幼い子の手のやけどの手術|形成外科の仕事

ヤケドの赤ちゃん

歩き始めた子供は、興味のあるものを触りたがります。今まで見えていなかった物が視界に入るので、ワクワク楽しくて仕方ないでしょう。

そこに見えるもの。。。。炊飯器、ポット、、、、、

1歳児は「危険なもの」と認識しません。炊飯器のポットからシュウシュウ音を立てて吹き出る、白い蒸気。興味を持たない訳がありません。「手」をかざしてしまいます。

やけどします。

こどもの皮膚はペラペラに薄いので、ダメージが深くなります。

「湿潤療法」でやけど治療も進化しました。が、ベストを尽くしても「変形」や「こわばり」を残すこともあります。

指は機能を司る臓器です。機能を失うことは大きなハンディキャップになります。

以下は、その「治療経過を皆さんと共有する許可」が得られた、貴重な写真です。

[voice icon=”https://manabuta.jp/wp-content/uploads/2017/05/c14176b8e7bba9b67e7f617482a24926.jpg” name=”かなざわ” type=”l”]野口英世氏は幼い時に囲炉裏に転落して手をヤケド。成長してから手を開く手術を受けたんですよね。でも機能的ではなかったそうです。[/voice]

左手のやけど(幼児)

ひきつれ変形

一歳の時に蒸気でやけどしました。治療で皮膚はふさがりましたが、変形が残りました。これを瘢痕拘縮(はんこんこうしゅく)といいます。

中指から小指にかけて、手のひら側のやけど。傷が縮んでしまい、「パー」が出来ません。

左手のヤケドによる瘢痕拘縮の写真
薬指は手のひらに乗っています。
左手の瘢痕拘縮の写真
無理に開こうとしても手のひらは開きません

※一歳ぐらいのお子様の手のヤケドは拘縮になりやすいです。

治療(手術)

こわばりを解く手術を行いました。刺激的なので写真を小さくのせます(クリックで拡大します)。瘢痕を切り開いただけで、これだけの皮膚欠損(皮膚不足)があることが分かりました(注:何も切除していません)。

手術中の写真
赤く見えるのは皮膚が不足する場所。ここに皮膚を移植する

皮膚の欠損した場所に、本人の足から皮膚を移植しました。「全層皮膚移植:Full Thickness Skin Grafting」です。1週間くらいすると、移植片に血管が伸びて移植片が栄養されるようになるのです。皮膚の移動ですね。発想としてはシンプルです。が、うまく生着してくれるかどうか(移動した皮膚が生きてくれるかどうか)がとても心配で、ドキドキしながら見守るのです。

治療の結果

「パー」が出来るようになりました。

治療から3年。若干の「ひきつれ」が残っていますが「パー」は出来ています。機能は保たれています。物を持ったり掴んだりも支障が無いそうです。今後成長とともに変形が現れる可能性もありますし、本人の希望によって修正手術もあり得るでしょう。

ヤケド手術のその後
グー
ヤケド手術のその後
パー

皮膚の採取場所は足の内側です。左右からいただきました。傷跡が残りました。

皮膚の採取部位
左足の内側
皮膚の採取部位
右足の内側

移植する皮膚は自分のカラダから貰います。他人の皮膚は生きません。その分、どこかに犠牲を作るのですね。傷跡を増やしてしまうのが悩みの種です。

別ケースですが、「私の皮膚を使ってください」と訴えた親もいらっしゃいましたが、残念ながらそれは不可能なのです。😰

予防が大事

1歳児の行動範囲の急拡大は予想を超えます。炊飯器やポットの蒸気の出口に手が届くことのないよう、十分に気をつけてください。

最近は「熱い蒸気の出ない商品」もあるようです。

どうせ買うなら「蒸気がでない電気ケトル・ポット」がおすすめ!子どものやけど防止対策をしよう

「正直クソババアの夫婦ブログ」より

一度ヤケドしたら振り出しには戻せません。「神の手」をもつヤケド治療医師は存在しません。くれぐれもご注意を。

以上、形成外科医の仕事の紹介でした。

※写真の共有に承諾をいただけたこと、心より感謝申し上げます。

追伸

このような治療は、全身麻酔を担当してくれる麻酔科医、点滴のアドバイスをいただける小児科医、身の回りのケアをする看護師などのスタッフが充実した、入院設備のある医療機関で行われます。

実際、献身的で優しいスタッフばかりです。この場を借りてお礼を申し上げます。m(_ _)m

 

 

 

 

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