まぶた治療に特化した形成外科専門医が作った眼瞼下垂情報

ミュラー筋を動かす「交感神経の信号の入力」を妨害するもの:α1 ブロッカー

ミュラー筋の機能をさまたげるもの

ホルネル症候群(Horner syndrome)ではミュラー筋の動きが弱くなります。ミュラー筋を動かす交感神経が断線するからです。

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ミュラー筋の写真

交感神経の連絡先である「ミュラー筋に存在する交感神経の信号を受け取るスイッチ」への刺激がなくなり、筋肉が動かなくなるのです。

その結果、眼瞼下垂(まぶたがさがる)になるのです。さらに「縮瞳」を起こします。同じメカニズムで瞳孔散大筋(瞳孔を開く筋肉)が麻痺するからです。

交感神経が働かなくなるきっかけは、交感神経の切断によるものが多いです。

  • 縦隔(胸の中)の手術
  • 首の手術
  • 脇の下の奥の手術

などです。機械的な要因で神経が分断される訳。道路が寸断されて郵便屋さんが到着できない状態ですね。

関連記事:『ホルネル症候群とは。その治療法』

一方ペインクリニックなどで行われる「頸部神経節ブロック」で一時的に交感神経が麻痺することもあります。

薬剤でミュラー筋が弱ることもある

前立腺肥大につかわれる飲み薬(アドレナリン受容体α1をブロックする)があります。

ミュラー筋の「交感神経スイッチ」をonにする薬剤の逆です。offにするもの。

この薬は交感神経の連絡先のα1受容体(スイッチ)を邪魔します。たとえば前立腺肥大では、そのスイッチが過剰に働きすぎているのでこれをブロックすると治療になるわけです。

自宅の郵便受け取りポストを塞いでしまうわけです。

アルファ-1拮抗薬の副作用として、下まぶたが「逆さまつげ」になったとの報告がありました。

J Med Case Rep. 2010 Mar 2;4:77.
Lower lid entropion secondary to treatment with alpha-1a receptor antagonist: a case report.
Waqar S1, Simcock P.

ミュラー筋の動きを妨げて、下まぶたが緩んでしまい、「内反症」を発症したとのこと。

ということは、上まぶたのミュラー筋も動きが弱くなったら「眼瞼下垂」になりますね(論文では報告は見つかりませんが、学会発表ではありました)。

理論上では前立腺肥大の飲み薬治療をはじめてから「まぶたが下がった」なんてこともありうる話です。

実際にはミュラー筋には交感神経スイッチが他にもα1,α2,β1,β2などなどあり、その割合には個人差があります。薬の副作用の出方も人それぞれでしょう。なお、ヒトでは「α2」が多いようです。

追記1

α1ブロッカーとしては、有名なところで「ハルナール」ですね。

さらにこの薬剤で、虹彩がゆるんでしまうとのことです(以下の文献)。瞳孔散大筋が緩むからです。

Trans Am Ophthalmol Soc. 2009 Dec; 107: 234–239.

Intraoperative Floppy Iris Syndrome: Pathophysiology, Prevention, and Treatment

Allan J. Flach, MD PharmD*

となると、ホルネル症候群も虹彩が緩む可能性があるということになりますね。注意しないと。

追記2

高血圧の治療としてα1遮断薬もあります(メジャーではないですが)。

前述の前立腺肥大の治療や降圧薬でミュラー筋を弱らせることができれば、眼瞼けいれんの治療に応用できるのかなとふと思った次第。。なぜなら眼瞼けいれんはミュラー筋の感度が高まっている状態だからです。

どうかなあ🤔

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