他院で断られた方へ。複雑に絡まったまぶたの修正手術、私が引き受ける理由。

過去にまぶたの手術をした。だけど「不自然さを解消したい」という女性。医師との過去のやりとりが思い出されるのか、複雑な感情が湧いていることが読み取れます。

彼女が求めるものはいったい何?

目次

修正手術における因数分解とは

どこをどうすれば“不自然さ”を解消できるのか?それを解決したら彼女の心は救われるのか?私は思いを馳せます。

自然さ。

少なくともこれを、一言で表現することはできません。いわんや患者さん側がこれを言語にするのは簡単ではありません。

他のクリニックでも「何を求めているのかわからない。これは無理」と手術を断られてしまうでしょう。それでなくとも、一度メスを入れた組織は癒着し、硬くなり、解剖学的な構造が崩れてしまっています。多くの医師が敬遠するのは、決して不思議なことではありません。

なぜ、私がそんな手術を引き受けるのか。それは、『因数分解』によって解決の糸口が見えるから。

まず大切なのは、今起きている問題を整理すること(現状把握)。問題点を可能な限り抽出し、言語化します。私はこれを”因数分解”と呼びます。

様々な要因の掛け算の結果が、今の表現形。

  • 前葉に起きている問題点は?
  • 後葉に起きている問題点は?
  • 前葉と後葉との連動に問題は?

こうした要素をひとつずつ抽出します。いろんな要素の掛け算の結果が、目の前にある「不自然さ」なのです。

a✖︎b✖︎c✖︎d✖︎e=Z(現状)

因数分解
因数分解、分析する(これは一例です)

すると、やるべきことが見えてきます。ひとつ一つのエラーが明らかになったら、ストラテジー(戦略)を立てます。

そして、もうひとつ。今までの手術の失敗の原因、それは「形への執着」なんですね。そのために機能的な動きを犠牲にしているわけ。この無理な形をほどくという視点もあります。

aが不足したらbを補強し…bが強くなるとdが抑えられるから…cを増やし…。そうやって複雑系全体のバランスを調整。そして最後は未知の係数であるe(本人のポテンシャル)が、結果を大きく握ります。

眼瞼下垂他院修正の戦略プラン
戦略プラン(これは一例です)

※脂肪の再配置:眼窩脂肪を重瞼の谷間に連結し、前葉と後葉との連動を緩衝します(グライティング:滑りの関係)。これは眼瞼下垂手術をするときに、可能な範囲ですべての人に無条件に適応しています。再手術も容易にするというメリットもあります。関連記事:『眼窩脂肪の再配置』

こびりついたテープを破らないように剥がすように、癒着を剥離する

機能美

わたしのこだわり、「機能=自然さ」。それは「二重を何ミリにするか」よりも、「楽に目が開いて閉じること」。まぶたの内部構造を正しい位置に戻すことです。目の開きを何%アップ!という世界ではありません。むしろベースポジション(基本形)に戻すことなんです。

戦略を共有

プランができたら、それを患者さんと共有。不安の霧が少しずつ晴れてきて、視界が明るくなります。

そして大事なこと。患者さんと執刀医とで「80点を目標とすること」を共有。100点満点は目指しません。100点に近づくほど大きなリスクを取る必要があるから。極力安全な道を選ぶこと。気持ちの余裕がお互いに生まれます。

さらにこの姿勢には、もうひとつの利点があります。患者と執刀医の価値観のずれを”-20点”で緩衝できます(価値観が完全に一致することはありえないから)。

「自然にします」「もとに戻します」と保証するような言い方は、私は決してしません。結果をどう受け止めるかは本人次第。そして結果、患者さん自身が「あれ、元の私に戻ってる…」と自分で気づいて報告してくれる瞬間、私はこれ以上ない喜びを感じます。

医療は向かい合って座り、議論を戦わせる場ではありません。私は山登りのガイドです。あなたと同じ方向(ゴール)に眼差しを向け、あなたをサポートしながら一緒に登ります。

モデルさん

「治せるでしょうか…」

重瞼のラインが複数…各々のラインが譲り合うことなく、競い合うように自己主張するのがわかります。

新しい(骨格的、機能的にふさわしい)二重ラインをデザインし、これをしっかり支えることで改善を図りました。上に例として挙げた、因数分解と戦略が、本ケースにあたります。改めて見直してみてください。

手術で、ひとつひとつ丁寧にクリアしていきます。プラン通りの手順で機能的な再建を行います。

そして術後半年。新しいデザインの二重の主張が強いのがわかりますね(理想は伏し目にした時に平坦になること)。とはいうものの、ここまで強めにサポートしないと、他のラインの主張を打ち消すことはできなかったでしょう。

彼女が求めているもの。それは自由な機能だったのですね。

まぶたをいびつに変形させる、強引な力から解放すること。これが、自然な形への近道になることは知っておいて損はないでしょう。

眼瞼の機能的最適化手術
機能的に最適化を図る
二重のラインの修正
機能を回復することが、自然さを回復することと両立する

正直なところ、組織不足の中、たった一回の手術でよくぞここまで治ってくれたという、胸を撫でおろす思いです。未知数(不確定な要素)が多い中、やはり本人のポテンシャルに依存するのが、この類の手術でございます。シェアに協力いただき心より感謝申し上げます。※あくまでn=1ストーリーです。結果は各個人で異なります。

患者さんの経過を振り返ると、前向きな姿勢と私を信じてくれる気持ちに大いに助けられました。

追記:「自然な形」とはなんでしょう?(個人的主観)

初回手術で、「自然に仕上げる」という言葉には矛盾があるって気づきますか?

「自然であること」はすなわち、手付かずのままの状態であろうと思うのです。つまり、「手術で自然にする」って本質的に矛盾するんですね。正確には、「自然に見えるようにする」「自然ぽく仕上げる」ということです。つまり、人工的な操作の中に「手付かずっぽさ」を盛り込むのです。だから、そこには私の「意図」が反映されるし、ある種の人工的な成果物であることには変わりはないのですね☺️。それでも「自然ぽさ」を追求することが、わたしにできる最大の努力だと考えます。

なお、手術によって「不自然」になったものを丁寧に治すことで、「自然さ」を回復することは文字通り自然なことですね。

関連note記事『アンチエイジング手術が求める「自然さ」とは何か?』

眼瞼下垂手術のリスク、併発症(合併症)

<短期的なもの>腫れ、出血、感染、傷の離開、目の閉じにくさ、視力の変化、ふたえの線の乱れ

<長期的なもの>眼脂(めやに)・涙の増加、眩しさ、まぶたの腫れぼったさと赤み、稗粒腫、霰粒腫、縫合糸の露出、目の違和感・ツッパリ感、皮膚のしびれ・痛み、目立つ瘢痕、低矯正・過矯正

<仕上がりに関するもの> 左右差、眉毛下垂・顔貌の変化、まぶたの見かけに対する違和感、眼瞼下垂の再発、眼瞼けいれんの顕在化・悪化

左右眼瞼下垂他院修正手術:60〜93万円程度

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