まぶたの開き具合を測定する。MRD(エムアールディ)

「眼瞼下垂」を診断するための「物差し」ってあるのでしょうか?

医学界で議論するときに「目が小さい」「パッチリ目」という表現では客観性が担保されませんね。

だからまぶたの開き具合を数値化して眼瞼下垂の程度を表すことになっています。

MRD(エムアールディ)って何?

「まぶたの開き具合」を数値化するための規格(ルール)です。

単位はミリメートル。

Margin Reflex Distance:MRD(エムアールディ)

  • Margin=Eyelid Margin:まぶたのふち
  • Reflex=Corneal Light Reflex:観察者がてらした光が反射するところ。眼球の表面の頂点(正対している観察者にとって)。
  • Distance:距離

中心からまぶたのふちまでの距離ですから、上まぶたと下まぶたがあります。

  • MRD1:上まぶたのふちまで
  • MRD2:下まぶたのふちまで

数値が大きいほど目が大きく見開いているということです。

ゼロだと視野が相当欠けている状態。

MRD
このイラストのMRDがMRD1を示す

眼瞼下垂の診断

例えば、「あなたはMRDが2mmだから眼瞼下垂症と診断されます」と使われます。

眼瞼下垂診断の基準値については諸説あります。

「2mm」と言う先生もいるし、

「3.5mm以下」(「眼形成外科」ー虎の巻ー柿﨑裕彦著)

と表現する先生もいます。

随分幅がありますね。

手術の根拠とするにはいささか心もとない(というかまったく当てにならない)ですね。

さらに「手術を適用するための根拠として不確実である」理由があります。

MRDを眼瞼下垂の診断に使用することの問題点

人のスケールに幅がありすぎる

「2mm」というスケールを画一的に当てはめるのも無理があります。そもそもの顔のサイズ、目の横幅によってもその影響が全然違うからです。

例えばさかなクンのようにギョギョッとした目の人のMRDが2mmになったら「眼瞼下垂」と診断します。

一方、つぶらな瞳のご老人は2mmあれば十分なんです。眼瞼下垂ではありません。

例えばもともと握力が40キログラムある若者が握力20キログラムになったら「筋力低下」と判断します。一方、握力がもともと20キロの80代の男性が「握力20キログラムである」と評価されたら「異常なし」ですよね。

左右差がある場合も

MRDが2mm以上あっても、右は4mm,左は2.5mmだったら「左が眼瞼下垂」ですよね。

マイナスは測れない

まぶたが下がりすぎて眼球の中心を覆っていたら測定不能です。測定可能なのは「正の値」。(上手な臨床家はまぶたをさっと持ち上げるなどして「負の値」を記録します。)

皮膚のたるみが邪魔することも

まぶたのふちに覆いかぶさるように皮膚が垂れてくると測定は困難です。(上手な臨床家は眉を持ち上げてさっと測定します)

顔の表情筋の緊張が変化

  • 患者さんの顔に少しでもタッチする
  • 目に光を当てる
  • 凝視してもらう対象までの距離(例えば強度近視の人が鏡で自分を見るとぐっと鏡を近づけて目がおおきく開きます。)

などによっても顔の筋肉の緊張度合いが変わり、MRDは変化します。

担当医の技量やくせ、環境によるバラツキ

医師の習慣や利き腕によっても数値が変わります。私は右利きなので患者さんの左目を測定するのが苦手です😅

患者さんが座る椅子の高さ、部屋の明るさによっても変化します。

かなざわ
細隙灯検査台を用いればはこれらのバラツキを抑えられますかね?

以上のような問題点を踏まえ

形成外科医や眼科医は「総合的に」眼瞼下垂を診断しています。数値だけにとらわれないようにする必要があります。

MRDは別べつの個人を比較するにはやや頼りないですが、同じ人の継時的な変化や左右の比較には分かりやすく有効であることを付け加えておきます。

総合的に診断って?

  • 視野障害がありそう
  • 代償機構(おでこのチカラなど)が動員されている
  • 随伴症状(肩こり頭痛など)がある
  • 原因(年齢、コンタクトレンズ使用歴、目をこする習慣など)が明確
  • 左右差がある
  • 皮膚の炎症や劣化

などです。

あとがき

今年の冬は寒いですね。熱気ムンムンの夏が苦手な私でも夏が恋しく感じる今日この頃です。

でももう三月。春です。花粉です。

糖質を制限しはじめてから花粉症の症状が弱まった私。週末にパン、ピザなど糖質を摂取したら途端に鼻がむず痒くなってきました。こんなにシャープに変化するものなのでしょうか?

そんなわけで月曜日から「デ糖クス」です。

公式LINE版はこちら!(無料)

なぜ眼瞼下垂治療で失敗してしまうのか?20年以上の経験から紡ぎ出された対策です。

そして情報収集の旅もここで完結です。

特典:筆者の手術体験記、本ウェブサイトの鍵🗝付きページへのパスワード、手術併発症リスト(PDF)