眼瞼下垂になるとまぶしく感じやすくなるのはなぜ?

「まぶしさが改善しました!晴れの日でも苦痛に感じなくなりました。不思議ですよね〜」

眼瞼下垂の治療前後の変化を述べる患者さん。

普通に考えると、まぶたが下がってくると目の中に入る光の量が減りそうですよね。だから眼瞼下垂が治ったらまぶしくなりそうなものですが。

眼瞼下垂症でまぶしさを感じやすくなる

外出が億劫になってしまうのです。まぶしいから眉間にシワがよるし、頭痛がしてくるし、何より疲れてしまうのです。

「眩しい(まぶしい)」という言葉は主観的な形容詞です。他人が評価するのは難しいです。

眩しいと目を細めて顔をそらします。防御反応が身体に表れます。どちらかといえば不快な感覚に分類されますね(例外もあります)。

学術的には「羞明(しゅうめい)」といいます。

 

松尾清先生の理論によると「交感神経が刺激されて瞳孔が開くため」とのこと。

そして眼瞼下垂の治療をすると、目が大きくなるにも関わらずむしろまぶしさが減るのです。

かなざわ
その変化たるや、瞳孔サイズの変化だけでは説明がつかないと感じています。

まぶしさを感じる原因

一般的に末梢性(目のあたりに原因)があるものとして

  • 白内障
  • ぶどう膜炎
  • 角膜障害

などがあります。

中枢性(脳のあたりに原因)として

  • 閃輝暗点(偏頭痛)
  • 眼瞼けいれん
  • 身体表現性障害

があります。(参考:木賀沢一輝 「中枢性の羞明」 vol.27 No.5 2010 p613 新しい眼科)

眼瞼下垂でまぶしさを感じる人は、中枢性、特に眼瞼けいれんが潜んでいるのではないでしょうか?

眼瞼けいれんが悪さをしている可能性

眼瞼けいれんとは、目を閉じたり眉をひそめたりする筋肉の緊張が強くなる病態です。「けいれん」と聞くと、ピクピクをイメージしますか?それは違います。

この場合はギューッと筋肉が縮まる強直性ケイレンです。ピクピクではありません。

眼瞼けいれんが強いと、

  • まぶしい
  • 目がショボショボする
  • 瞬きが増える

といった症状が現れます。

つまり眼瞼けいれんが眼瞼下垂の背後に潜んでいる場合があるのではという仮説。

眼瞼下垂が眼瞼けいれんの原因になっているとの考え方(松尾理論)から、眼瞼下垂の治療によって眼瞼けいれんの症状が改善する可能性もあります。

つまり眼瞼下垂の治療によってまぶしさが改善する(軽くなる)ことがあるのです。

頭痛や身体表現性障害もありうる…

なお偏頭痛や筋緊張性頭痛も光過敏症があり、まぶしさを訴えることがあります。

身体表現性障害とは、あらゆる検査を行なっても器質的な異常を見出すことのできないものです。まぶしさのために外出困難になります。精神科でうつ病などと鑑別するなど対処が必要です。

眼瞼下垂患者さんのモデル

モデルケース1

このケースでは

  • 視野が狭い
  • まぶたが重い
  • まぶしい

という主訴(主な困りごと)です。

「眼瞼けいれん」が潜んでいると判断しました。

術前は、眉間にシワがよってまぶしそう。まぶたの皮膚がシワシワなのも眼瞼けいれんの存在を感じます。関連記事:『眼瞼けいれん』

「眼瞼けいれん」自体の治療はボツリヌス毒素注射が基本です。

今回の治療戦略

まず「眼瞼下垂の手術治療」をおこない、眼瞼けいれんの症状(まぶしさやショボショボ感)が強く残ったらボツリヌス毒素注射を検討するという方針。

眼瞼下垂手術で眩しさが改善
眼瞼下垂手術で眩しさが改善

手術後はショボショボした表情もなくなりました。眼瞼けいれんの症状がおさまっています。眉間のチカラが緩んだのがわかります。これはいい兆候です。いい具合に眉の位置も上がっています。

眼瞼けいれんの患者さんは、眉位置が下がらないほうがよいのです。

「眼瞼けいれんの治療」は(今の所は)不要と判断しました。良かった!

モデルケース2

「まぶしい!」が主訴(もっとも困っていること)です。家の中でもサングラスを着用しているとのこと!

眼瞼下垂手術前後の写真。まぶしさを強く感じる。眼輪筋の緊張の亢進が確認される。
まぶしさを強く感じる。下まぶたが上につり上がっているのが分かる。眼輪筋の緊張の亢進を認める

まぶたがほとんど開かない重度の眼瞼下垂。「まぶしい!」という表情が読み取れます。

「眼瞼下垂症+眼瞼けいれん」

と診断しました。

まぶたの手術だけではまぶしさの改善は難しいかもしれない(後日ボツリヌス毒素注射治療が必要になる)という、やや不安を抱えての手術治療開始となりました。

治療後、眼瞼けいれんの様な眼輪筋の動きがまだ観察されます。が、「まぶしさ」は劇的に改善したのでした。

著しい支障をきたしていた日常生活が元に戻り、屋内でのサングラスは不要になりました。

  • 年齢:70代
  • 性:女性
  • 手術:両側の挙筋腱膜修復術
  • 皮膚切除:なし
  • 脂肪切除:隔膜とPSFは発達弱い
  • lateral horn リリース:half
  • 下位横走靭帯:なし
  • 挙筋腱膜の滑り:右:0 1 2(3) 4 左:0 1 2(3)4
  • 挙筋前転:右:中等度 左:微量
  • ミュラー筋処理:左右ともなし
  • 手術時間:45分

まぶたのたるみでお悩みのかたのために、写真と動画を使用することを承諾いただけました。心より感謝申し上げます。

あとがき

「まぶしい」という感覚はミュラー筋を刺激します。

「目を閉じたい」という衝動と「目を見開きたい」という欲求の綱引きが起こっているからです。

ミュラー筋は交感神経を刺激します。その結果脳に活性酸素が作り出され、脳が疲れてしまいます。脳の疲れはカラダの疲れをもたらします。

まぶしいと感じたらサングラスなどで対処することをお勧めしますよ。

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