眼瞼下垂手術直後から左右差があった場合

眼瞼下垂の手術直後から左右差が

心配になりますね。ずっとこのままなのでしょうか?

担当医に尋ねると「もう少し待ってください」と言われます。

結論。

『慌てずに経過を見る』

なぜ様子を見たほうが良いのか?

目の開きが変動するのです。その変動に寄与するパラメーターが複数あります。

(1)腫れの変動

(2)眼輪筋の強さの変動

(3)創傷治癒の進行

(4)ミュラー筋の感度の変動

(5)予定外線

(6)自身の調節能力

(7)その他

それらの総和で「目の開き加減」が決まります。

「目を大きくしようとするチカラ」と「目を小さくしようとするチカラ」の綱引きが起きます。しばらく揺れ動きます。

予想されるシナリオはみっつ。

  • 左右差は変わらない
  • 左右差が縮まる(もしくは逆転する)
  • 左右差が大きくなる

(これはつまり直後に左右が揃っていても、経過の中で左右差が現れることもあるということを意味する。)

実際どのシナリオになるか?は経過を見てみないとわかりません。

なぜ経過が予測できないのか?

複数のパラメータの変動ひとつひとつは予測できてもそれらの総和がプラスかマイナスになるかがまったくもってわからないのです。

(1)腫れは開瞼かいけん(目を開くこと)の抵抗になります。じゃあ腫れが退けば安心?そうとも言えません。瞼が挙がりにくい状態がしばらく続くとその状態で挙筋たちが周りと癒着してしまうことも。癒着の結果予定外の線が現れるとそれ自体が抵抗に。自然に予定外の線が治ることもあり、すると目は開きやすくなります。

(2)創傷治癒過程で組織は硬くなります。組織を修復するための足場が組まれるんです。それがまぶたの奥深くまで起こります。これは開瞼抵抗かいけんていこう(目を開きにくくするチカラ)になる。組織が修復されると足場は解体されます。そのプロセスが6ヶ月。そして柔らかくなってきます。組織が柔らかくなることは目を開きやすくなることを意味します。

(3)眼輪筋は一時的に麻痺します。すると目を閉じるチカラが弱まります。目を開くためのブレーキが減るため目は開きやすくなります。そして一ヶ月あまり経過したあたりから眼輪筋の動きが回復してくるのです。すると目は少し小さくなるんです。

一時的にまぶたが過敏状態になる人もいます。すると眼輪筋のチカラは強くなります。その期間は目が小さくなります。そして眼輪筋の緊張がほぐれてくるとまた目は開きやすくなってきます。

(4)ミュラー筋の感度が変動します。弱まる場合と強まる場合が。感度が弱まると挙筋のチカラも弱まる、一方眼輪筋のチカラも弱まる。眼瞼挙筋と眼輪筋との綱引きです。どちらが勝つかでプラスかマイナスが決まります。逆にミュラー筋の感度が強まった場合は挙筋のチカラが強まり、場合により眼輪筋のチカラも強まる。これも総和でプラマイがきまります。

(5)二重ふたえ以外の予定外の線が現れるとそれ自体が抵抗に。自然に予定外の線が治ることもあり、すると目は開きやすくなります。

(6)自身の調節能力があります。脳の可塑性により、まぶたを持ち上げる力を強めるための『脳からのシグナル』が調整され、左右差がそろってきます。若い人はこの点は有利。

(7)その他未知の要素がある。

対処法

原則は待つことです。3ヶ月から半年。

上に掲げたパラメータの変動が収まってくるため、目の開き加減も落ち着いてきます。

※術者の判断ですぐに留め直しをすることもあります(これは術中の局所麻酔の影響などで手術の際にバランス評価が困難であったなど、心当たりがある場合が多い)。

左右差を治す方法

経過を見た結果、「左右差を直しましょう」という流れになったら手術です。

  • 小さな方をもう少し大きくする
  • 大きな方を少し下げる

小さな方をもう少し大きくする(挙筋前転術)

眼瞼挙筋がんけんきょきんの前転を少し強めます。

大きな方を少し下げる(挙筋後転術)

眼瞼挙筋を少し後転します。これは結果がよみにくい側面があります。なぜならば創傷治癒過程で『収縮』が起こるからです。その結果眼瞼挙筋が前転してしまい、目の開きが大きくなります。

この現象はやっかい。

対処法としては後転の程度を多めにし、しっかり下げきってからあらためて眼瞼下垂手術(挙筋前転)を行う方法です。つまり2回に分ける方法。

私個人としては小さい方を持ち上げる修正手術にしたいです。結果が予測しやすいから。そして手術の回数も減らしたいから。その点から初回手術ではどちらかといえば控えめに仕上げることが多いです。大きすぎた場合を治すほうが負担が大きいからです。

ヘリングの法則(シーソー現象)も考慮

片方が下がるともう片方が大きくなる現象(逆もある)です。

だから一見『過大開瞼(目が大きすぎること)』にみえても、小さい方をすこし大きくすることで過大開瞼が治ることもあります。

これを利用して『後転術』の機会を減らしたいですね。

あとがき

この記事、実は電車内で書き始めました。

「緊急停車します」のアナウンスとともに電車は停止。原因は火災でした。

結果的に車内に80分閉じ込められたんです。あがいてもしょうがない。

そこでおもむろに膝の上で記事を書き始めたのです。

「この記事は書くべき」とずっと思っていました。しかしなかなか手がつけられませんでした。

内容がちょっと複雑だからです。

まあでも結果的に書き上げるに至ったので電車の遅延に感謝です。

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