首下がり症候群と眼瞼下垂 日本形成外科学会レポート

「首下がり症候群」と「眼瞼下垂」

まぶたの一般演題セッション。演者、栗山元根先生(千葉大学形成外科)。

首下がり症候群
W. Deeb, I. Malaty. Diplopia: An Interesting Complication of Dropped Head Syndrome [abstract]. Mov Disord. 2017; 32 (suppl 2).

ある種の疾患で首が前に垂れ下がってしまう病態。「失意のあまり、がっくり首を垂れた」姿勢です。自力で首を持ち上げることができず、食事や飲水にも支障があります。床か自分の膝しか見えないですから、「視野」の観点でも不便で仕方ありません。ネックカラーで首を支えている人もいます。

合併疾患は様々。パーキンソン病などの神経の病気など。要因も多種の仮説があります。

ざっくりいうと首の周りの筋肉の緊張バランスが引き起こしているであろうとされています。

眼瞼下垂の手術をすると首の筋肉の緊張バランスが変化し、自力で首を持ち上げられるようになるという症例報告

いままでに3人の患者さんに手術を行い、2例で経過が良いようです。(一例は元に戻った?)

手術適応として、「眼瞼下垂」があること。「テープ吊り上げテスト」で首の動きの改善が見られることです。

テープ吊り上げテスト:上まぶたを絆創膏テープで眉上に吊り上げるように引っ張り持ち上げて固定し、視野を広くします。視野が広くなった状態を簡易的にシミュレーションする方法。その瞬間に「頭がスッキリする」「肩が軽くなる」といったおまけの変化を感じ取る人もいます。

動画でテープテスト前後を記録。劇的に、瞬時に変化(首を自力で起こせるようになる)が見られます。これは患者さんも驚くでしょう。そして、眼瞼下垂手術をすると、その通りに首が持ち上がるようになったのです。

神経内科でフォローされている「首下がり症候群」の患者さんに神経内科の医師が「テープテスト」を行い、変化が見られたヒトを形成外科に紹介しているようです。

※円背の強い(背中が丸く曲がった)高齢者が眼瞼下垂手術直後から背筋が真っ直ぐに伸びるというのも多くの形成外科医師が経験しています。

キーポイントは「首下がり症候群が眼瞼下垂手術で治る」ということではなく、何かしらの神経生理学的メカニズムがそこにあるということです。まぶたの神経性理学の解明に期待が持てますね。

日本形成外科学会総会

いつもは4月の学会ですが、今年は5月に催されました。札幌は気候も暖かくなってちょうど良い。

今回はわたしは発表なしです。とても気分が楽でした。

形成外科学会の様子
日本形成外科学会の様子

公式LINE版はこちら!(無料)

なぜ眼瞼下垂治療で失敗してしまうのか?20年以上の経験から紡ぎ出された対策です。

そして情報収集の旅もここで完結です。

特典:筆者の手術体験記、本ウェブサイトの鍵🗝付きページへのパスワード、手術併発症リスト(PDF)