「眼瞼下垂症」というキーワードが、世の中に認知されて来たことが判明。先日のセミナーの際に来場者に問うたところ、5割の人が「眼瞼下垂症」という言葉を知っていたのです。「眼瞼」とか「下垂」とか馴染みのないことばが並んでいるのが普及の障害になっていました。ようやく馴染みのあるコトバとして受け入れられてきたようです。

以前は「眼瞼下垂症」というワードの認知度があまりに低かったので、講演タイトルにも入れられませんでした。これからは可能かもしれないです 😉
さあ、これからは「眼瞼下垂症とは?」をより正しくお伝えする努力をしなければいけません。
いままで、馴染みのない「眼瞼下垂」というワードの代わりに以下のような表現を使って来ました。
「まぶたのたるみ」
「まぶたの垂れ」
「下がりまぶた」…
しかし、これでは誤解も産みます。
「皮膚が垂れてかぶさってきた…」から私は眼瞼下垂?
うーん、
正確には皮膚がたるんでかぶさってくることは眼瞼皮膚弛緩症といいます。前葉下垂タイプ。垂れてかぶさってくる皮膚が視野を妨げるので、広い意味では眼瞼下垂に含むこともあります。
まぶたの後葉(結膜側)はしっかり動いており、まぶたの表の皮膚が置き去りになって後葉だけが上下してまぶたを開け閉じしている状態です。
この場合は、二重にするか、邪魔な皮膚切除のみで改善できることもあります。(眼輪筋が邪魔していることもありますが)
では、本当の眼瞼下垂とは?
まぶたを持ち上げる眼瞼挙筋およびミュラー筋の力が弱いか、力が伝わりにくい状態です。
この場合は、皮膚のたるみ自体は大きな障害ではなく、挙筋の機能(とミュラー筋の機能)が問題となります。
このようなケースでは皮膚のたるみ取りをすることでは解決できません。
喩えれば、アキレス腱が切れたのに、ふくろはぎの皮膚を切って捨てるようなものですから。
当然、腱(腱膜の)修復が必要です。(皮膚のたるみが合併する場合はその治療も同時にする場合があります。)
実際のモニター患者さんをみてみます。

40代の女性。初めて来院された時に「眼瞼下垂症と診断します」と伝えた際、「えー!わたしって眼瞼下垂なの????』と、驚かれてしまい、逆に私が驚いたという印象的な方です。
まぶたの中身を修復します。オリジナルの二重の谷間を踏襲しつつ、皮膚切除はしませんでした。視野が改善しました。よかったですね。もし皮膚切除をしていたら?おそらく二重幅が広すぎてしまったことでしょう。
- 年齢:40代
- 性:女性
- 手術:挙筋腱膜修復術
- 皮膚切除:なし
- 脂肪切除:隔膜とPSFは発達弱い
- lateral horn リリース:左右ともhalf
- 下位横走靭帯:なし
- 挙筋腱膜の滑り:右:0 1 2(3) 4 左:0 1 2(3)4
- 挙筋前転:右:微量 左:微量
- ミュラー筋処理:左右ともなし
- 手術時間:35分
眼瞼下垂症でお悩みのかたのために、写真を使用することを承諾いただけました。心より感謝申し上げます。

