「目頭の重瞼線がなかなか思い通りにならない。」
「平行型にしたいけど、ふたまたのラインが現れてしまう。。。」
これもまぶた治療を行う外科医にとっても患者さんにとっても悩みのタネです。
目尻側が「ふたまたになる現象」については以前記事にしました。
まぶたの手術後に目尻のふたえの線(重瞼線)が二股(ふたまた)になることがあります。狙い通りのところでふたえになって折れないため、残念な気持ちになります。なぜこのような現象が起きるのか?まぶたのプレートテクトニクス理論とは?対策はあるのか?検[…]
重瞼線は元来2本ある
目頭側のラインについても同様のことが言えるかなと思います。今回は金沢の個人的見解を述べます。
ふたまたになる原因として、もともと2本以上の重瞼ラインがあることが問題なのです。
高い位置の重瞼ラインを「上の重瞼線:Upper-positioned crease(UPC)」
低い位置の重瞼ラインを「下の重瞼線:Lower-positioned crease(LPC)」
と名付けました。
目を開くと、上の重瞼線の谷間に下の重瞼線が飲み込まれます。その結果、目を見開いた時の重瞼のラインは一本に見えます。
しかし、目頭側は「上の重瞼線の谷」に飲み込まれないので表に見えています。これにより、結果的にふたまたに見えるのです。そして日本人は蒙古襞があり、下の重瞼線(潜在的で見えていない場合もある)と蒙古襞が連続しているように見えるため、目立ちます。
見え方はダイナミックに変わる
強く目を見開く時と、伏し目がちな表情をするときでも目頭側のふたえの見え方は変わります。眉位置でも変わります。鏡で色々表情を変えて見てください。
2本の重瞼線の構造的な違い
動画を見るとわかりますが、下の重瞼線(谷間)の動きの量は、まぶたの動きの量とパラレルです。まぶたの挙上に伴って重瞼線が引き込まれます。まぶたが10ミリ挙上されれば、下の重瞼線は10ミリ奥へ引き込まれます。動きの方向も眼球面に沿っています。
眼瞼挙筋の終末枝が、下の重瞼線の谷間の皮膚(眼輪筋)に繋がっているからです。眼瞼挙筋がまぶたそのものを持ち上げますが、下の重瞼線も同時に引き上げているのです。
下の重瞼線はまぶたの縁の移動量とパラレルです。そして引っぱり込むようにして折れこんでいきます。まぶたの縁から下の重瞼線までのエリアは前葉と後葉がほぼ一致して連動して動きます。
一方、上の重瞼線の谷間の動きの量はまぶたの動きの量とパラレルではありません。まぶたが10ミリ動いたら、5ミリ奥に入る程度でしょうか?谷間の動くベクトルも眼球のカーブに沿っておらず、やや前上方向です。
つまり上の重瞼線は、まぶたの皮膚がまゆ下の皮膚の下にぶつかった後、滑り込むような動きの中でできます。下の重瞼線が引き込まれるように折れたのに対して、上の重瞼線は圧縮されながら滑り込みます。大陸のプレートテクトニクスのようです。
複雑ですね。この高さを決定する硬い構造物はありません。このエリアは前葉と後葉の連動は緩くて曖昧です。だから3本4本現れる人もいるのでしょう。
これってズバリ、切開重瞼(全切開)で幅広ふたえが自然にならない理由なのですね。なぜなら切開だと前葉と後葉の動きが一致して連動し、パラレルになりがちだから。
埋没法の方が幅広二重が自然に仕上がりやすいです。これは、まぶたの動きと重瞼の谷間の動きが完全にパラレルではなく、折れるきっかけを作った上に少し遅れてふたえの谷が押し込まれていくからでしょう。
関連記事:『ふたえの線が2本ある。それが意味するものとは?全切開の幅広ふたえが不自然な訳』
あとがき
酒井形成外科では酒井院長と王子富登先生と色々議論しています。ふたえのラインは思惑通りに行かなくて悩むのは、皆同じなんですね。
それでも、アイデアや工夫を聞いているうちに新たな発見が得られるような気がしています。三人寄れば文殊の知恵です🤗
でも、あなたの意見を聞くことができたら、もっとよくなりそう。いいアイデアがあったら教えてくださいm(_ _)m