白内障手術と眼瞼下垂症手術どちらが先?
絶妙なタイミングで「まぶたの治療」と「白内障手術」とが重なりそうになることがあります。
私の回答はこうです。
「白内障手術を優先してください。そして、3ヶ月ないし半年経過を見てから眼瞼下垂症手術を相談しましょう。」
もちろん逆のパターンもあります。本ページの追記参照。
白内障手術を優先する理由
「白内障手術自体が眼瞼下垂症を悪化させる可能性があるから」です。
まぶたを開いた状態で押さえておく「開瞼器(かいけんき)」。目の表面の手術でまぶたが邪魔しないように押さえておくのです。
しかし、このストレスが原因で眼瞼下垂が進行してしまうのです。
「かつては球後麻酔が原因と言われていたが、局所の点眼麻酔しか用いなくなった現在においても眼瞼下垂になる人がいる。その原因は開瞼器の硬さにありそう。」
Eye (Lond). 2013 Sep;27(9):1098-101.
Mechanical testing of lid speculae and relationship to postoperative ptosis.
Crosby NJ, Shepherd D, Murray A.
とのこと。開瞼器でまぶたの中が壊れてしまう。つまり、眼瞼挙筋腱膜が外れて緩んでしまうということです。
医療行為によって引き起こされる、医原性「腱膜性眼瞼下垂症」です。2018年現在、避けられない併発症(合併症)です。
眼瞼下垂手術を優先した場合、その後の白内障手術で眼瞼下垂症を再発させてしまうリスクがあるのです。残念極まりないですよね。
以上の理由から、白内障手術を先にしてもらいます。多少その手術で眼瞼下垂が進行しても、修復できますからね😊
「開瞼器が水平方向にまぶたを伸展してしまうのが原因かも?」
Orbit. 2012 Aug;31(4):274-8.
Blepharoptosis following anterior segment surgery: a new theory for an old problem.
Mehat MS, Sood V, Madge S.
というメカニズムの提案もありました。厳密には「腱膜が壊れる」というのも仮説の段階なんですね。
もし、眼瞼下垂の手術を先にしていたら?
キズが落ち着くまでの半年は待てれば待ったほうが良いと思います。「開瞼器」のストレスで連結した腱膜が外れて緩んでしまう可能性があるからです。手術して間もない時期はキズが固く、もろいのです。
以上は著者金沢の見解です。患者さん個人個人で状況は異なりますから担当医ときちんと相談してくださいね😀
追記
「眼瞼下垂症手術を先にした方が良いかも?」説
近年、白内障手術で視力の矯正も同時に行うことができるようになってきました。眼瞼下垂症手術で視力が変化する人が稀におられるのです。だから、眼瞼下垂症手術のあと視力が安定した6ヶ月後以降に、視力矯正も兼ねて白内障手術をするのもよいですね。
こんにちは、形成外科専門医の金沢です。眼瞼下垂手術では、眼球には触れません。それなのに手術後に、「メガネが合わなくなったみたい」「老眼鏡が不要になった…」一週間後の抜糸の時に、患者さんから報告を受けます。なぜでしょう[…]
追伸
おおたけ眼科上尾医院院長の菊池善公先生
まぶた治療の患者さんも診てもらっています。心強い味方です。眼科領域の医学の進歩って目覚ましいですね。白内障手術で老眼や近視を同時に治したり、iPS細胞を利用して網膜色素変性症を治療するとか。このような治療の結果がダイレクトに分かり、患者さんの生活の質改善が見られる医学って好きです。