まつ毛を伸ばす塗り薬。
コレが原因で、シミだらけの眼瞼下垂になるといわれたら信じられますか？
まつげ育毛でプロスタグランジン関連眼窩周囲炎による眼瞼下垂に
グラッシュビスタ、ルミガンなどのまつ毛を伸ばす外用液。
元々緑内障の治療薬として使われた成分。緑内障の治療の副作用としてまつ毛がふさふさになることがよく知られています。
その副作用をまつげ美容液に応用。それゆえ、まつ毛が太く伸びるのです。
「睫毛（しょうもう）貧毛症」に対する治療薬として、日本でグラッシュビスタ（一般名ビマトプロスト）が承認されました。
その半面、緑内障点眼には目周りに炎症をおこすという副作用があります。「プロスタグランジン関連眼窩周囲炎」です。
「まぶたの皮膚がシミっぽくなってきた」というのが初めて自覚する症状。…色素沈着です。
※「まつ毛美容液」は正式には化粧品に分類されます。一方医薬品としての「まつ毛育毛剤」も「まつ毛美容液」として社会で認知されているので、この場では化粧品とまつ毛育毛剤両者とも「まつ毛美容液」としています。
PAP：Prostaglandin Associated Periorbitopathy：ピーエーピー
- 眼瞼下垂
- 上眼瞼の落ち窪み
- 皮膚の色素沈着
- まぶたの皮膚弛緩
- 眼窩の脂肪の萎縮
- 眼球陥凹
- 下三白眼
- まぶたの血管が目立つ
- まつ毛の伸び
関連記事：『プロスタグランジン関連眼窩周囲炎とは？』(リンク記事下部)
まつげ育毛剤の不適切な使用は、これらの副作用を惹起する可能性があります。
色素沈着の正体は、プロスタグランジン系の成分
プロスタノイド受容体（FP）受容体を介してメラノサイトが刺激され、メラニン合成を促します。長期間の使用で下瞼の皮膚も黒ずんでいきます。（炎症に伴う色素沈着とは異なる機序のようです。）
一般化粧品のまつ毛美容液にも、類似成分が含まれる場合がある！
おそろしいことに、グラッシュビスタなどの医療用まつ毛育毛剤だけでなく、一般化粧品のまつげ美容液にも類似成分が含まれていることがあります。その結果として、PAPをおこすことがわかっています。
ええ？まつ毛美容液で目が落ち窪んじゃう？ゾンビみたいな目になるの？という阿鼻叫喚が聞こえます😰
落ち着いてください。まつげ美容液にこれらの成分が含まれていないかどうか、成分表を確認してください。
プロスタンジン系製剤、PG関連薬、プロスタグランジン誘導体（プロスタグランジン類似物質）をチェック。
具体的な商品名からアプローチするためには、ここの記事は参考になるでしょう。↓ 「プロスト」「プロスタ」「プロステ」みたいなワードをチェック。
まつ毛美容液「エマーキット」の謎。「ビューティラッシュ」との不自然過ぎる共通点…｜かずのすけの化粧品評論と美容化学についてのぼやき（リンクは記事下部）
力試しテスト
評判のまつ毛美容液Aとまつ毛美容液Bの成分表です。ここに含まれるプロスタグランジン類似物質わかりますか？ここから見つけ出すことができれば、あなたは美容上級者です。
答えは↓
・
・
「イソプロピルクロプロステネート」「エチルタフルプロスタミド」
※成分表に記載された内容が正しいか（虚偽や誤りがないか）どうか。この点も注意が必要です。
PMDA（医薬品医療機器総合機構）のサイトで回収情報が出ています。この例のように、成分表にプロスタグランジン類似物質の名前が記載されていなくても、実際には含まれていたケースがあります。こうなると消費者としてはお手上げですね。
https://www.info.pmda.go.jp/kaisyuu/rcidx23-2m.html
モデルケース
本モデルケースも、この成分が含まれるまつげ美容液を使用していて眼瞼下垂になりました。偶然にも2年前に写真を記録していたこともあり、眼瞼下垂を生じたことが前後関係ではっきり確認できます。
使用を中止しても回復の兆候が見られなかったため、眼瞼下垂手術（挙筋前転法）を行いました。左のみです。
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これは、適切なケアができていれば、予防できた眼瞼下垂である確率が高いです。
用法用量を守ることは当然。一方、感受性は個人差があります。人並みの分量や頻度で副作用を引き起こす人もいます。無理に使用を継続しないように。
「ひょっとして、伸びるまつ毛美容液使ってませんか？」女性はハッと…（続きは登録後）
PAPの眼瞼下垂と加齢性眼瞼下垂の違い
筆者金沢はこの点に注目しています。現時点で術中所見に違いを確認できていません。通常の眼瞼下垂手術で治療が可能です。自分の瞼の中がどうなっているのか見てほしいという人はご相談ください。
まつ毛美容液で眼瞼下垂になるのは、まぶたがスリムな人に多いです。やはり本人のポテンシャルの影響が大きいです。
もし眼瞼下垂になってしまったと感じたら
まずはその美容液を中止すること。そして2〜3ヶ月程度経過を見てください。改善が見られないようなら形成外科もしくは眼科を受診してください。
眼瞼下垂になる前に、多くの人は色素沈着に気づくはず
PAPの徴候である色素沈着。まぶたの縁が「黒ずんでくる」現象。そもそもこちらのほうが先に気づくはず。眼瞼下垂は重度なPAPです。その手前の色素沈着で気づいてください。
下のモデルさんは緑内障ではなく、緑内障点眼をしていません。まつげが伸びるという口コミのまつ毛美容液を使用しています。
追記
「逆さまつげが目に刺さる」という情報が複数筋からあります。当然起こりえますね。
定点観測（私が知り得た範囲）では、「ラッシュア◯ィクト」もまつ毛を伸ばす成分が含まれていることが疑われています。使用者の間では「色素沈着があり、かつまつげが伸びること」が周知の事実となっている様子。しかしながら当該商品の成分表にはそれらしき記載はありません。その成分が入ってる可能性があるという認識で使われている印象。
なお購入を検討しているまつ毛美容液があったら、「（商品名） 色素沈着」で検索してみるとリアルな口コミが得られるかもしれません。
追記２
「ラッシュア◯ィクト」の新商品の成分表に「イソプロピルクロプロステネート」の表示が新しく追加されたようです。
追記3
まぶたの皮膚は薬剤を効率よく吸収します。まぶたを貫通して眼球の結膜まで届きます。
参考
◎『緑内障治療薬としてのプロスタグランジン F2α 誘導体製剤 （プロストン系およびプロスト系）の特性について』 小林茂樹
https://www.jstage.jst.go.jp/article/manms/8/2/8_134/_pdf
まとめ
以上、
- まつ毛美容液には育毛作用を持つものがある（緑内障の治療薬）
- 副作用に、色素沈着、目の落ち窪みと眼瞼下垂がある
- ほんの微量の薬もまぶた内部に影響を及ぼす
- 実際のモデル症例
を提示しました。
さて、あなたは、
- まつ毛美容液の中に炎症（PAP)を起こすものがあることがわかりましたか？
- 使用を中止しても治らないケースがあることご存知でしたか？
- 成分表を見て解釈することの難しさが理解できましたか？
ぜひ、自分の目元をよくよく観察してみてくださいね。
以上が『まつ毛美容液で眼瞼下垂』の記事でした。
関連記事
あとがき
近年はオンライン診療の一環でプロスタ系のまつ毛美容液（育毛剤）が販売されています。オンラインで医師の診察をうけた上で、薬剤が処方され配達されるというシステム。
オンライン処方薬によるトラブルを懸念する声も聞こえますが、大まかな流れとしてはオンライン診療の幅はどんどん広がっていくと想像します。便利ですからね。
個人が自己診断して服薬することのリスクを感じることはあります。例えばランナー界隈だと体調の悪さを「貧血」と自己診断して鉄サプリをせっせと取る人々。本当に鉄欠乏性貧血なのか？まずは医療機関で検査診断しないといけません。さもないと、鉄欠乏でないのに鉄を過剰摂取するリスクがあるから。
今後はより一層個人の自己責任が問われる時代になりそうです。自分で自分の身を守るスキルを身に着けましょう。
コメント
コメント一覧 （2件）
はじめまして、66才女性です。
私は昨年8/15に右胸癌の切除手術をした頃から
急に右目が酷く窪んでしまいました。
左目も右目ほどではありませんが
前より窪んいます。同時期に右大腿骨を
骨折し、4か月入院しました。
まつ毛美容液は多分ご指摘の成分が入ったものを
数年使っております。何が原因かわからず
窪みに悩んでいます。まつ毛美容液はただちに
やめようと思っておりますが、一度先生の
診察を受けたいと思います。銀座のクリニックに
火曜日予約すれば診察して頂けますか？
とても悩んでおります。よろしくお願い致します。
佐藤様。まずは予約を取得して受診してください。眼瞼下垂の診察をいたします。肺の手術後でしょうか？ホルネル症候群も視野に入れるべきかもしれません。まつげ美容液の影響も考えます。