「眼瞼下垂手術を受けたら目が開きすぎて辛い、しんどい」
過大開瞼。びっくり目になり、目も閉じにくくなります。そして精神的にもストレスが大きいです。
まれですがたまにある合併症。治すのは難しいって聞いたことありますか。
なぜ難しいのか。どう治療していくのか、お話しします。
開きすぎたまぶたを治す治療
眼瞼挙筋の前転が強すぎます。これを戻す作業になります。後転術です。（締め過ぎたウェストのベルトを緩めるイメージですね）
課題が４つあります。
- 組織が不足している：前転を強くしていると余剰組織が生まれるのでそれが切除されています
- 後戻りが起こる：後転しても傷の修復過程で収縮（チジミ）が起こります。連結が復元されてしまいます。つまり元の開き過ぎに戻ります
- 複数回手術：仕上がりが予測しにくいので調整する手術が必要です。その分長期戦を覚悟します
- 二重が不安定：二重の引き込みを挙筋の力に利用します。それを失うのでどこで折れるかわかりません。のちに修正を相談します
組織が収縮するとは
ウールのセーターを高温で洗濯すると縮んでしまうでしょう。まぶた内部でその現象が起きてしまいます。
後転手術とは眼瞼挙筋とまぶたとの連結を外して間にギャップを作る発想。その部分が収縮してギャップが小さくなってしまうのです。ただその程度が読めないのです。
私が提案するのは可能な限り後転してしっかりと大きく下げることです。大きく後戻りすることを想定するからです。目標とする開き加減よりもっと下がった状態を目指します。
そして術後の後戻りを見届けた上（6ヶ月以上）で仕上げの前転手術を検討します。前転手術は結果を予想しやすいから。
実際のモデル患者さん
上に述べた治療戦略に基づきます。可能な限り後転しました。そして後戻りをドキドキしながら見守ります。
結果的にギリギリのラインで落ち着きました。これ以上開くと困るレベルです。再前転は不要と判断。
後転手術（眼瞼下垂手術の逆）の効果で眉が挙上しました。組織不足が顕在化し、凹みが現れます。かつ予定外線も見られます。
下を見た時です。まぶたが降りられるようになったのがわかりますか？
下を見た時の上まぶたの縁のカーブが上に凸ですが、これはやや不自然。下に凸のカーブになると嬉しいです。
この手の手術は時間がかかります。長い経過をゆったり見守る寛大さも必要です。
ここだけの話：治療を私が担当した場合、抜糸後からまぶたのストレッチケアをしてもらいます。傷の収縮に逆らうようにまつ毛を持って前方に引っ張ります。これを1日に3回程度。放っておくとどんどん収縮して目が開いてしまうからです。どこまで有効かは不明ですが、どこかの論文に「上がりすぎたまぶたを用手的に戻すケア」として発表されていました。これを応用します。やりすぎるとまつ毛が抜けます💦
尚、当記事は特定の手術をプロモートするものではありません。まぶたの生理学を追究するものであり、いち形成外科医が考察する雑記であります。皆さんと情報を共有し、まぶたの真理を追究することが目的です。手術自体はリスク（出血、傷が残る、左右差、違和感など）があり、慎重に検討されるべきです。
追伸
今年の夏は暑かったですね。。。心の底からしんどいと思いました。睡眠の質が悪くなります。徐々に健康が蝕まれるのを感じます。涼しいところに引っ越したい。心からそう考えました。昼は40度近くいってもね、夜だけでも涼しくなってくれればそれでいいんです。長野県や東北、良さそうじゃないですか？？😃
