まぶた手術後の腫れの期間を短縮する「シンエック」って?

顔の手術の後のダウンタイムを最小限にしたい!

顔の手術を受けた患者さん誰もが悩み、望むことです。1日でも早く社会復帰したいですものね。飲み薬として、傷の回復を早くすると言う「薬剤」に出会ったのです。神の薬??眼瞼下垂手術を日々している私は興味を持たないわけはありません。

シンエックアイキャッチ

アルニカ・モンタナ(Arnica montana)

wikipedia

薬用ハーブです。ヨーロッパでは民間療法(代替療法)としての歴史があるようです。かすり傷や打撲などに用いられてきたとか。これがシンエック(Sinecch)の材料です。

学術報告もあります

アルニカ・モンタナの周術期投与(内服)は鼻の形成手術後の紫斑を減らした。22人の調査です。紫斑の範囲と消退がプラセボに比較して有意に(P<0.1)小さく、早かった。

Chaiet, S. R., & Marcus, B. C. (2016). Perioperative Arnica montana for reduction of ecchymosis in rhinoplasty surgery. Annals of plastic surgery76(5), 477-482.

鼻の手術も顔が腫れますからね。やはりなんとかしたいと言う気持ちがあります。

目周りの手術も同じです。

目周りの手術後に肌へ塗ったら腫れと紫斑がはやく退いた。27人の調査。

Kang, J. Y., Tran, K. D., Seiff, S. R., Mack, W. P., & Lee, W. W. (2017). Assessing the effectiveness of arnica montana and rhododendron tomentosum (Ledum palustre) in the reduction of ecchymosis and edema after oculofacial surgery: preliminary results. Ophthalmic Plastic & Reconstructive Surgery33(1), 47-52.

おお?なんだか頼もしいですね。ちなみにこの調査はアルニカモンタナだけでなく、rhododendron tomentosumというハーブも使われています。

シンエックはホメオパシーだった

同時に反論もありました。「科学的でない」と。「疑似科学である」と。そう、ホメオパシーは多くの科学者が否定しています。

「Arnica 50 M (10のマイナス100,000乗) 50% and Ledum 50 M (10のマイナス100,000乗)」という希釈。。。。

a dilution of 1 particle in the known universe is only 40 C

観測可能な全宇宙の分子で1分子を割っても「40C 」である。

Re: “Assessing the Effectiveness of Arnica montana and Rhododendron tomentosum (Ledum palustre) in the Reduction of Ecchymosis and Edema After Oculofacial Surgery: Preliminary Results”

すぐ上に紹介した、「目周りの手術の後に塗ったという研究」に対する意見です。

つまり、その濃度よりも希釈された濃度ってこと。「無」に等しい。上の目周りの手術の後に塗ったという研究に対する意見です。

(10のマイナス100,000乗)は10倍希釈を10万回繰り返すと言う意味(100倍希釈なら5万回)。Mは100倍希釈を1000回することを意味します。「50 M」は10万倍希釈を50回繰り返すと言う意味だそうです。そして「C」は百倍希釈の意味。「40C」は100倍希釈を40回繰り返すと言う意味。「M]というのは途轍もないスケールの希釈ということです。

Homeopathic Healing

Understanding the Paradox of "Less is More" By Douglas Brown…

やってみましょう。ええっと、現実には10万回繰り返すのはいやので、1リットル(1kg)の水に1μgの原液をポタリと入れて希釈(これで1000000000倍=10の9乗)します。(1L=1kg=1000g=1000000mg=1000000000μg)

この希釈液1リットルの中から1μgだけ吸い取ります。そしてあたらしい純粋な水1リットルに垂らします。このプロセスを11111回繰り返します。

結果的には1分子も存在しない液体になっています。

しかし、ホメオパシーの考え方は「濃度」ではなく、「水の記憶」との考えであり、「希釈回数」が重要なのだとか。だから私のやり方は「ズル」だから効き目が出ません。なんだったらプールの水、いや琵琶湖を使えば希釈回数減らせるかなあと思ったけどダメです。

軟膏は効き目なかったとの報告

アルニカ軟膏は上眼瞼手術後の腫れ、赤み、痛み、内出血を改善しなかった

van Exsel, D. C., Pool, S. M., van Uchelen, J. H., Edens, M. A., van der Lei, B., & Melenhorst, W. B. (2016). Arnica ointment 10% does not improve upper blepharoplasty outcome: a randomized, placebo-controlled trial. Plastic and reconstructive surgery138(1), 66-73.

アルニカ軟膏とプラセボ軟膏そして反対側はケアなし。136人の調査です。結果はプラセボ軟膏との差は認めず。というかプラセボ効果すらありませんでした。このアルニカ軟膏もホメオパシーでした。

※「腫れの程度に差がなかった」というのは「効果がないこと」の証明ではありません。「無いことの証明」は「悪魔の証明」と言われ、難しいのです。

※毒にも薬にもならないと言いたいのですが、外用にせよ内服にせよ添加物もあるので副作用には注意です。

しかし、上に紹介したジャーナルは形成外科領域ではそこそこに知られたジャーナルなんです。複雑な気分。

参考:日本医学会の声明 リンク

その理由は「科学の無視」です。レメディーとは、植物、動物組織、鉱物などを水で100倍希釈して振盪(しんとう)する作業を10数回から30回程度繰り返して作った水を、砂糖玉に浸み込ませたものです。希釈操作を30回繰り返した場合、もともと存在した物質の濃度は10の60乗倍希釈されることになります。こんな極端な希釈を行えば、水の中に元の物質が含まれないことは誰もが理解できることです。「ただの水」ですから「副作用がない」ことはもちろんですが、治療効果もあるはずがありません。物質が存在しないのに治療効果があると称することの矛盾に対しては、「水が、かつて物質が存在したという記憶を持っているため」と説明しています。当然ながらこの主張には科学的な根拠がなく、荒唐無稽としか言いようがありません。

シンエックはFDAで承認されてるのか問題

ネットでは各美容外科クリニックが「FDAお墨付き!」みたいに宣伝しています。「シンエック FDA」でググってみてください。

「シンエックは、FDA認可のAlpine Phamacuticals 社(米国)の商品です。」

「FDAの認可もあり安全性の高い商品です好

「手術の腫れや内出血を軽減させることができる、FDA認可の天然成分の医薬品です。」

おお?頼もしいですね!

FDA: Food and Drug Administration(食品医薬品局)

まずはFDA本家のウェブサイトで承認されているのか調べてみます。しかし、残念ながらその情報には行き着くことはできませんでした。

「arnica montana」「sinecch」「arnica」「montana」で検索するもヒットせず。”Your search did not return any results.”  

つまり「そのようなものは扱っていない」とのことです。

だれか、わかる人いたら教えてくださいませm(_ _)m

一方、FDAが「毒性をもつ植物」としてデータベースを公開しています。そこでは、“arnica montana”がありました。おもなる報告はアレルギー反応のようです。ただし、心配しないでください。報告はホメオパシーとしてのアルニカモンタナではないです。あくまでその薬草に対してのアレルギーです。シンエックにはアルニカモンタナの成分が一分子も含まれていませんから。

アメリカ国立医学図書館のウェブサイト

FDAのサイトに掲載されていない問題について、こちらに解答がありました。

DISCLAIMER: This homeopathic product has not been evaluated by the Food and Drug Administration for safety or efficacy. FDA is not aware of scientific evidence to support homeopathy as effective.

このウェブサイトによると、”Sinecch(シンエック)”はFDAでは安全性や効果について、評価の対象になっていないとのこと。そもそもFDAはホメオパシーを認めていないようです。

調査終了

私の検索能力の限界です。「FDAに確かに承認されている」との情報がありましたら教えていただけると幸いですm(_ _)m

尚、本記事はホメオパシーを否定するものではありません。信仰は自由です。自身のために導入することは個人の自由です。

そもそもホメオパシーであることが科学的評価の限界

アルニカモンタナの成分が含まれていれば、薬効を評価することができます。しかし、その成分自体が含まれていないホメオパシーですから、そもそも評価の対象にならないのですね。

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