眼瞼下垂による目の上の落ち窪み、眉下の凹み
「加齢とともに顔がやつれてきて、眉下のくぼみが目立ったきた…」
“Sunken Eye”と言います。
「眼瞼下垂になると目の上が落ちくぼんでくる」って聞いたことありますか?そして治療をしたら「落ち窪みが治った」なんて。
確かにそのような現象は見られます。
このかたは見た通り右の眼瞼下垂。右の治療をしたら、落ち窪みが改善しました。
なぜこのようなことが起こるのか?
仮説として、
- 眼瞼挙筋腱膜が後退(奥に引っ込んでしまう)するためにその周りの脂肪組織などもつられて引っ込んでしまう。
- 下垂側の眉が高く挙がるので眉下の組織(主に眼輪筋、眼輪筋下脂肪など)が上に移動してしまう。
ことが挙げられます。
(参考:「眼瞼下垂術後の目の上の落ち窪みの変化」Mawatari Y, Fukushima M, Kawaji T. Changes in Sunken Eyes Combined with Blepharoptosis after Levator Resection. Plast Reconstr Surg Glob Open. 2017;5(12):e1616.)
ということは、眼瞼下垂を治せば
- 後退した眼瞼挙筋が前転し、その周りの組織も前転される
- 眉が下がるので眉下組織が補われる
結果、目の上の落ち窪み(Sunken eye)は治るということが言えそうです。
眼瞼下垂を治療すれば私の目の落ち窪みは治るの???
回答は「人による」です。
両側眼瞼下垂ケース1(落ち窪み改善)
落ち窪みが左右とも目立ちます。眼瞼下垂手術で落ち窪みが明らかに改善したのがわかりますね。
両側眼瞼下垂ケース2(落ち窪み変わらない)
左右の目の上の落ち窪みが目立ちます。眼瞼下垂手術をしてもほとんど変わりませんでした。実はこのケース、術直後は眉がドンと降りて奥二重のような厚ぼったい雰囲気になったのですが、時間の経過とともに眉があがり、目の落ち窪みが再発したのです。
結局本ケースのように、経過が極端に割れるのです。あらかじめ術前にこれを予測することは現時点では困難。悩ましいです。
しかしながら冒頭に示した左右差のある眼瞼下垂症患者さんの治療経過から、このメカニズムの存在は明らかであると言えます。
一方「眼瞼下垂を治したら絶対に落ち窪みが治る」という保証はないということもおわかりいただけると思います。
両側眼瞼下垂ケース3(落ち窪み変わらない)
「眼瞼下垂が原因である落ち窪み」は改善します。しかし、それ以外が原因(加齢変化など)の場合は眼瞼下垂を治療しても落ち窪みに変化はありません。
片方だけの眼瞼下垂かつ落ち窪みのケース
眼瞼下垂が原因の落ち窪み(凹み)です。だから眼瞼下垂を治せば落ち窪みは改善します。
尚、当記事は特定の手術をプロモートするものではありません。まぶたの生理学を追究するものであり、いち形成外科医が考察する雑記であります。皆さんと情報を共有し、まぶたの真理を追究することが目的です。手術自体はリスク(出血、傷が残る、左右差、違和感など)があり、慎重に検討されるべきです。
加齢による目の落ち窪みも当然ある
改めていうまでもないですが、加齢によって目周りの脂肪が減ります。加えて顔面骨も萎縮変形して眼窩の容積(目玉を収めているソケット状の構造)が大きくなるので目玉が落ちていきます。
この点は忘れてはいけない要因ですね。
ですから、若い時に闇雲に厚ぼったいまぶたを手術で減量しようと試みるのは控えたいものです。
緑内障点眼による落ち窪み
近年では緑内障点眼による目の上の落ち窪み現象も指摘され始めています。点眼薬によって目周りの炎症が引き起こされ、脂肪が萎縮するようです。一方、緑内障点眼によっても眼瞼下垂が引き起こされることが指摘されています。ダブルパンチです。
PAP:prostaglandin associated periorbitopathy プロスタグランジン関連眼窩周囲炎
緑内障点眼で用いられるプロスタグランジン製剤による副作用。眼瞼下垂、上瞼の落ち窪み、皮膚の萎縮、色素沈着
こんにちは、形成外科専門医の金沢です。緑内障治療をしている患者さんの眼瞼下垂がんけんかすい相談が増えています。因果関係があるのでしょうか?緑内障の薬で目周りの皮膚にトラブルが起こることが報告されています。緑内障点眼によって起[…]
文献
ビマトプロストは眉下の落ち窪みが大きかった。
J Glaucoma. 2013 Oct-Nov;22(8):626-31. doi: 10.1097/IJG.0b013e31824d8d7c.
Deepening of the upper eyelid sulcus caused by 5 types of prostaglandin analogs.
Inoue K1, Shiokawa M, Wakakura M, Tomita G.
片側点眼での比較。
Ophthalmic Plast Reconstr Surg. 2015 Sep-Oct;31(5):373-8. doi: 10.1097/IOP.0000000000000351.
Unilateral Prostaglandin-Associated Periorbitopathy: A Syndrome Involving Upper Eyelid Retraction Distinguishable From the Aging Sunken Eyelid.
Rabinowitz MP1, Katz LJ, Moster MR, Myers JS, Pro MJ, Spaeth GL, Sharma P, Stefanyszyn MA.
「疲れると夕方くらいには目の上が落ちくぼんでしまう」これって顔が痩せている人やまぶたが痩せている人だけだと思っていませんか?実はまぶたが厚ぼったい人にも起こります。今回は目の上の落ちくぼみについて考えます。目の上のくぼみ[…]