自分が眼瞼下垂のなのかどうか?確認してみたくないですか?
受診する時間もないし…、そんなあなたはまずは自分でチェックしてみましょう。
眼瞼下垂症セルフチェック(自己診断)シート
眼瞼下垂になると様々な徴候(サイン)が現れます。あるいはひょっとしたら、日頃からの習慣が眼瞼下垂になるのを促してしまいます。ひとつひとつの要素は決定打にはなりません。しかし足し算(いや掛け算か)すると眼瞼下垂の診断に近づきます。
自分が当てはまると思われるものを数えてください。
はい | いいえ | ||
1 | おでこのシワがある(眉が上がる) | ||
2 | 頭痛が月に一回以上ある | ||
3 | 慢性の肩こりがある | ||
4 | 慢性の腰痛を持つ | ||
5 | ドライアイで点眼している | ||
6 | 不眠がある | ||
7 | 身体が疲れやすい | ||
8 | コンタクトレンズを20年以上 | ||
9 | 花粉症もしくはアトピー性皮膚炎がある | ||
10 | メークをする習慣がある | ||
11 | 40才以上である | ||
12 | 目が落ちくぼむ | ||
13 | 顎を突き出している | ||
14 | 背中が丸くなってきた | ||
15 | 顎関節症がある | ||
16 | 不安障害がある |
16項目のうちいくつ該当しましたか?
- 10個以上:かなり強く疑われます。
- 6個から9個:中等度です。下記の眉ブロックテストをしてみましょう。
- 4個から5個:関連は弱いです。興味があれば、下の眉ブロックテストをしても良いでしょう。
- 3個未満:心配ないでしょう。
以上は主観を基準にしたチェックシート。確実な診断は医師による評価が必要です。
眉ブロックテスト
垂直に立てた鏡(洗面所など)を用意してください。「おでこの力を使わずにまぶたを上げられるかどうか」のテスト。
- 鏡に対面し、優しく目を閉じます。
- 閉じたまぶたの中で下を見ます(黒目を下に向けます)。
- おでこの力を抜いてリラックスします(眉が下がってきます)。
- 眉の上に自分の人差し指を乗せて、眉が動かないようにしっかり固定します。
- 眉が動かないように、そっと目を開きます(まぶたを持ち上げます)。
では、判定…
瞳孔にまぶたのフチがかかっていたら、眼瞼下垂症が疑われます。
この判定法には実施の難しさがあります。眉を上げる癖のある人は、指の力に抵抗して眉を上げてしまうことです。眉を動かさないように頑張ってください。
判定はいかがでしたか?ちなみにこの診断法、高齢な人はほとんど該当してしまうのではないでしょうか?まぶたの前葉が垂れ下がっており、おでこのチカラを動員しないと視野が確保できないという状態です。
不安があれば、近くの形成外科・眼科に相談しましょう。
関連記事:『眼瞼下垂診断の「眉ブロックテスト」は何を評価しているのか?』
参考:眼瞼下垂の定義(学術的な見地から)
手術治療を要する眼瞼下垂症の基準(グレード B) 日本形成外科学会ガイドラインより
定量的評価基準として;
- 正面視時 MRD1 が2mm 以下
- 上方視野の欠損角が 12度ないしは 24%
- 下方視時の MRD1が2mm 以下となる読字が困難となる下方視時の眼瞼下垂
定性的評価基準として;
- 上眼瞼の下垂に起因する機能障害の患者側からの訴え
- 上眼瞼に起因する視野狭窄によってもたらされた顎上げ症状
- 上眼瞼に起因する視野狭窄によってもたらされた職業上の不都合や安全上の不都合
- 上眼瞼の下垂に伴う不快症状,目の緊張,視野狭窄
チェックリストの根拠
理屈が理解できれば納得できます。予防方法もなんとなく分かってくるかもしれません。
(1) おでこのしわ(眉が上がる)
まぶたがたるむと前頭筋に力が入ります。眉を持ち上げて視野を補おうとする(バックアップ機構)のです。その結果、おでこの横ジワができます。
(2) 頭痛
まぶたがたるむと、前頭筋(おでこの筋肉、すなわち眉を持ち上げる筋肉)が緊張します。前頭筋と繋がっている後頭筋も緊張して後頭部から首の後ろが凝り、筋緊張性頭痛の原因となります。
眼瞼下垂では歯を噛み締めて歯根膜を刺激しようとします。ミュラー筋を働かせるためです。その結果、噛む筋肉である側頭筋(こめかみの筋肉)が痛みます。関連記事「眼瞼下垂治療によって頭痛が改善するのか?因果関係は証明されているのか?」
(3) 肩こり
おでこジワと同じメカニズムです。首の後ろの筋肉と僧帽筋も緊張します。前頭筋と後頭筋は一枚の膜で繋がっています。
参考文献◎宇津木龍一ら, 腱膜性眼瞼下垂手術後の頭痛・肩こりの改善効果について,神経眼科 26(1): 45-49, 2009.
参考文献:鄭暁東, 超高齢社会における眼瞼下垂による Qov&QOLへの影響 【視野欠損による疲労に加え,頭痛,肩こりの原 因に】 日本医事新報 (4829): 51-51, 2016.
(4) 腰痛
まぶたが下がると身体の筋緊張が亢進し、さらに緩みにくくなります。腰回りの筋肉が筋肉の緊張が強くなり、腰痛の原因になります。
(5) ドライアイ
まぶたが下がると眼のショボショボ感が強くなります。眼瞼挙筋の緊張が緩みにくく、瞬きが遅れて目が乾きます。眉位置が上がるので余計にまぶたが閉じにくくなります。関連記事「過去にまぶた手術をしたけどうまくいかなかった?修正手術再挑戦ストーリー」
(6) 不眠
まぶたがたるむと交感神経が興奮します。眼を閉じても瞬時に交感神経をOFFにできず、眠りが浅くなります。
参考文献:Eyelid Opening with Trigeminal Proprioceptive Activation Regulates a Brainstem Arousal Mechanism. Matsuo K, et al. PLoS One. 2015 Aug 5;10(8)
関連記事:「過去にまぶた手術をしたけどうまくいかなかった?修正手術再挑戦ストーリー」
(7) 身体が疲れやすい
眼瞼下垂で身体の筋肉が緊張します。交感神経が興奮しっぱなしで身体も脳も疲れます。
(8) コンタクトレンズ20年以上使用
コンタクトレンズの着脱と、コンタクトレンズの厚みを乗り越えての瞬目がまぶたのゆるみを加速します。コンタクトレンズの歴史も40年を超えました。多くの人が眼瞼下垂になっています。
(9) 花粉症、アトピー性皮膚炎
眼をこすることで挙筋腱膜(まぶたを持ち上げる筋肉とスジ)がゆるみます。目が痒くても強くこすらない事。点眼や内服などでアレルギーを制御しましょう。
(10) メークをする習慣
まぶたの皮膚を引っ張る際にまぶたの中に負担をかけます。その結果挙筋腱膜がゆるみます。女性の宿命です。
関連記事:「間違ったメーク落としをしていませんか?それがまぶたのたるみ(眼瞼下垂)を加速します」
(11) 40歳以上
我々は1日に2万回もまばたきをします。生きているだけで挙筋腱膜を絶えず引っ張り緩めてを繰り返しているのです。歳をとればやむなく挙筋腱膜はゆるんできます。また、骨格も萎縮、眼球も落ち窪んでくるのでまぶたが下がる原因になります。退行性眼瞼下垂症(involutional blepharoptosis)とも言われます。
(12) 目が落ちくぼむ
挙筋腱膜が緩んでのびてしまうと眼瞼挙筋が奥に引っ込みます。その際に眼窩脂肪も引っ込んでしまうので目が落ちくぼみやすくなります。眉をあげる癖も目が落ち窪むのを強調します。
(13) 顎を突き出している
まぶたが上がりにくくなると、顎を引いた状態でまっすぐ正面を見るのが難しくなります。黒目を下に向けざるを得ません。すると顎を持ち上げて前を見るようになります。
(14) 背中が丸くなってきた
顎を突き出すと身体のバランスを取るために前傾姿勢(前かがみ)になり、背中が丸くなります。
(15) 顎関節症
眼瞼下垂になると、ミュラー筋を利用しようと(交感神経を賦活するために)噛み締めて歯根膜を刺激します。噛みしめる行為が延々と続き、さらに眠っている間も噛み締めが続き、顎の関節が痛くなります。
(16) 不安障害
眼瞼下垂になると交感神経が刺激され続け、不安感が増幅されます。
参考文献:Eyelid Opening with Trigeminal Proprioceptive Activation Regulates a Brainstem Arousal Mechanism. Matsuo K, et al. PLoS One. 2015 Aug 5;10(8)
関連記事:『まぶたは脳幹の覚醒と交感神経の制御に関わっていた』
まとめ
以上、
- 眼瞼下垂診断のチェックシート
- その根拠
- 鏡を用いた自己診断方法
を提示しました。
さて、あなたは、
- 自己診断できましたか?
- 日常の習慣がまぶたに悪さしているって気づきましたか?
- おでこのチカラって、とても助けになっているって自覚できましたか?
もし自分が怪しいと思ったら、以下の記事を参考にしてください。まだ間に合うかもしれません。
こんにちは、形成外科専門医の金沢です。「眼瞼下垂がんけんかすい」というキーワードに初めて遭遇したあなたへ。何がなんだか分からない…そんな状況でしょうか。眼瞼下垂に関する情報を一般の人々に届けるために、私個人が2012年5月2[…]
あとがき
目の開き加減と言っても単純に何ミリと表現できません。凝視するとき、手元を見るとき、遠くを見るとき、眩しいとき、薄暗いとき、まったく違ってきます。年齢によっても必要な開き加減は全然違います。今日の医学では「眼瞼下垂症」を確実に診断する「物差し」は存在しません。一喜一憂しないで、ファジー(ゆるく、あいまい)に受け取ってくださいね。
あなたに質問です
「眼科で指摘された」「肩凝りの原因を調べていた」など眼瞼下垂を知るきっかけは人それぞれ。あなたが自分の眼瞼下垂を調べてみたいと思ったきっかけ(動機)を教えてください。