「はい、下を見て」「そしたら視線を上に!」「はい、カメラのレンズを見て!」
眼瞼下垂の治療経過で記録として写真を撮ります。形成外科医は数字を見ません😳。写真(動画)を見ます。
まぶたの何を記録するのか
視線を下に落とした状態から、最大限上を見たときに持ち上がるまぶたの縁の移動距離を見ます。ものさしで測る数字を「挙筋機能」といいます。(厳密にはミュラー筋や上直筋の機能も含まれます)。
というのは建前。
写真はそれだけでなく、様々な情報を記録しているのです。
- まぶたの厚ぼったさ、窪みかた
- 皮膚のたるみ加減、しわ、質感、色
- ふたえのライン
- 傷あと
- 皮膚病変、皮膚のコンディション
- まつ毛の向き
- 眼球の位置(眼位)
- むくみ度合い
- 眼輪筋の緊張
- 眉の位置
などを記録します。これらも圧倒的に必要な情報。「黒目が何mm出てます」とか「MRDが2mmです」とか言われても、まったく評価できません。この数字のみで手術適応を判断する医師がいたら教えてほしいです。
撮り方
ざっくりどんな表情の記録を撮っているか、私の場合で説明します。以下の順番で写真をパシャパシャ撮ります。
(1)「カメラのレンズを見て」
文字通り正面視です。ニュートラルポジションです。
(2)「目を閉じて」
軽く目を閉じます。
(3)「目を開けて」
ニュートラルポジションに戻ります。
(4)「下を見て(視線を落として)」
下方視。眼瞼挙筋とミュラー筋、上直筋が緩んだ状態です。ここで大事なのは頭を動かさないことです。あくまで視線だけを下に落とすようにします。座った状態なので膝を見る感じです。
(5)「上を見て(視線を上に)」
上方視。眼瞼挙筋とミュラー筋、上直筋をフル動員した状態です。ここでも頭は動かしません!あくまで視線を上に。自分の頭にみかんが乗ってるイメージです。落とさないでください。
(6)「正面を見て」
ニュートラルポジションに戻ります。
(7)「目をぎゅっと強く瞑って」
強閉瞼(きょうへいけん)。眼輪筋をフル動員して目を絞り込むように閉じます。
(8)「目をギョロッと大きく開いて」
努力開瞼。視線は正面のまま、まぶたを大きく大きく見開きます。上まぶたは上に、下まぶたは下へ、目がこぼれ落ちんばかりに見開きましょう。
(9)「目を閉じて…目を閉じたまま眉を持ち上げて」
まつ毛と眉の間を最大限に引き伸ばします。おでこの力をフル動員します。目を閉じたままだと意外に難しいですよ。


以上です。
なお撮影時は被写体とカメラとの距離があること(接近しすぎないこと)も大事です。
関連記事:『眼瞼下垂症の記録写真で使われるべき画角。スマホの自撮りはダメ。』
おまけ
写真を撮る際に患者さんにはレフ板を自分で持ってもらいます。大きな白いボードをお腹の前あたりにお盆を持つように地面に水平に保持します。顔に当たる光の偏りを均等にしてくれます。