まぶた治療に特化した形成外科専門医が作った眼瞼下垂情報

眼瞼下垂手術後の「青あざ」は何日続く?抗血小板薬は休薬すべき?

こんにちは、形成外科専門医の金沢です。
「誰かと喧嘩した?」「転んで顔を打った?」
目に青あざがあると周りの人が心配します。<ruby>眼瞼下垂<rt>がんけんかすい</rt></ruby>手術後の出血の影響で出血斑(青あざ)ができることがあります。青あざもまぶたの手術を躊躇させる要因ですよね。
青あざが出来る要因。対処法。そして、あらかじめ<ruby>抗血小板薬<rt>こうけっしょうばんやく</rt></ruby>(血液をサラサラにする薬)を中断すべきなのか?
解説します。

まぶたの術後出血斑(ecchymosis)

青あざ(<ruby>紫斑<rt>しはん</rt></ruby>)です。内出血のあとが皮膚を通して青く見えます。ひどいとパンダの目に。青タンともいいます。

血液は赤いですよね。出血した血液は黒くなります。皮膚を通してみると青く見えるのです。正確には、黒に近い紫色だったり、もっと明るい赤が点々とついていたり、周辺は黄色っぽくなったりします。

いずれにせよ血液の色を見ています。

なぜ手術で青あざができるのか?

紫色の出血斑を作るきっかけは

  • 麻酔注射時に皮下の血管に針先があたって出血する
  • 術中に出血した血液が皮下組織に残る
  • 皮膚を閉じる縫合で皮膚に針を通すときに皮下の血管に針が当たって出血
  • 切開した眼輪筋などの組織、縫合した皮膚真皮直下からの、術後のじわじわ出血がしばらく続く

などです。

術者も細心の注意を払いますが完全には防げません。血管外に出た血液は、組織内に染み渡ります。タオルなどに生地に色素が染み込むようなもの。目の前で血腫ができても、取り除く事ができません。残念ながら一定割合で生じます。程度も様々です。

これに加え、患者さんの体質(出血傾向)が影響し、その程度が増強します。

本人は痛みはないのですが、見た目が痛々しいです。😭

青あざの経過は?

術後1週間は紫色に(下まぶたも)目立ちます。太めのフレームのめがねでカモフラージュしましょう。

2週間程度で血液が分解されておおむね黄色に(ヘモグロビンがヘモジデリンになる)なっていきます。この辺りからメークで隠せるようになるでしょう。黄色が吸収されるのにさらにもう2週間かかります。つまり都合1ヶ月かかると見込んでください。

術後出血斑が目立った患者さん(左目)

眼瞼下垂術後の紫斑
眼瞼下垂術後の紫斑。下まぶたまで青くなった。徐々に黄色に変化

少なくともこのような経過を知っておくことは、気持ちの面でも有利なはず。時間が過ぎるのをひたすら待つのです。

出血斑を生じさせないために出来ることはないのか?

上に記した要因を作らないように、術者が努力することである程度抑えることはできます。

患者さんサイドができることとしては

  • 抗凝固療法、抗血小板療法の中断(出血傾向があるため)
  • 術後に頭に血が昇る行為、血の巡りが良くなる行為(飲酒、運動、暑い湯船に浸かるなど)を控えること。
  • 患部を物理的にに刺激しないこと(こすったりしない)
  • 血圧をコントロールすること

抗血小板薬などは休薬すべきか?

金沢のイラスト
かなざわ
私がまぶた治療を行う際には、血栓予防の抗凝固療法や抗血小板療法は無理に中断(休薬すること)しません。理由は、万が一休薬中に<ruby>塞栓症<rt>そくせんしょう</rt></ruby>(脳梗塞など)を発症した場合、後遺症を残す可能性が高いからです。そのためには紫斑(青あざ)はやむを得ないと考えています。
近年は、歯科治療でも抗血小板薬の中断をしないことが多いようです。

抗凝固療法中の場合は、ワーファリン内服中断中に「低容量ヘパリン化」を行う事もできます。血栓傾向を持つ時間を最小限に出来ます。ところが、ヘパリン化は不要かもしれないとの報告もでました。(The New England Journal of Medicineより。2015年8月。)

ヘパリン化は不要かもしれない
心房細動を持つ患者さん1884人を対象に検証。ワーファリン内服を中断して、

  • ヘパリン化する
  • ヘパリン化しない

のグループ分け。結果は、どちらも血栓塞栓症を生じる頻度は変わらず。むしろヘパリン化したグループは術後出血が増えた。

Douketis, J. D., Spyropoulos, A. C., Kaatz, S., Becker, R. C., Caprini, J. A., Dunn, A. S., … & Schulman, S. (2015). Perioperative bridging anticoagulation in patients with atrial fibrillation. New England Journal of Medicine373(9), 823-833.

今回のレポートは心房細動の患者さんだけがターゲットでしたが、「入院してヘパリン化を行う」という煩わしさがハードルになっていた患者さんや医療機関にとっては心強いものとなりそうです。

まとめ

以上、

  • 眼瞼下垂手術と内出血
  • 青あざの経過
  • 抗血小板薬の中断の是非
  • 実際のモデル症例

を提示しました。

  • あなたはアザ(内出血の痕)を作りやすい体質ですか?
  • 青あざを化粧やメガネでカモフラージュできそうですか?
  • 血液をサラサラにする薬を飲んでいませんか?

いずれにせよ100%予防はできません。ある程度覚悟はした方が良さそうです。

あとがき

私は、上に述べたように抗血小板薬や抗凝固薬を中断せずに手術を行なっています。それでも、その患者さんのひどい血腫の経験がありません(たしかに手術中の出血はサラサラした感じはあるかも?)。

皮肉にも、今まで経験した眼瞼下垂手術の後の血腫を生じた3人の患者さんは、すべてそのような治療(抗血小板薬や抗凝固治療)をしていないヒトでした。わたしの油断があったのでしょうか?反省し、よりリスクを減らす努力をしなければならないと感じています。

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