年輩で重度な眼瞼下垂も手術で治るのだろうか?術式選びのポイント

 こんにちは。金沢です。

年輩で眼瞼下垂が重度な患者さんは通常の眼瞼下垂症手術(腱膜固定術:挙筋前転法)で治療できるのか?

実は、高齢者で視野がほとんどないくらいに眼瞼下垂が進行した場合は、眼瞼挙筋の動きが弱く、通常の眼瞼下垂症手術(腱膜固定術)では十分な結果が得られないことがあります。

術中所見では、眼瞼挙筋が脂肪変性(いわゆる霜降り状態)しています。このような場合、最大量眼瞼挙筋を前転してもまぶたを開くチカラが十分に発揮できないのです。高齢な方は長年に渡り眼瞼挙筋を使うことをしてないために筋肉が衰えてしまうのです(廃用性萎縮)

その際は次のステップとして筋膜移植によるつり上げを考慮します。

しかし、そこまでの大きな侵襲(太ももから筋膜を採取するのと、眉上も切開します)を許容できないこともあり、挙筋前転法で、ある程度のところで妥協することも有ります。(瞳孔がかろうじて露出する程度でも十分満足していただけることが多いのも高齢な方の特徴です。)

あらかじめ適応される術式を判断できないのか?

術前に挙筋前転(腱膜固定)もしくは筋膜移植術が適応か判断できたら良いのですが、分からないこともあります。

つまり、腱膜固定術が有効かどうか、実際には手術してみないと分からない場合が多いです。

その場合は、まずは腱膜固定術が提案されます。そして、術後経過をしばらく見て、その術式では満足な結果が得られなかったと判断されたら筋膜移植術を検討します。

さて、70代後半のこの方への治療はどうなされたのでしょうか?

 

左眼瞼下垂術前の写真。
左眼瞼下垂術前

 

年輩者眼瞼下垂術後1年の写真
眼瞼下垂術後1年

この患者さんは左の眼瞼下垂症ですが、筋膜移植が必要になる可能性をお話しし、納得いただいた上で手術を行いました。

結果的には左の腱膜固定術のみで十分でした。かなり重度に見えても眼瞼挙筋はしっかり動いていたのです。

さらに!術前の左の顔面表情筋の緊張が強いですが、術後は顔の緊張が緩みました。副次的効果です。(とても明るくハツラツとした方でした。)

頭のポジションも変わるのが分かりますか?眼瞼下垂になると首に負担をかけているのがよく分かると思います。

こういう副次的効果を生じるのが機能的眼瞼形成手術です。

眼瞼下垂症の啓発目的での写真、動画使用を承諾していただきました。ご協力ありがとうございます。(埼玉県の患者様)

(2015年6月30日加筆修正)

(2015年9月3日加筆修正)

 
 

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