教科書を「守破離」する

教科書が正しいとは限らない

まぶたの断面図

このイラスト。わたしが医師になったばかりの時に購入したテキスト(形成外科手術書改訂第3版、南江堂、1999)に引用、掲載されているもの。(初版が1969年)

眼瞼挙筋腱膜と隔膜が瞼板上縁前面で合流しつつ瞼板に付いています。相当にデフォルメされています。

一方、近年見るイラストでは腱膜と隔膜と瞼板との関係は下の図のごとくで、少なくとも2019年現在の形成外科医師の理解はこちらに近いです。

まぶたの断面。『眼手術学』2013年初版
まぶたの断面。『眼手術学2』2013年初版 分光堂

これ、非常に重要なポイントなのですが、古いテキストを鵜呑みにしていると手術にならないのです。なぜかというと、やはり違うからです。

医学情報は更新される

「テキストが誤っていることがあるという事実」を教えてくれたのが、学術集会でのとあるレクチャーでした。わたしがまだ専門医になる前でした。講師の名前は忘れましたが、テーマは「耳の形成外科」でした。

彼が指摘したのは「耳の立つ角度」について。とあるテキスト(上に同じ)には、西洋人は頭の横に寝るようにつく(角度が小さい)のに対して、日本人は耳が立っている(角度が大きい)と記載されていました。「耳介頭蓋角」といい、西洋人は平均で30度であるのに対し、日本人は平均83度であるとの文献を引用していました。しかし、それは誤りであると彼は指摘したのです。言われてみればテキストのイラストは明らかに異常でした。

どのような文脈でこの話が出たかは忘れました。しかし、若くて無垢なわたしはテキストを疑うことも知らずにいたので、目から鱗がボロッと落ちたのです。

耳と頭蓋骨のなす角度 明らかに日本人の耳がおかしい

そのテキストは突貫工事で短期間で作り上げられたとの噂でした。しかもひとりの形成外科医師が診療の片手間に書き上げたという「武勇伝」として伝え聞いていたわけです。その偉業から我々はバイブルとして崇めていました。しかし、短期間に一人で書き上げる、総ページ数1500にも達する分量です。正しいかどうかの検証をする間もないはずで、誤りがあって当然だったのです。

それからは疑いの目をもって資料に当たるようになり、また自分で考える習慣もつきました。おもえば、その講義とこのテキストが、私の医療に対する態度を作り上げてくれたのです。

もちろん先人の仕事を学ぶのはとても大事です。先人たちはさまざまな試行錯誤から、ある一定の結論を導いています。我々はそこまでは近道すべきです。まずは先人の知識を受け入れ学び(「守」)、さらにそれを臨床と照らし合わせて、テキストを叩き台にしてさらに進化、ブラッシュアップしていくことです。それが「守」から「破」ですね。

ちなみに「守」をしないことを「形無し」」というそうです。私たちは「破」をしても時に原点に立ち返る必要はありますからね。

ところで「離」の世界を見た人はいるのでしょうか?

 

 

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