眼瞼下垂の原因は、挙筋の連結の緩みだけではない
目が落ち窪むことが原因
高齢者の眼瞼下垂では、眼瞼挙筋の連結が緩んでいない人も割と見られる事実。
腱膜が外れていないのに、なぜまぶたが下がるのでしょうか?
骨格が萎縮し、眼窩容積が大きくなります。「眼窩」というのは目玉を入れているソケット状の構造。
すると、目が沈みます。
これは以前記事にしましたね。
加齢と奥目歳をとると目玉が引っ込んで沈んできます。子供の時はカメレオンのようにキョロキョロ目玉を動かしていましよね。頭を固定しても、黒目がくるくる動くので視野がとても広い。しかし、歳をとるごとに目が落ち窪み、つぶらな目になっ[…]
そこで何が起こるかというと、眼瞼挙筋の長さが余るのです。テンションを失った挙筋。収縮しても効果はたかが知れてます。
そしてまぶたは下がっていきます…
ウェストのベルトに例える
コンタクトレンズなどによる「腱膜性眼瞼下垂」は、ベルトの留め金部分が緩む現象。ひどいとバックルから外れてしまう状態です。この結果、ズボン(パンツ)の腰の部分が緩み、ズボンがずり落ちてしまいます。
治療では、「ベルトの穴にしっかりと金具が入るようにする」、もしくは、「ベルトの穴ひとつ分強く閉める」といったことをします。これで、ズボンはしっかりと腰に固定されますね。

一方、お腹周りが痩せた状態を想像してください。ベルトのバックル部分はしっかり機能していても、ズボンはずり落ちやすくなります。これが高齢者に見られる現象です。
この場合、留め金が外れているわけではないので、留め金を固定するだけでは効果がありません。ウェストサイズに合わせてベルトをキツく閉める必要があります。穴2~3つ分くらい。
と言いたいところですが、ここで問題があります。
実はベルトを閉める余地として穴一個分くらいしか残っていないことが多いのです。挙筋腱膜の長さが5ミリも残っていないケースもあります。新しく穴を開けたくてもそれができません。筋肉そのものに穴を開けることができないからです。
これが高齢者の特徴。
いわゆる「挙筋の前転による効果」は限度があるのですね。
脂肪変性
もうひとつの要因は、長年挙筋を利用していないために、収縮能力を失っている場合もあるのです。使われない筋肉は脂肪変性を起こします。手術中にその所見を確認することができます。本来であればレンガ色の筋肉をしている挙筋が鮮やかな黄色になっており、その隙間に名残のようにレンガ色のスジが観察されます。
脂肪変性を起こした眼瞼挙筋の動きは極めて小さいです(例外もあります)。更に輪をかけるように眼瞼挙筋はまわりの組織と癒着し、なめらかなスベリができなくなっています。
希望
ただし失望しないでください。
高齢者の目は横幅も小さくなってつぶらな目になっています。若い時のようなギラギラぎょろぎょろする目になる必要はありません。眼瞼下垂の治療では今よりも1ミリ上がれば十分です。その効果を実感できます。
瞳孔が隠れるくらいに眼瞼下垂になってしまうと日常生活に支障があります。そこからほんの少し、上げてあげましょう。それだけで生活の質は改善します。