埋没法のいいところ悪いところ

「ふたえにしてもらってきたよ」なんて聞くこともありますね。

二重整形ってそんなに簡単に可能なのでしょうか?

ふたえを埋没法で

埋没ってどういう意味?切らないの?

ざっくり説明すると糸をまぶたにくぐらせて結び、二重の谷間を作る方法です。

ひとえまぶたや奥二重まぶたは、目を開くときにまぶた前葉(皮膚成分)が奥に滑り込みません。つまり後葉だけ奥に引っ込み、前葉は置き去りになっています。

そこで後葉(挙筋、瞼板、結膜など)と連結させることによって、まぶた前葉も奥に滑り込むようにします。

二重まぶた埋没法
糸で前葉と後葉とを連結する。

具体的な方法

切らないと誤解している人もいますが、皮膚を切開します。糸を通す場所です。

局所麻酔も必要です。もちろん注射。

まぶたをひっくり返しながら、縫合糸をまぶた表から裏、裏から表と往復させます。

最後に糸を結び、結び目を中に落とし込みます。ゆるいループができています。

これで終了。

なんかボタン付けみたいですね。

埋没法の手順
一般的なやり方

このイラストは瞼板法の2点法です。オーソドックスな基本形。

実際は世の中、バリエーションに富んでいます。挙筋法、4点法、6点法など多種ありますがこの場では詳細は割愛しますね。

利点

  • 切るのに抵抗がある人にとって、心理的なハードルが低い
  • ダウンタイムが短い
  • 自然な柔らかいふたえ
  • アイテープが不要になり、皮膚のコンディションが改善する

「切る」印象がないのがインパクト大きそうです(実際には切ってます)。

私個人が感じるのは切開法に比べて柔らかいふたえができること。少々大胆な幅広デザインが可能なこと。

憂慮すべき欠点

  • 後戻りする
  • カタチは大雑把な成り行きで決まる
  • 異物がカラダに残るので回数に限界がある

奥目、肥満、眼輪筋の緊張が強い人は後戻りします。二重の谷間を弾き返すチカラが強いんですね。

限られた点で谷間を誘導するので細かいこだわりは無効です。眉位置も変動するので目頭(平行型、末広型)のカタチを約束できません。

埋没法も繰り返すと切開法と同等もしくはソレ以上にまぶたの中が瘢痕化し、異物(糸)でガンジガラメになります。

挙筋法と瞼板法

「まぶた後葉のどこに糸を通すか」の違い。

「瞼板」か、「それより中枢側(奥、上)の挙筋・ミュラー筋・結膜」かです。

私個人は挙筋法をしません。

しない理由、それはミュラー筋に糸をからめるから。(あと手術自体も見たことがない)

ミュラー筋はセンサー。目(網膜)や鼓膜(中耳)とおなじ感覚受容器をもつ組織だから傷つけたくないのです。

「じゃあ瞼板法は安全なのか?」というとそうとも言い切れないのです。瞼板は分泌腺の発達した組織。

そこに糸を通すのも実は心苦しいものがあるのです…

難しいですね。

向いている人、向いていない人

まぶたの皮膚が薄い人は向いています。

逆に言えば厚ぼったい人は後戻りしやすいです。

眼瞼下垂のひとは眼瞼下垂が悪化します。

感覚が敏感な人もおすすめできません。

実は埋没法は難しい

「埋没法に始まり、埋没法に終わる」という外科医向けの格言があります。

新米美容外科医は埋没法からトレーニングを積みます。一方ベテラン外科医は埋没法の難しさを知るとともに、切開法で再現できないカタチを求めてのめりこむのです。

深遠なる世界です。

ちなみにわたしは得意ではありません💦手術のときは切開法とおなじかソレ以上に緊張しています。

実際のモデル患者さん

瞼板法4点です。3ヶ月後の写真。

厚い布団を折り曲げているようにも見えます。

もっとスリムなふたえにするなら、より幅の狭いふたえにすべきです。

埋没法術後
若い患者さん

目を閉じたときはこんなふう。

一ヶ月程度は糸を通した部位がエクボのようにくぼみます。

埋没法目を閉じたとき
左に内出血

手術のときに針先が血管にあたりました。結果左まぶたの内出血です。

ごめんなさい。

盲目的に針を通すので一定割合で引き起こします。

一週間後はまだ青あざ(紫斑)が残っているのがわかりますね。

横アングルはインスタグラムを参照してください。

二重術の歴史

白壁征夫先生がまとめた「二重手術の歴史」によると、埋没法のルーツは明治時代にさかのぼります。

まぶたをひっくり返して3本の糸を貫通させ、皮膚上で縫合、後日抜糸します。これを報告したのが眼科医美甘光太郎。「ひとえまぶたは組織欠損」と表現し、挙筋の腱の皮膚までの連結が「ない」ことを見出していました。文章から類推するに「挙筋法」のようです。

これが別の医師によって改良され、抜糸しない術式に変わりました。

参考:『日本における美容外科のパイオニア(1)眼科医 美甘光太郎』日本美容外科学会会報 2019 vol.41(1)  白壁征夫ら

関連記事:『重瞼術(ふたえ手術)のルーツは19世紀に遡る』

参考:

埋没法のリスク、併発症(合併症)

短期的なもの腫れ、出血、感染、エクボ、糸の露出、眼瞼下垂
長期的なもの糸の露出、目の違和感・ツッパリ感、瘢痕化、後戻り、霰粒腫(いわゆるものもらい)、眼瞼下垂
仕上がりに関するもの左右差、眉毛下垂・顔貌の変化、まぶたの見かけに対する不満、後戻り

手術の費用

自費診療なので医療機関によって異なります。

私の出向先を例に挙げると、

千春皮フ科、おおたけ眼科11万円
ヴェリテクリニック銀座院13.2万円
酒井形成外科16〜17万円

(2021年現在)

 

「安易に受けてほしくない」というのが本音です。

上に挙げたリスクだけではありません。

過去に埋没法を受けている人の眼瞼下垂手術は苦労します。眼瞼下垂手術の結果にも影響します。

ようく考えましょうね。

追伸

あ、「腫れない」なんてのはウソですよ。

相応に覚悟してください。

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