まぶたへの麻酔薬の注射で感じるピリピリ。
これはカプサイシンを感じる受容体が反応しているのです。
カプサイシンといえば「唐辛子」。食べると辛さと痛み(灼熱感)を感じますね。
口の中に「辛さと痛みを感じる受容体(レセプター)」があるのです。
TRPV1 transient receptor potential
1997年に発見された神経末端の受容器です。最近の発見。
肌、腸管(口だけでなく肛門にも)など全身に分布します。
受容体というのはシグナルを受け取る「鍵穴」です。「ハマる鍵」を受け取るとスイッチがオンになります。
そして神経を通じてカラダが様々な反応(生理作用)をおこします。
TRPV1のスイッチをオンにするもの(鍵)
なぜか複数あります。これがこの受容体の特徴です。
- 43度以上の温度
- カプサイシン
- 酸
- エタノール
- リドカイン
あっついお風呂は痛みを感じます。
英語で”Hot!”は熱さもしくは辛さを表します。まさに同じ受容体が反応していたんですね。
リドカインは局所麻酔薬。
だから薬が染み込むタイミングではしみるんです。
目の表面の点眼麻酔も一瞬ヒリヒリしみますよね。
生理作用
(1)交感神経賦活
副腎髄質からのアドレナリンの放出を促します。血圧、心拍数をあげるなど交感神経を興奮させます。
血糖と脂肪酸の利用をうながします。
辛いものを食べるとカラダが熱くなりますよね。体温上昇効果もあります。
(2)胃酸分泌抑制
食欲を促すので胃酸分泌は増えそうですが、逆の効果のようです。これは意外。
(3)局所の痛み、灼熱感
侵害に対する身体防御機構です。
注射直前にまぶたを冷やす意味
私は局所麻酔(リドカイン)注射直前にまぶたを冷却します。
リドカインは先ほど述べたように「受容体にはまる鍵」でしたね。
受容体(レセプター)の感受性を低めることができるからです。結果、痛みを減らすことができます。
熱々のカレーと冷たいカレー、熱いチゲ鍋と冷たいキムチを想像してください。
冷却は辛さ(灼熱感)を感じにくくさせます。
(追記)
なお、お食事中の激辛を感じてから水で流しても遅いそうです。
カプサイシンは脂溶性であり、細胞内へ移行してから受容体と結合します。だから辛さを感じるまでにタイムラグがあり、かつ、感じてからは水で流しても遅いというわけですね。(富永真琴先生の記事参照)
参考
◎Leffler A, Fischer MJ, Rehner D, et al. The vanilloid receptor TRPV1 is activated and sensitized by local anesthetics in rodent sensory neurons. J Clin Invest. 2008;118(2):763-776. doi:10.1172/JCI32751
◎Caterina MJ, Schumacher MA, Tominaga M, Rosen TA, Levine JD, Julius D. The capsaicin receptor: a heat-activated ion channel in the pain pathway. Nature. 1997 Oct 23;389(6653):816-24. doi: 10.1038/39807. PMID: 9349813.