まぶた治療に特化した形成外科専門医が作った眼瞼下垂情報

眼瞼下垂手術後の視力変化とは?【視機能の変化】

こんにちは、形成外科専門医の金沢です。
眼瞼下垂手術では、眼球には触れません。それなのに手術後に、
「メガネが合わなくなったみたい」
「老眼鏡が不要になった…」

一週間後の抜糸の時に、患者さんから報告を受けます。

なぜでしょう??私も昔は首を傾げたものです。

眼瞼下垂症手術後に視力が変化するのです。「視機能の変化」がテーマ。

完全に防ぐ手段はありません。あらかじめ知っておくべき併発症。

「眼球をいじる手術じゃないからアリエナイ!」なんて言う医師がいたらモグリの医者かもしれません😅

眼瞼下垂症の手術後に視力が変化する

術前に患者さんに説明する項目でもあります。近年では学会でも報告されるようになりました。

乱視の変化など、屈折変化が生じます。

なお、「悪化」とか「改善」という表現は用いません。

老眼が治り、「お茶碗の飯粒がよく見える様になった」と言う人もいます。もしかしたらその人は、遠くが見えにくくなっているかもしれません。だから一概に良い悪いとは言えないのです。

しかも、手術後3ヶ月くらいは視力に変動があるようです。半年もすれば安定します。

ほとんどの患者さんは視力変化に気づきません。

眼瞼下垂症手術が視機能に影響を与えるメカニズムとは?

眼瞼下垂が視力に与える影響のメカニズム

 

1.眼瞼圧

角膜(黒目)形状は外力で容易に変形します。(オルソケラトロジー:この現象を利用して視力矯正を行う治療)

眼瞼下垂の状態ではまぶたが黒目(角膜)に被さっています。眼瞼圧(まぶたが目玉の表面を押す力)が常に角膜にかかっています。術後にまぶたが持ち上がると、角膜にかかる眼瞼圧が変化します。

加齢変化による乱視は倒乱視(ラグビーボールが立っている)、眼瞼下垂術後の乱視は直乱視(ラグビーボールが横になっている)です。

老化による眼瞼圧の影響(圧が上昇する場合もあるし、減少する場合もある)で乱視が生じ、眼瞼下垂手術によってその眼瞼圧が変化し、乱視が変化するということです。

もともと厚ぼったいまぶたのひとは挙筋腱膜を押さえつける構造(下位横走靭帯など)が発達しており、眼球を押す力が強いです。この場合も眼瞼圧が変化します。

その結果、乱視が変化します。

眼瞼手術後のむくみの変化は月日にわたります。その影響により、視力の変化の変動も数ヶ月にわたります

参考文献:

◎鄭暁東「眼瞼下垂症と視機能・眼瞼圧」雑誌形成外科 2019 vol.62(3)

◎Zinkernagel MS, Ebneter A, Ammann-Rauch D. Effect of upper eyelid surgery on corneal topography. Arch Ophthalmol. 2007;125(12):1610-1612. doi:10.1001/archopht.125.12.1610

◎Kim YK, In JH, Jang SY. Changes in Corneal Curvature After Upper Eyelid Surgery Measured by Corneal Topography. J Craniofac Surg. 2016;27(3):e235-e238. doi:10.1097/SCS.0000000000002435

なお、眼瞼下垂手術(挙筋前転法)そのものが眼瞼圧を上昇させるとの意見もあります。参考文献:◎野間一列「眼瞼下垂手術における術式の違いによる術後惹起乱視」雑誌形成外科 2019 vol.62(3)

2.視野変化

下垂患者さんは視野がせまいです。視野を絞り込んだ状態にすると像のボケが矮小化されるため、視力低下に気づきません。眼瞼下垂術後に視野が広がると像のボケが自覚され、視力が低下したように感じられます。

近視のひとは、薄目(目を細める)にすると像のボケが小さくなりますよね。その現象です。

3.グレア

まつげが視野に紛れ込むことで、乱反射を生じて視力が低下します。術後に改善します。

4.ミュラー筋の影響

老眼が良くなり、老眼鏡を必要としなくなるひとが存在します。この点が今までの仮説で説明できないことです。

これについてはミュラー筋が毛様体筋を調節しているとの説(松尾清先生談)が。

しかし私には理解できていません…

患者さんの訴えで、「見えるには見えるけど調節に時間がかかるんです」というのもよく聞きます。

5.メガネと目と見る対象との位置関係(姿勢の変化)

眼瞼下垂のひとは顎を突き出します。術後には顎の突き出しがなくなります。

そのためにメガネをかけてモノを見る際に、メガネのレンズを通る、視軸位置が変わります。レンズ自体の傾きも変化します。関連記事:『頭位変化』

顎を引くとレンズの上部を使いますが、顎を突き出すとレンズの下部を通して見ますよね。

頭囲変化による矯正視力の変化
目とメガネと見る対象との関係が変わる

眼瞼下垂症術後に視機能が変化するのを予防できるか?

メカニズムから推測されるのは、手術の影響というよりは「眼瞼下垂そのもの」によって視力が影響を受けているということです。

つまり、眼瞼下垂を治療すると、眼瞼下垂の影響が取り除かれるので視力が変わるということです。

だから、有効な対処法はありません。残念ながら。

3から6ヶ月は視力が不安定です。落ち着いたらメガネを作り変えましょう。コンタクトレンズなども臨機応変に対応する必要があります。

かなざわ
視力の変化を訴えるひとはメガネの使用者に多い。もともと視力の良いひとやコンタクトレンズを着用しているひとは視力の変化を訴えることが少ないのです。なぜだろう?

白内障の手術や近視手術と眼瞼下垂手術の順番

以上から、白内障手術や屈折矯正手術を考えている場合は、眼瞼下垂手術を先にすべきとの意見が出てきています。

関連記事:『白内障手術と眼瞼下垂手術どちらを先にする?』

まとめ

以上、

  • 眼瞼下垂術後に視力が変化する
  • まぶたが眼球を圧すことが原因の屈折変化
  • それだけでは老眼の変化が説明できない

を提示しました。

さて、あなたは、

  • あなたは乱視持ちですか?コンタクトレンズやメガネで視力矯正をしていますか?
  • 眼瞼下垂手術では眼球を触らないのに、視力変化を起こすって聞いたことありましたか?
  • 未知な部分がまだあること、ご理解いただけましたか?

目って、本当にデリケートなんですね。

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