眼瞼下垂症手術(挙筋前転法)の実際の手順

いざ手術となると怖いものですよね。どのように手術が進むのか、大雑把にその流れを知っておくと怖さも和らぎます。

原則は局所麻酔。あなたと術者は終始会話が可能な状態です。

なぜ眠らせないのかって?それは手術中に目の開き加減を確認したいからです。左右のバランスを評価したいからです。

眼瞼下垂症手術の手順

1)皮膚切開のデザイン(マーキング)。

2)局所麻酔の注射。まぶたへ直に注射します。ちょっと痛い…💦

3)皮膚切開。もう痛くありません。

4)眼窩隔膜(がんかかくまく)を開いて挙筋と挙筋腱膜を露出します。

挙筋腱膜の性状や連結の程度を評価します。その他の組織の硬さ、ボリューム、過去の怪我の痕(瘢痕)を評価します。

眼瞼解剖矢状断
まずは横からの解剖
眼瞼下垂手術
隔膜を開く
5)隔膜(挙筋腱膜)と瞼板(けんばん)とを糸で連結します。挙筋腱膜はシート状。よれてしまったベッドのシーツを敷き直すイメージです。これで眼瞼挙筋のチカラが伝わるようになります。
腱膜固定
腱膜固定の糸を腱膜と瞼板に通します
腱膜固定
糸を結んで腱膜と瞼板とを固定

6)目の開き具合を確認します。「はい、正面を見てください」「目で私の指☝️を追いかけてください」などと指示を出すので従ってください。

麻酔が効いているので違和感ありまくりです。気にしないでください。

7)必要に応じて瞼板との固定を直します。

ここが大事なポイント。挙筋を多く引っ張り出せば、目は大きくなります。控えめにすればそれなりに。無闇に目を大きくすればいいと言うものでもありません。まぶたは目を保護するためのもの。目を閉じる機能が優先です。

8)皮膚を縫合して閉じます。(このキズは線状の瘢痕になります)

眼瞼下垂手術の最後の皮膚縫合
皮膚縫合
眼瞼下垂の手術の流れ
正面から

(注:イラストはデフォルメされています)

左まぶたの眼瞼下垂症手術動画はこちら。わかりやすいように4分にまとめたダイジェスト版です。

◎伴緑也. 眼瞼下垂症手術:開瞼抵抗を処理する眼瞼下垂症手術 PEPARS No.87:73-80 2014

◎Ban M, et al. Developed lower-positioned transverse ligament restricts eyelid opening and folding and determines Japanese as being with or without visible superior palpebral crease. Eplasty. 2013 Jul 5;13:e37.

※術中の調整について

術中にまぶたの開き具合を何度か確認します。解剖学的、病理学的、神経生理学的あるいは医原性(麻酔など)に開き加減の調整が困難になる場合もあります。過度な侵襲が適切でないと判断された場合は、適切な位置に収めます。後日次の手段(修正手術)を検討します。

眼瞼下垂手術中に患者さんが意識、注意することは?

  • 顔を動かさないこと
  • 手を顔にもってこないこと
  • 緩く目を閉じるイメージ
  • 我慢しないこと

手術中はトークに弾むこともあります。術者からの問いかけに「うなづき」で反応しないでください。口で喋って大丈夫です。なお、頭でうなずくと術野が揺れます💦頭は動かさないでください。

「どこを見ていたらいいのですか?」とよく聞かれます。自然に目を閉じていてください。術者の操作で外の景色が見えることもありますが、抵抗して無理に閉じようとしなくでも結構です。

何か言いたいことがあったら我慢しないで術者に口頭で伝えてください。我慢は無用の血圧上昇を引き起こし、手術が難しくなることがあります。術者はあなたの訴えを待っています。

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