くらい | 困難 | 困難 |
ミュラー筋損傷 | なし | あり | なし | あり | あり |
適応症例 | 限定なし | 限定なし | 限定される | 限定される | 中等度 |
*参考までに、重瞼術(ふたえにする手術)の場合。
注意:これは眼瞼下垂の手術ではありません。
挙筋前転法 | 重瞼術埋没法 | 重瞼術切開法 | |
別の言い方 | 腱膜固定 | 瞼板法、挙筋法 | |
手術時間 | 40分〜120分 | 10分〜40分 | 30分〜50分 |
執刀できる医師数 | 多い | 多い | 多い |
ダウンタイム | 長 | 短 | 普通 |
腫れ | 強 | 少 | 普通 |
後戻り | 少ない | 多い | 普通 |
再手術の難易度 | 平易 | 平易 | 平易 |
微調整 | 平易 | 困難 | 普通 |
ミュラー筋損傷 | なし | 挙筋法はあり | なし |
適応症例 | 限定なし | 限定される | 限定なし |
追記
眼瞼下垂手術やふたえ手術で、「切らない術式」を選択し、結果が思わしくない場合は皮膚切開を用いて修正する必要が出てくるケースが多いです。
したがって、「切らない」手術を受ける際も、もしかしたら「切る」手術が必要になるかもしれない可能性を十分に覚悟する必要があります。
最後に
こんな術式もあるよという情報がありましたらご連絡くださいませm(_ _)m。