教科書を開けば、加齢による下垂はすべて腱膜性であるかのように書かれています。患者さんへの説明でも、おそらくは例外なく「腱膜が原因」とされていますよね。
ですがね、、、
70歳を過ぎてからの眼瞼下垂の手術。挙筋前転法による手術で、効果が十分に出ない人が4人にひとりくらい(具体的な数字は不明)います。
病気でもないのに、一体なぜだと思いますか?
加齢性眼瞼下垂は、筋原性つまり出力の低下が問題だった
結論からいうと、眼瞼下垂の原因が「腱膜」ではないから。
※今日の記事は金沢の個人的解釈です。まだ論文やテキストにあまり掲載されていない知見です。
加齢性の眼瞼下垂(退行性眼瞼下垂)といえば、すべて「腱膜性」と思われがちです。なんとなく昔から、「加齢性眼瞼下垂の原因は腱膜の劣化によるもの」と世間でも、医師の間ですらそう解釈されてきました。
まあ、大体は正解。ですが、蓋を開けてみると、原因はそれだけではないことがわかったのです。
開けてみると腱膜は外れていないし、挙筋も後退(奥にひっこんで)していません。例えると、アキレス腱断裂の手術をするために踵を切開したものの、アキレス腱は切れていなかったというオチ。
じゃあ、何が原因なのか?腱膜が破断していなくて目が開かないとは?
筋原性
それは筋肉。眼瞼挙筋の動きが乏しくなっているのです。まあ、冷静になって考えれば、歳を取れば身体中の筋肉が衰えてきます(サルコペニア)からね。眼瞼挙筋も例外ではありません。筋肉自体の退行性変化があるのです。筋肉の出力不足ですね。
つまり、筋原性(Myogenic)であるということ。この点はすんなり受け入れると思います。納得。

外眼筋のひとつである上直筋と眼瞼挙筋は兄弟(同じ動眼神経支配)。外眼筋が衰えれば挙筋も衰えて当然。
単純化の弊害
これまでの医療は、難しいことをわかりやすくするために、加齢性(退行性)眼瞼下垂をとりあえず「腱膜性」として扱ってきました。(※症候性眼瞼下垂はのぞく)
その弊害が無視できなくなってきたようです。腱膜固定でうまくいかなかったとき、「固定が甘かった」「前転が不足していた」と技術的な反省に終始し、「筋肉そのもののポテンシャル」を見落としているのです。
※現実は腱膜性と筋原性が併存します。どちらがより支配的(優位)かという判断になります。
高齢者の眼瞼下垂手術
挙筋前転法はある程度は有効。ですが、筋肉が動いていない以上、その効果には限界もあります。
もっと大きな目になりたい?だとしたら「筋膜移植手術」もあります。しかしこの術式は目の開きが想定以上に大きくなったり、目が閉じられなくなる危険性があります。
まぶたは眼球を保護することが第一のしごと。閉じられなくなることの方が深刻な問題になります。まして、寝たきりになったとして、目が閉じられないとしたらどうします?介護を受ける立場になったあなた。点眼、目にワセリンなど、。。。自分でできなくなるのです。
だからこそ、私はこうお勧めしたいとおもいます。(2026年現在)。
「挙筋が弱い場合の眼瞼下垂手術では、控えめな仕上がりで治療を終えること」。
目を閉じることを最優先し、最低限目を開いてものが見える程度に仕上げること。ほんの少し瞳孔が出ていれば、テレビも読書も楽しめます。意外にもこれで生活の質(QOL)は劇的に改善したりするものです。

課題
こんなことをいいだした私ですが、エビデンスは?データは?と問われると返事に困ります。現実問題、眼瞼挙筋を生きている人から切り出して病理検査するなんて倫理的に許されません。研究のハードルが高すぎます。
なにかいいアイデア、ありませんか?

