ここでいう「他院修正」とは、他院もしくは他の医師が執刀した手術後患者さんの「修正手術」を意味します。
他の医師が執刀した手術の修正を担当することは、多くの医師が敬遠します。その理由はかつて以下の記事で述べました。
「まぶたの修正手術を別の先生にお願いしたけど、嫌がられてるんです」断られることも多いのが眼瞼手術の他院修正です。他院修正(たいんしゅうせい)とは?まぶたの修正手術が必要。しかし、初回(前回)手術の執刀医とは別の医師にその手術[…]
理由として、
「瘢痕組織を剥離(さばく)するのが難しい」
「前の手術までに何がなされているのかが分からない(開けてみるまで分からない)」
というものでした。
つまり、言い換えると
「結果が予測できない」
「手術そのものも骨が折れる」
ということです。
過大開瞼をなおす
「過大開瞼」とは、目が大きすぎることです。まぶたが挙がりすぎることです。その結果、黒目の上の白目が見えて「ギョロ目」になります。
眼瞼下垂の手術後に生じたとすれば、眼瞼挙筋の前転が強すぎたということです。(ミュラー筋の感度が高まりすぎて過大開瞼になることもあります)
自然の経過の中で下がってくることもあります(力が抜けるか、挙筋自体が伸びるか、連結が緩むか)。しかし、修正手術を必要とすることもあります。
過大開瞼の修正手術
前転された眼瞼挙筋を後転します。つまり、引っ張り出して固定された腱膜をシート状に剥がし、腱膜を後退させた位置で瞼板へ固定します。
しかし、問題がひとつあります。挙筋の後転は結果が予測しにくいのです。
手術をすれば必ず傷になりますね。でも、表に見える切開線だけでなく、内部を操作しているので内部も創傷治癒(傷が修復される)のプロセスが起こるのです。
剥がされた挙筋腱膜は周りの組織とくっつきます。それが創傷治癒です。さらに、そのプロセスで「収縮」がおこります。縮むのです。
その結果、眼瞼挙筋(とその周りの組織を含めた)の実質的な長さは短くなり、想定したよりも目の開きが大きくなってしまうのです。
その程度は人それぞれ、個人差が大きく、あらかじめ予測することはなかなか難しい。だから過大開瞼を治すのは一筋縄で行かないことがあるのです。
実際のモデルケース
他院修正の患者さんですが、私が執刀した結果、不幸にも「過大開瞼」となったケースです。
他院で眼瞼下垂症手術を受けた患者さん。経過が思わしくなく、私に会いに来られました。「まぶたが重い」という訴えです。
「他院修正」ですから結果も不安定です。その点を了承いただいた上で眼瞼下垂症手術を行いました。その結果、「右が開きすぎ」の状態で仕上がってしまいました。術直後は揃っていたはずなのに(そういうことはままあります)。
「過大開瞼(開きすぎ)」は見かけ上、「開瞼不足(下がり目)」よりも患者さんの負担が大きいのです。修正が必要です。
そこで、前半で述べた「挙筋の後転術」を計画します。しかし、ここでも問題があります。これ自体が修正手術ですから、またまた結果が予測しにくいという点です。
「やってみる」しかありません。
結果は、「セーフ」。
なんとか落ち着いてくれ、胸をなでおろしたのです。
辛かったでしょうに、身を預けてくれた患者さんに心から感謝申し上げます。