「私は眼瞼下垂かもしれない」と気づいてしまったあなた。次に思うのは、大抵このふたつです。
「とにかく専門医に相談したい!」「1日も早くこの不調から解放されたい!」
……でも、ちょっと待ってください。焦って病院に駆け込む前に、まずは「自分がたどる道のり」を構造的に理解しておく必要があるんです。
段取りを知る
多くの人は、診察室に入ればすぐ解決すると思いがち。 でも実際には、情報収集から始まって、医師との相性チェック、ダウンタイムを考慮したスケジュール調整……と、やるべきことは山積みです。
そう思っても、どこから始めたらいいのか分からないという方も多いですよね。
• どの病院に行けばいいの?
• すぐに治療できるの?
どの医療機関を選ぶにしても、治療までの基本的な流れはほぼ共通しています。
【あなたがたどる道のり】
(1) まぶたに興味をもつ。自分が(家族が)「もしかしたら眼瞼下垂症なのでは?」と思う
(2) インターネットで情報収集(あなたは今ここですね?👀)
(3) まぶた治療を前向きに検討する
(4) 相談する病院、クリニックを探し、治療の相談相手になる医師を決める
(5) クリニックの予約を取る
(6) クリニックを訪れ、担当医師の診察を受ける
(7) 治療の適応がある(手術が望ましい)と判断されたら、治療の内容や経過、リスクについて説明を受ける
(8) 疑問や不明な点があれば質問する。必要があれば他のクリニックでも相談してみる
(9) 健康保険適用か、自費診療か、費用を確認する
(10) 手術スケジュールを相談する
(11) 必要に応じて採血検査を行う
(12) スケジュールに合わせて自分の身の回りの準備(仕事の調整など)を行う
(13) 手術日にクリニックへ
【詳しく解説します】
2. インターネットで情報収集
キーワード:「眼瞼下垂」「まぶたのたるみ」「眼瞼けいれん」「眼瞼下垂症」「眼瞼下垂症手術」「挙筋前転法」「腱膜固定」「ダウンタイム」「挙筋短縮術」「腫れ」「内出血」「紫斑」「入院」「日帰り」「保険適用」「リスク」「傷跡」「瘢痕」「再手術」「修正手術」「左右差」「物が二重(にじゅう)に見える」「肩こり」「頭痛」「信州大学」「切らない眼瞼下垂」「ミュラー筋」「ミューラー筋」「重症筋無力症」
以上について興味のある言葉を検索🔍してみましょう。少し大変かもしれませんが、事前に知っておくと安心ですよ。
4. 相談する医療機関を探し、治療の相談相手になる医師を決める。
どの診療科に行けばいいのでしょうか?それは形成外科、もしくは眼科あるいは美容外科。そして、担当医師が自分に合う人かよく見定めましょう。
「この人なら任せられる」と思える誠実な医師がオススメ。相性を確認するために、実際に会ってお話しすることが大事。(フィーリングも意外に大事。)
治療を急かす医師は注意が必要です。(眼瞼下垂治療は急を要するものではありません。)
もちろん経験の多い医師がベター。ただし経験の浅い医師でもしっかりした指導医が立ち会うなど、バックアップ体制があれば大丈夫。
このあたりの詳しい内容は後日(第5弾)で解説します。これはあなたの運命を左右する大きな選択になります。
6. クリニックを訪れ、担当医師の診察を受ける。
当たり前ですけど自己診断は限界があります。眼瞼下垂の確定診断や、ほかの病気(重症筋無力症など)が隠れていないかもチェックしてもらいます。他の医院で治療がうまくいかず、私がみたら「先天性のマーカスガン症候群だった」というオチもありました。医師ですら誤診するくらいですからね。安易な自己判断は大火傷します。
8. 不明な点があれば質問する。不安があれば他のクリニックでも相談してみる。
複数の医師に相談するのも、よい選択肢のひとつです。医師によって治療方針や考え方が異なることが多いことも知ることができます。比較することで理解がより深まり、より相性のよい医師に出会える確率が高まります。
10. 手術後のダウンタイムを考慮した上でスケジュール調整します。
手術後は腫れや内出血のため、見た目に影響がある期間があります。
• 親族の結婚式に出席
• 友達との旅行
• 家族写真の撮影
こういったイベントが控えている場合は、手術はイベントの後にするのがベターです。
手術を”今日”できないの?
時々、このような患者さんがおられます。
「手術を今日お願いします!」
「来週に手術をしたいです」
思い立って気持ちが高ぶっていたり、勇気を持って受診したので早く治療を進めたいという気持ち、よくわかります。
でも、ちょっと待ってくださいね。焦らないことが大切。気持ちのクーリングダウン期間も必要です。
手術後の経過を前もって十分に理解、納得するにも時間が必要です。
ちなみに私の場合
千葉市で開かれた勉強会でのこと。当時の信州大学形成外科学教授・松尾清先生にじかにお願いしてみたのです。
「松尾先生、自分もしてみたいんですけど…、お願いできますか?」
「いいね。やりましょう。年末がいいよね。枠押さえてあげる。」
こうしてスケジュールが決まりました。12月28日です。
どうして自ら手術を受けようと思ったのか?その理由はズバリ、まぶた治療をして元気になる患者さんをたくさん見すぎたから。嫉妬すら覚えていました🥴
合併症も熟知している、だからこそ、怖さもありました。でも「合併症を体験することも貴重な経験だし、患者さんの気持ちにもっと寄り添えるはず」と一念発起したのです。
手術経験者からの実体験に基づいた説明ほど、説得力のあるものはないと思いませんか?

閑話休題(ちょっと脱線)
金沢はアーティスト、それともエンジニア?どちら?
どちらかといえばエンジニア(技術者、職人)という自覚、自意識でございます。アーティスト(彫刻家)というよりは。
鍵盤が沈まないピアノは音を奏でません。針が動かなければ時計は時を刻まないでしょう。動いてこその命。機能のデザインが鍵。まぶたの機能を再建する仕事。まぶた内部は仕組み(ギミック)の集積回路なのです。
組織の物理的特性
量、硬さ、柔らかさ(追従性)、もろさ、可塑性、粘弾性、伸展性、収縮
運動力学的要素
動き、動きの幅、ベクトル、トルク、プーリー(滑車)の原理、テコの原理、牽引力(パワー)、押す力、圧、グライディング(滑走性)、作用反作用
生理学
神経支配、血流、筋肉の収縮弛緩、共同運動、腫脹・浮腫、メニスカス
相互作用、統合制御
以上の構造体がお互いに絡み合っています。全体調和して連携、連動するようにととのえます。
しかも、個人ごとに各パラメーターはいびつに差があります。個性です。さらに、年齢差。若い人の皮膚は新品のスウェット生地。加齢で成熟した皮膚は「障子紙」。まったく特性が異なります。その素材で動きを最適化します。
だから、ここだけの話、まぶた治療を「美容外科」に分類するのに抵抗を感じるのです。。。ここだけの話ですよ。
いかがでしたか?ざっと流れが把握できましたか?
- 受診する診療科は形成外科、眼科もしくは美容外科、ということを知っていましたか?
- まずは診断が必要であることを知っていましたか?
- 手術よりも、スケジュール調整が一番大変かもしれないと考えたことはありましたか?
パックツアーのように、タイムスケジュールを渡されて「レール」に乗るのはまだまだ先なのですね。そのスタートラインに立つまでに、自分の意思で決めるべきことがこんなにあるんです。「しんどいし、途方もない」と思いませんか?
だからこそ、このようにリストアップすることで、ひとつひとつのハードルを乗り越える道筋(そしてゴール)が見えるようにするんです。ゆっくりでいいので、ひとつひとつチェックマーク✅をつけていってください。
明日は、
「ダウンタイムとは?ダウンタイムを最小限にする3つのこと」
眼瞼下垂手術の直後から、まぶたは腫れます。そのため、見た目が痛々しくなるため、人に会うのがためらわれるように感じる期間があります。絶対に。
仕事への影響も避けられません。
実際に眼瞼下垂治療を受けた患者さんたちのアンケートでも、「一番つらかったのは何?」という質問に対して「ダウンタイム」を挙げる方が多いです。
どうすれば、ダウンタイムをできるだけ短くできるのか?
そう、これも「知識」こそが、ダウンタイムの最大の解毒剤になります。
詳しく見ていきましょう。
あとがき
ところで、あなたは旅行はお好きですか?私は大好きで、非日常の空気を吸いに、年に数回は「日常」という檻を脱出してしまいます。旅の前は、まさしく下調べの日々。でも、どれだけ時間をかけてネットを読み漁っても、いざ現地に到着すると「分からないこと」だらけ。結局、最後は「謎解きゲーム」の感覚で、手探りで進むしかありません。
これって手術も同じなんです。どれだけ準備をして、私のガイドを読み込んでも、実際にその場に身を置いてみてはじめてわかることがうんとある。「なあんだ。こういうことだったのね〜」と腑に落ちることが山ほどあります。
だからこそ、あえて言います。下調べで100点は目指さないでくださいませ。
知識という武器は大事だけれど、最後は「現場の不確実性」を楽しむくらいの余白を残しておく。その方が、結果的に納得感のある体験になるんじゃないかな、なんて思うわけです。
ま、あんまり考えすぎないこと。
そんじゃーね。
