眼瞼下垂症完全ガイド第4弾

知っておくべき手術のリスクについて、お話しします。

手術には「合併症」と呼ばれる、一定割合で生じる、避けきれない症状・トラブルがあります。

不幸にも合併症のカードを引く場合もあります。その場合は追加治療を行うことも。

ただし修正手術は、キズが完全に落ち着いてから行うのが原則。目安として3〜6ヶ月以上経過を見る事が必要です。

合併症ごとに適切な対処法があります。リスクを十分に理解、納得した上で手術治療を受けましょう。

たくさんのリスクがありますが、焦らず、ゆっくりご覧になってください。今日は「これだけ」です。

【合併症リスト】

眼瞼下垂手術合併症

□出血(内出血)

手術中、もしくは術後の出血により紫斑(青あざ)になります。

術後に顔がほてるような行為(入浴で熱い湯に浸かる、激しく運動するなど)はリスクを高めます。

ひどい場合、まぶた全体が「お岩さん」のように腫れることも。

血腫の自然吸収を待ちます。1ヶ月程度かかります。
・・・・・非公開写真・・・・・
血腫の経過写真はこちらです。パスワードは[d6amkufb]です。

□感染

糖尿病や免疫の弱い方は、稀に化膿するリスクがあります。
万が一化膿した場合は、抗菌薬を飲むか、キズを開いて膿を出す処置をします。

□目の閉じにくさ

眼輪筋の瞼板部(まつげのすぐ上)のチカラが一時的に麻痺することがあります。そのため、まぶたを完全に閉じるのが難しくなることも。1ヶ月程度は洗顔時に石鹸が目にしみたり、夜間に目の乾きを感じることもあります。点眼薬で対処します。

□視力・乱視の変化

眼球を押さえつけているまぶたの位置が変わることで、角膜の形状がわずかに変化することがあります。3〜6ヶ月ほど、視力が不安定(変動する)になることもあります。安定したらメガネを作り直しましょう。

□ふたえの線の乱れ

予定した位置でまぶたの皮膚が折れず、ふたえの線が期待通りにならないこと。二重が浅くなったり、三重になったりすることも含まれます。修正手術を検討します。限界もありますが。

□めやに・涙の増加

目やに、涙が増えること。これは半年程度で落ち着いてきます。涙が増えるのでドライアイの症状が改善するケースもあります。

□まぶしさ

文字通りまぶしさを感じます。外出時はサングラスを活用しましょう。

眼瞼下垂手術合併症短期

□まぶたの腫れぼったさや赤み

腫れや赤みはすべての手術患者さんに現れます。半年経過しても腫れぼったさ(というよりはむくみ)や赤みが残ることもまれに。眼輪筋の緊張の強い方(男に多い)に、この傾向がみられます。

□稗粒腫(はいりゅうしゅ)

切開部、もしくはその周りの皮膚に0.5~1mm程度の白く隆起した斑点(はんてん)が現れます。毛穴や脂腺の出口がふさがって角質が溜まってしまうのです。

自覚症状はありません。放置すれば自然に退縮します。長期間改善しない場合はつついて内容物を出します。

□霰粒腫(ものもらい)

瞼板(けんばん)にできる肉芽腫です。切開した場所のすぐにコロコロとしこりを触れます。大きくなったり小さくなったり変化することも。

目立つ、もしくは長期間改善しない場合は小切開(局所麻酔)で肉芽を掻爬(切除)します。

□皮膚・皮下の硬結(しこり)

傷が治る過程で部分的にコラーゲンの塊ができて硬さを触れることがあります。半年程度で柔らかくなってきます。

□縫合糸膿瘍・露出

縫合に使った糸に対する異物反応として皮膚のかゆみや膿が生じます。抜糸すれば速やかに改善します。

□目の違和感・ツッパリ感

違和感やツッパリ感に個人差はあります。手術直後は必ずあると言っていいでしょう。徐々に慣れてきます。

□まぶたのしびれ・痛み

皮膚切開部の皮膚の感覚が麻痺します。徐々に回復するものの、回復過程で知覚過敏のようなビリビリ感が出ることも。

完全に回復しないこともあります。日常生活に支障はありません。普段メークする習慣のないヒトは気づかないことも多いです。

□切開縫合部の目立つ瘢痕

目尻側の傷跡の幅が広くなることがあります。若年ほどその傾向がみられます。キズが落ち着いてから修正手術を検討しましょう。

□低矯正・過矯正

期待したほどまぶたがあがらない、もしくはあがりすぎることです。左右差が目立ちます。修正手術の適応です。

□眼瞼けいれんの顕在化・悪化

まれに潜在的に眼瞼けいれんがあり、術後に悪化することがあります。眩しさ、目のショボショボ感、まぶたの重さを強く感じる場合です。追加手術やボツリヌス毒素注射治療を検討します。

眼瞼下垂手術のリスク

□左右差

3〜6ヶ月経過して変わらなければ修正手術の対象となります。もともとの筋力や骨格の左右差や神経支配、利き目、利きマブタ、シーソー現象など左右差を作る要素はたくさんあります。完全なる左右対称を求めない方が精神衛生上望ましいです。

関連記事『修正対象の90%は左右差(低矯正)』

□眉毛下垂・顔貌の変化

前額(おでこ)の緊張が緩むことにより、眉の位置が下がります。顔つきが変わったように感じることも。おでこの緊張も月日とともに回復し、眉の位置がふたたび上がってくることもあります。

□眼瞼の外観に対する違和感

「もう少し丸い形がよい」「内側ピークが良かった」…などなど目の形に対するこだわりがあり、期待通りにならないことです。元々の骨格や皮膚・脂肪の厚みなどもあり、限度はあります。

まぶたは極めてデリケートな部位であり、100%満足を保証することは困難です。

□睫毛外反

睫毛が上を向くことです。睫毛が細くて短い場合、睫毛の奥のwaterline(ピンクの結膜部分)が目立つようになります。修正は困難です。

□下垂の再発

機械的な刺激(こする習慣、コンタクトレンズ、打撲など)により連結の糸がゆるみます。再手術の適応です。また、年月とともに加齢現象として応分の下垂の進行はあります。

眼瞼下垂手術併発症仕上がりに関するもの

こちらの記事にもまとめてあります。

「眼瞼下垂症手術のリスクをあらかじめ知っておきましょう」

時間がありましたらゆっくりご覧ください。

記事の最後にPDFファイルを添付しました。プリントしてご覧になっていただくこともできます。

【他院で手術を受けてトラブルになり、来院する患者さん】

ナイーブな問題です。実際にどのようなものが多いでしょうか。

それは、

「違和感」

「開き過ぎ」

もちろん辛い症状ですね。しかしこれらはあらかじめ想定される、起こりうる症状でもあります。患者さんの口から出るのは、

「眼瞼下垂の手術って簡単ですぐ終わると言われた」

「見た目も綺麗になるし、失敗はないと言われた」

という前医に対する不信感です。

これらは、あらかじめ心構えができていれば、避けられた「感情」かもしれないのです。この講座の受講者さんは「眼瞼下垂治療は簡単でないこと」と「そのリスク」を十分に理解したので、まずはその点はクリアです👍

【余談】

私のところを受診する患者さんは、これら併発症(合併症)のことをよ〜く勉強されています。

私「手術後に腫れて、青タンが…」

「知っています。覚悟できています。」

私「左右差が…」

「分かっています。もともと人間って左右差ありますしね」

こんなペースで外来診療が進むので本当に助かります^ ^

いかがでしたか?敵を知れば怖さもなくなります。

• ベストを尽くしても左右差が出ることがあるという事実はご存知でしたか?

• 状況により追加治療をしたり、経過を見守る必要がある事は理解できましたか?自分だったら我慢できますか?

• 内出血の青あざは吸収されるまでに1ヶ月かかることはご存知でしたか?あなたは1ヶ月待てますか?

次回の、5日目の眼瞼下垂完全ガイド(最終)

どのように担当医を選べば良いのか?その基準をお伝えします。

これは拡散してほしくない、秘密にしておきたい内容。

あとがき

早起きは得意?苦手?

私は歳をとるごとに自然と早起きになってきました…もっと寝ていたいのに目が覚めてしまうんですね。

そういえば、社長とか教授クラスの人が早朝に出勤していますよね。やたらと恐縮する思いをしませんでしたか?

そうなんです。彼らは朝早く目が覚めてしまうだけだったんですね〜。

眠れるというのは「若さ」なんですね( ^ω^ )

ちなみに、睡眠がうまく取れないとお肌の状態が本当に悪くなりますね。つまり傷の経過にも睡眠の質は影響しそうですね。

睡眠はしっかり取れていますか?

 

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