「白目が白くなったんです。」
眼瞼下垂治療のフォローアップを終了した患者さんの言葉がフラッシュバックしました。
それは先週、患者さん達の顔写真を整理していた時でした。眼瞼下垂手術をして3ヶ月。「頭痛がなくなり、いままで20年以上頭痛薬を常用していたのに、いまはもう飲んでいない」と報告してくれた患者さんの写真をみていた時でした。
あれ?妙に白目が…白い。。。。術前と比べると…おお!術前は白目が充血している。
まさにその瞬間でした。冒頭のコメントがフラッシュバックしたのは。
白目が白くなったと訴えた患者さん。実際には頭痛肩こりだけでなく、姿勢の変化、歩き方の変化など細かく観察してくれた方でした。その中では小さな「気付き」だったかもしれません。
実際わたしも、「白目が白くなった」とのコメントを頂いた時は眼瞼下垂との関連を想像することができず、記憶と記録に残すにとどめていたのです。お恥ずかしながら「白目が白くなった」を「以前は充血していた」に脳内で変換できなかったのです。
頭痛があると目が充血
良く考えて見てください。
頭痛持ちの人って目が充血していませんか?
医学的に「頭痛と充血」といえば群発頭痛を連想します。しかし、ほとんどの人は群発頭痛とは縁がありません。
日常生活レベルでみる充血は、群発頭痛でみるような「真っ赤」ではありません。疲れていたり、アレルギーでしょぼしょぼしている程度の充血です。
頭痛がすれば目が充血するなんて当たり前のことじゃないか、とお叱りを受けそうです。そのくらい我々にとっては当然の現象です。
とくに眼瞼下垂になると目が疲れます(これも当たり前だと言われそうですが)。頭痛がなくても、目が疲れれば充血しますよね。
つまり、眼瞼下垂が頭痛や目の疲れを引き起こし、その随伴現象として目の充血をもたらしていたと考えられるのです。
そのメカニズムは?
「痛み刺激が充血をもたらす」
これは分かりやすい。
あるいは
「血管拡張が目の充血をもたらしつつ、頭痛をもたらす」
その血管拡張の原因として、
- 副交感神経の興奮(眼窩の奥の副交感神経節):群発頭痛の原因
- 青斑核からの放たれるセロトニン:偏頭痛の原因とする仮説です
- 筋肉の疲労物質である乳酸:血管拡張をもたらし、かつ乳酸自体も痛みの原因に
脳内の血管に三叉神経が絡みついているので、脳の血管拡張が頭痛をもたらします。
眼瞼下垂と頭痛との関連
後頭筋、側頭筋のみならず眼瞼挙筋、皺鼻筋なども横紋筋であり、乳酸を作ります。眼瞼下垂が青斑核を刺激し、セロトニン放出を促します。眼瞼下垂になると目を引っ込めようとし、眼窩の奥の副交感神経節を刺激します(アシュナー反射)。
「眼瞼下垂の手術後から頭痛がないです。まあ、肩こりはまだ少しありますかねえ。もう、頭痛薬使っていません。」という患者さんのご報告(個人的体験です)。「肩こりの変化」よりも「頭痛の変化」の方がインパクトがあるようです。頭痛は生[…]
一言では説明できなそうです。あくまで一介のしがない形成外科医の考察です。ご了承ください。
いずれにせよ、頭痛や疲労感って主観的なものでしたが、「充血」という客観的な目に見えるカタチに現れたのは嬉しい気付きです。
眼瞼下垂が治り、その結果目の充血が改善したということですね。
その因果(まだ可能性ですが)をその患者さんに説明することができなかったことが悔やまれます。