加齢性の下まぶた内反症。下まぶたが皮膚(と瞼板)ごと目の中のほうにくるりとめくれ込んでしまう病態です。どのような治療法があるでしょうか?
今回は加齢性の眼瞼内反症を取り上げます
右左どちらか、もしくは両方のしたまぶたがクルンと内反(内向きに回転)して下まぶた自体が目の中に入り込みます。「逆さまつげ」の一種です。
加齢性の眼瞼内反症の原因は?
- 眼球が後退し、下まぶたの横方向のテンションが弱まる。横方向の長さが余る。
- 下まぶたを下に引っ張る下眼瞼牽引靭帯(LLR)がまぶたの皮膚を引っ張る力が眼瞼後葉に比べて相対的に弱くなる。
- 下まぶたの皮膚が余る。
- 下まぶたの縁の眼輪筋の緊張が強くなる。
- したまぶたミュラー筋の緊張が強くなり、眼瞼前葉にくらべて後葉を引っ張る力が強くなる。
これらの要因が複合的に作用します。
眼瞼内反症の問題点は?
- 目の表面を刺激することによる違和感、いたみ・かゆみの症状
- 涙が多く出る
- 目やにが多い
- 目の表面が傷つく:視力への影響
- 眼輪筋の緊張亢進
眼瞼内反の対処法は?
- まつげの抜去(永久脱毛も)
- 手術
まつげの抜去は痛みはそれほどでもないようですね。ただ、自分で抜去しようとして途中で切れ、切り株になると目の表面をちくちく刺激します。眼科の医師が抜去してくれることが多いです。
眼瞼内反の手術法は?
- 皮膚切除
- まつげ近くの皮膚を瞼板に縫い付ける
- 眼輪筋(瞼板前)を部分切除する
- 眼輪筋や外し靭帯を眼窩外側骨膜へ牽引固定する
- 下眼瞼牽引靭帯(LLR)をまつげ近くの皮膚に縫い付ける
- 下眼瞼牽引靭帯(LLR)を瞼板から外す
- 下まぶたミュラー筋を瞼板から外す
- (埋没法もあるらしい)
などの手技を組み合わせます。絶対コレで治るという単一の手技はありません。。。睫毛内反症の手術と同じです。
受信する診療科は?
眼科か形成外科です。
手術の問題点は?
睫毛内反症の手術と同じです。
- 再発の可能性
- 過矯正(外反)
- 傷が露出し、くぼむ
- 睫毛乱生
- ダウンタイム(腫れと内出血)
眼瞼外反症は避けるべき合併症です。これを予防するためにも矯正が甘めになることもあり、すなわち再発(後戻り)も起こりやすくなるわけですね。
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下眼瞼内反症の患者さんをみてみましょう
頑固な眼瞼内反症です。これはつらい!目の表面が終始刺激され続けます。
- 皮膚切除
- 下眼瞼牽引靭帯の付け替え
- 眼輪筋(瞼板部)の部分切除
- 眼輪筋や外し靭帯を眼窩外側骨膜へ牽引固定
を行いました。
下まぶたの切開瘢痕が窪んでいるのが分かります。もう少しマイルドにできたらいいなあ
治療が必要かな?と思ったら眼科を受診してください。
※眼瞼内反(逆さまつげ)でお悩みのかたのために、写真を使用することを承諾いただけました。心より感謝申し上げます。(埼玉県の患者さん)
尚、当記事は特定の手術をプロモートするものではありません。まぶたの生理学を追究するものであり、いち形成外科医が考察する雑記であります。皆さんと情報を共有し、まぶたの真理を追究することが目的です。手術自体はリスク(出血、傷が残る、左右差、違和感など)があり、慎重に検討されるべきです。