緑内障点眼で眼瞼下垂になる、「プロスタグランジン関連眼窩周囲炎」とは?

こんにちは、形成外科専門医の金沢です。

眼科で目薬治療をした結果、まぶたに副作用が起こることがあります。最近は緑内障治療をしている患者さんの眼瞼下垂相談が増えています。因果関係はあるのでしょうか?

実は眼科からも緑内障の薬で目周りの皮膚にトラブルが起こることが報告されています。今回は点眼にまつわる眼瞼下垂をとりあげます。

緑内障治療で使う点眼薬が眼瞼下垂を引き起こす

プロスタマイドF2α受容体に作用するプロスタグランジン製剤。点眼することで眼圧をコントロール。

その点眼薬が目の周りに引き起こす変化が報告されています。

緑内障:目の内部の圧力が高まる病気。タイヤの空気を入れすぎた状態。放置すると失明に至る。40歳以上で20人に1人が罹患する。点眼で目の内部の水分の流れ(水分の産生や流出)を制御することで緑内障を治療する。

プロスタグランジン関連眼窩周囲炎 PAP:Prostaglandin Associated Periorbitopathy

  • 眼瞼下垂
  • 上眼瞼の落ち窪み
  • まぶたの皮膚弛緩
  • 眼窩の脂肪の萎縮
  • 眼球陥凹
  • 下三白眼
  • まぶたの血管が目立つ
  • 皮膚の色素沈着
  • まつ毛の伸び

参考:eyewiki

副作用としての、皮膚の色素沈着睫毛の多毛化(伸長)は目に見えるのでよく知られています。

緑内障点眼治療が長期にわたる患者さんで、目周りが黒ずみ、まつ毛がフッサフッサの人をたまに見かけます。

副作用を利用したまつ毛美容液(まつ毛を伸ばす薬:グラッシュビスタ)が発売されたのは記憶に新しいです。しかしその美容液で皮膚の色素沈着や皮膚の萎縮を起こすこともわかっています。

なぜ眼瞼下垂を引き起こすのか?

実はよくわかっていません。まぶたの中の炎症がミュラー筋の機能を障害するのか。もしくは眼瞼挙筋の機能そのものを障害するのか?

皮膚や脂肪の萎縮を引き起こすことは確認されているので、挙筋腱膜自体の萎縮を助長する可能性はありそうです。

わたし金沢は、緑内障もちの眼瞼下垂患者さんの手術もしています。しかし、今のところ術中所見として、緑内障点眼の肉眼的特徴を腱膜に確認したことはありません。普通の眼瞼下垂症手術で改善しています。

一方、緑内障点眼による眼瞼下垂は通常の手術の効果が出にくいという報告(学会で)はあります。

緑内障点眼をしている眼瞼下垂患者さんの治療をしていても、その眼瞼下垂の原因が、退行性(加齢性)のものなのか、点眼薬によるものなのか、あるいは両方か、も区別がつきません。

その点も問題をややこしくしています。肌感覚としては眼瞼下垂患者さんで、緑内障治療をしている人は多い印象です(個人的感想)。つまり、緑内障点眼は眼瞼下垂を引き起こしているかもしれないという感想です。

実はこの点において、左右差のある患者さんは説得力のある経過を教えてくれます。それは片目の緑内障点眼をしている場合です。

Prostaglandin Associated Periorbitopathy (PAP) is the genera…

こちらの記事でも片目点眼による変化を捉えています。緑内障点眼をしている側のまぶたに、上のような変化が起きていることを確認しています。

目の上の落ち窪み(眉下のくぼみ)

上の記事でも紹介されている通り、目の上の落ち窪みは見た目のインパクトが大きいです。

  • Sunken eye
  • deepening of the upper eyelid sulcus (DUES)
  • 上眼瞼溝の深化

などとも呼ばれます。

眼窩脂肪が萎縮するからとされています。参考:Changes to upper eyelid orbital fat from use of topical bimatoprost, travoprost, and latanoprost. Jpn J Ophthalmol 55:22-27.

一方、眼瞼下垂によっても落ち窪みが起こることはよく知られていますね。先日記事にしました。

関連記事:『上まぶたの落ち窪みは眼瞼下垂が原因か?』

そうなんです。上眼瞼の落ち窪みを見たら、眼瞼下垂を念頭に入れる必要があるんです。

参考:添付文書(デュオトラバ)

プロスタグランジン関連薬・ベータ遮断薬配合剤。

その他の副作用:…(略)…眼周囲多毛化、睫毛成長、睫毛剛毛化、睫毛乱生、睫毛変色、睫毛重生、睫毛色素過剰…(略)…眼瞼色素沈着、眼瞼浮腫、眼瞼炎(アレルギー性眼瞼炎を含む)、眼瞼紅斑、眼瞼下垂、※眼瞼溝深化(※上眼瞼がくぼむ、※二重瞼になる等)…(略)

出典:日経メディカル処方薬事典

きちんと記載されています。尚、これらの副作用を嫌がって治療を中断することのないように。緑内障は進行すると視力を失います。

実際のモデル患者さん

両目の緑内障点眼治療( ブリモニジン酒石酸塩)をしています。それに加え、左目だけトラボプロスト(Travoprost)というプロスタグランジン製剤を点眼しています。

緑内障点眼治療中の患者。眼瞼下垂術前術後写真
左目だけプロスタグランジン製剤を使用中。眼瞼下垂術前と術後。

左の眼瞼下垂を認めます。それに加え、

  • 左目の落ち窪み
  • 左まぶたの肌の色素沈着(いわゆるシミ)
  • 左の下三白

を認めますね。まさにPAP(プロスタグランジン関連眼窩周囲炎)の特徴です。

ここまで鋭敏に左右差が出てくれると分かりやすいです(n=1ですから、もちろんたまたまである可能性もあります)。

さて眼瞼下垂の治療(両まぶた)をすると、落ち窪みが改善し、下三白も改善しました。色素沈着は残りました(当たり前😅)。左上まぶたのボリュームを補充する治療(脂肪移植やヒアルロン酸注射)はしていません

このことが示唆するもの

今までの報告による説によれば、左のまぶたの落ち窪みは「脂肪の萎縮」が原因のはずです。

では、果たして本ケースで当てはまるでしょうか?

眼瞼下垂の治療後、劇的に落ち窪みが改善しました。術後に脂肪は増えていないはずです。何かを移植したりもしていません。(少し落ち窪みは残っています。)

つまり、

このモデルさんにおいては、「上まぶたの落ち窪み(Sunken eye)の原因は、脂肪萎縮そのものよりも眼瞼下垂によることの方が大きい

のではないかということです。

プロスタグランジン製剤が、何かしらの経路で「目の上の落ち窪み」と「下三白」をもたらします。その経路として、眼瞼下垂の存在が大きいことが示唆されるのですね。(もちろん左まぶたの落ち窪みが少し残っていることから、脂肪萎縮も原因になっていると思われます)。

関連記事:『眼瞼下垂になると、どうして下三白眼(したさんぱくがん)になるのか?』

まとめ

以上、

  • 緑内障点眼がまぶたに起こす副作用、PAP(プロスタグランジン関連眼窩周囲炎)
  • 緑内障点眼が眼瞼下垂の原因になる可能性
  • 落ち窪みは眼瞼下垂の影響が大きい
  • 下三白も眼瞼下垂の影響が大きい
  • 実際のモデル症例

を提示しました。

  • あなたやあなたの家族は緑内障の治療をしていますか?
  • 緑内障点眼はまぶたに副作用をもたらすって知っていましたか?
  • 緑内障点眼の副作用によるまぶたの落ち窪みは改善の可能性があるって理解できましたか

今すぐどうこうということはありませんが、確認してみましょうね。

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