こんにちは、金沢です。
「腱膜固定の糸は溶ける糸ですか?」
よく聞かれる質問の一つです。
眼瞼下垂症手術で挙筋腱膜(もしくは隔膜)を瞼板へ固定するために留める糸です。挙筋の牽引力が縫合部を介して瞼板を挙上します。

腱膜固定の糸
2015年現在、Ethicon社のプロリーンという商品を用いています。溶けず、吸収されません。
通常血管吻合に使われる糸で、永久的に体内に残しても人体への悪影響は無いことが長年の実績から示されています。
この糸の特徴は以下です。
- 青い
- しなやかで弾力性がある
- 結んだ結節がほどけにくい
- 組織の炎症を起こしにくい
再手術、修正手術の際にこの糸を観察すると、
- 青い
- 結節がほどけていない
- 周囲の組織の炎症を伴っておらず糸の周りに瘢痕が無い
ことが確認されます。
他院修正の手術でも同様の糸が見つかるので、この縫合糸を使用する形成外科医が多いことが推測されます。
私個人としては再手術の際に、無理してまで古いプロリーン糸を摘出することはしません。なぜならば残しておいても害は無く、摘出するために組織を切ったり穴を開けることの方が侵襲が大きいと思われる場合もあるからです。
「腱膜固定に吸収糸は使わないの?」
吸収される糸は私個人は腱膜固定に使用したことはありません。
理由は、溶ける糸は強度が速やかに低下し、固定が外れて眼瞼下垂が再発する可能性があるからです。
瞼板前組織を切除して腱膜と瞼板とを瘢痕癒着させる手術手技ならば再発はしにくいでしょう。一方、わたしの手技では瞼板前組織も極力温存している(自然な重瞼線をつくる)ため、瞼板と腱膜がしっかり固く癒着していません。そのために糸による連結が必要と考えています。
とは言え、数年経過してもその糸の張力が機能しているか?と言われると「機能している」と断言は出来ませんが・・・・
私の予想では、糸によってしっかりマブタが挙がるようになると、年月の経過とともに、まぶたの組織がそれに合わせてリモデリング(再構築)されて糸の張力への依存が小さくなるのでは、と考えています。
こわばった関節をリハビリテーションで動かしていると関節周囲の組織が柔らかくなって、可動域が増えますよね。