「ふたえの谷間の高さが予定外のところにできてしまう」
まぶたの手術でよく起こる併発症です。
これを予防もしくは修正するときに用いる手技が「眉への吊り上げ(プルアウト法)」。
本記事では具体的な手技とその経過、課題などをまとめました。最後に吊り上げ中の動画もご覧になれます。
ふたえの谷間を狙った位置につくる
「眉毛吊り上げ」
「まゆへの吊り上げ」
などとも呼ばれます。
いったい何を吊り上げるのでしょうか?
それは、二重の谷間を吊り上げる(引き込む)のです。
“suspension”するのです。
その結果、二重の谷間を狙った位置にしっかり作りつつ、予定外の線が現れるのを予防します。
期間はおよそ3日から10日間(ケースによる)。
吊り上げ法の具体的な手技
2023年時点でのわたしの方法です(今後も変わる可能性はあります)。
ナイロン糸を重瞼部分(二重の谷間)の皮膚に通します。
隔膜(ROOF)内をくぐります。そして眉部皮膚を貫通して外に出します(pull out)。
糸を強く締めるほど二重の谷間が深く引きずり込まれる構造です。
眉の中に糸が顔を出しています。吊り上げ期間が終了したら抜糸します。
予定外の線が現れたのを修正したケース(自験例)
予定重瞼線から切開し、癒着を解除します。そして本来の重瞼線に糸をかけ、奥へ引っ張り込むようにまぶたの中を潜って眉から引き出します。切開創はいつも通り縫合して閉じます。
吊り上げ法の問題点
- 一週間目を閉じられない
- 糸を通すタイミングで皮下出血が生じる
- つっぱり感
- 縫合糸がかかっていた部分の食い込み(凹み)が残る可能性
- 眉部にも局所麻酔を注射
「この一週間つらかった…」と訴える方も中にはおられます。
この点からも全例にこの手技を適用するわけにもいかず。
適応をよく考え、メリットとデメリットを秤にかけて判断する必要があります。
吊り上げの期間やつり上げの強さ(引き込みの強さ)、本数などもケースバイケースとなります。つまり、するかしないかに二択ではなく、程度にグラデーションがあります。
吊り上げの一週間
眼瞼下垂の手術をして一週間後です。抜糸の日。
吊り上げも一週間行いました。すべての糸を取れる日です。
目が閉じきらないのがわかりますね。この一週間は目が乾きやすいのでケアが必要。
すべての糸を抜去しました。吊り上げ効果が解除されました。
まぶたが降りてくるようになりました。
今後眼輪筋の力が回復してくると、しっかり目を閉じられるようになってきます(およそ一ヶ月)。
目を閉じたときの二重はほぼフラットになります。
吊り上げ中の動画はこちら。上まぶたが降りてこないですね。
この状態で一週間過ごすわけです。それなりに負担(目の乾き、突っ張り感)があることを予めご理解ください。
あとがき
予定外線予防としての処置として「袋とじ法」もあります。
これはふたえの谷間をとじ込むように縫合するもの。3日間くらい固定します。
予定外線予防効果は吊り上げ法より弱いです。一方違和感は小さいです。吊り上げと併せて行うこともあります。