まぶたにあるミュラー筋とは
○まぶたを持ち上げる筋肉、4つのうちのひとつ (他は眼瞼挙筋、前頭筋、上直筋)
○Müller’s muscle. ミューラー筋。上瞼板筋(superior tarsal muscle)とも呼ばれる。https://en.wikipedia.org/wiki/Superior_tarsal_muscle
○下まぶたにもある。
○かつては開瞼維持(まぶたを挙げ続ける)に機能していると言われた。
注:毛様体筋の一部であるミュラー筋とは異なる。
ミュラー筋の場所、解剖
○眼瞼挙筋の末端(下端)裏から瞼板までシート状に繋がる。長さは10〜12ミリ。幅15ミリ。柔軟に伸び縮みする。ミュラー筋の裏はまぶたの結膜。下の写真では白いシート状の挙筋腱膜の裏にもミュラー筋が続いている。
一部(3割程度)の人はミュラー筋が瞼板前にも乗っているようです。
◯瞼板(けんばん)寄りをperipheral arcade (辺縁動脈弓)が水平方向に走る。挙筋腱膜が外されて頭側にめくられている。瞼板とミュラー筋が見える。写真では、瞼板上縁すぐ上にミュラー筋の中を横方向に蛇行する血管(peripheral arcade)が観察される。
まぶたのミュラー筋の機能
○交感神経支配(涙腺神経の中を通ってくる)の平滑筋(腸管や血管なども平滑筋)からなる。
○伸展受容器(固有知覚)をもつ。引っぱられると三叉神経を介して脳幹に求心性のインパルスを送る。このインパルスを通して眼瞼挙筋や前頭筋の緊張を制御。(例:涙腺神経を切っちゃうと眼瞼下垂になる)
○固有知覚が交感神経を刺激して覚醒にも関わる。ミュラー筋を引っ張れば覚醒度が上がる。
○にらむ目つきは固有知覚を増やす。格闘技、重量挙げ、自閉症(固有感覚を欲する)。
まぶたの病気とミュラー筋
○交感神経麻痺でミュラー筋が弛緩し、眼瞼下垂になる。ホルネル症候群。
○腱膜性眼瞼下垂で腱膜が薄くのびてしまうとミュラー筋が引っ張られすぎてしまい、身体の筋緊張が強くなる。結果、肩こり頭痛腰痛がでる。
○腱膜性眼瞼下垂症でミュラー筋が伸びすぎるとミュラー筋の感度が低下し、眼瞼挙筋が収縮しなくなり、眼瞼下垂がより重くなる。
名無しミュラー筋って必要なの?まぶたのたるみ(眼瞼下垂)から、「おでこのシワが増え、肩こり頭痛が悪化する現象」についてはご存知の通り。その震源地がミュラー筋(Müller's muscle)であります。そんな[…]
眼瞼下垂(まぶたのたるみ)の治療とミュラー筋
○腱膜性眼瞼下垂症の治療では腱膜を修復する。結果、ミュラー筋への過度の負担が解除される。
○眼瞼下垂症手術でミュラー筋タッキングやミュラー筋前転が行われることもある。
○一方、固有知覚受容器でもある臓器なので極力触らない方が良いとの意見もある。
○埋没法重瞼術の後に眼瞼けいれん(目がしょぼしょぼするなど)が生じることがある。ミュラー筋を刺激している可能性がある。
○海外の眼瞼下垂手術の文献ではミュラー筋を結膜ごと切除する術式が散見される。私個人としては、固有知覚に影響を与えないか心配。目の開き加減の微調整は難しいだろう。
固有知覚とは?
自覚できない深部感覚。身体の姿勢や位置、負荷を感知する。骨格筋では筋紡錘、歯では歯根膜に固有知覚受容器がある。
関連記事:『あなたが知らずに感じているまぶたの固有知覚とは?』
参考)固有知覚でない感覚、体性感覚
- 皮膚の温痛触覚など:マイスネル小体 パチニ小体 侵害受容器・・・
- 視覚:網膜
- 味覚:味蕾(口の中、舌)
- 嗅覚:鼻腔の嗅覚受容器
- 聴覚:内耳
まとめ
以上、徒然なるままにミュラー筋をまとめました。ミュラー筋の機能や手術時の扱いについては未知なことがあります。今後のさらなる研究が望まれます。