加齢性の「眼瞼下垂症(まぶたのたるみ)」は2種類ある
表(オモテ)がたるんでかぶさってくるたるみ。そしてまぶたの中身のスジが緩んでまぶたが下がってくるたるみ。
まぶたのオモテ(皮膚と眼輪筋)がたるんでかぶさってくることを
- 偽性眼瞼下垂症
- まぶた皮膚弛緩症
- Dermatochalasis
などと呼びます。
もう一つの、まぶたの中身のスジが緩み、機能不全になることを
- 腱膜性眼瞼下垂症
と言います。
病的なまぶたのたるみを示すのは、この目に見えない、まぶたの中身のたるみです。
なぜ、オモテのたるみか?中身のたるみか?をジャッジする必要があるのか?
中身のたるみを見落として皮膚のたるみだけ切り取って持ち上げても視野は広くなりません。逆も然り。
オモテのたるみの治療は、
上眼瞼リフト(眉毛下(上)皮膚切除)や重瞼部分からの皮膚切除で対処します。
一方、まぶたの中身のたるみには
挙筋腱膜の修復が必要です。
もちろん、オモテのたるみと中身のたるみが合併することもあります。その場合は両方の治療を別々にもしくは同時に行います。
しかし、両者が合併する場合は優先的に治療されるのは中身の修復(眼瞼下垂症手術)です。
実際のモニター患者さんを見てみましょう
中身のたるみの治療のみ行った
ジャッジは、「まぶたの中身のたるみ」。オモテの皮膚が覆いかぶさって視野を妨げているわけではありませんね。まつげの生え際がしっかり見えています。
眼瞼挙筋の力が伝わらずにまぶたが下がっている状態・・・・
腱膜性の眼瞼下垂症です。
したがって、中身のたるみの治療(挙筋腱膜の修復)が必要。
一方、オモテのたるみ(皮膚と眼輪筋の余剰)もあります。
「顔の印象を変えたくない」とのことから皮膚のたるみは取りませんでした。皮膚のたるみをとると見た目が若返ってしまい、印象の変化が強くなるためです。
皮膚切除を行わずに中身のたるみの治療を行いました。
結果、視野が改善
オモテのたるみは残っています。しかし、当初の目的は十分に達せられたことが分かります。
もし皮膚のたるみを除きたければ、改めて治療を行えばよいでしょう。でも必須ではありません。
- 年齢:70代
- 性:男性
- 手術:挙筋腱膜修復術
- 皮膚切除:なし
- 脂肪切除:隔膜とPSFは発達弱い
- lateral horn リリース:左右とも無し
- 下位横走靭帯:なし
- 挙筋腱膜の滑り:右:0 1 2(3) 4 左:0 1 2(3)4
- 挙筋前転:右:微量 左:微量
- ミュラー筋処理:左右ともなし
- 手術時間:30分
- バイアスピリン内服継続
眼瞼下垂でお悩みのかたのために、写真を使用することを承諾いただけました。心より感謝申し上げます。