眼瞼下垂症手術というと、「下がったまぶたを持ち上げて、目を大きく見開くことができるようにする」と一般的には考えられているかもしれません。しかし、目を大きくしない眼瞼下垂症手術もあります。
目を大きくしない眼瞼下垂症治療とは?
対象は代償期の腱膜性眼瞼下垂症
代償期の腱膜性眼瞼下垂症では、眼瞼挙筋の予備力や前頭筋の作用でまぶたが持ち上がっています。
修復のポイントは、眼瞼挙筋の予備力や前頭筋の作用を利用しないで、適切な程度にまぶたが上がるようにすること。
その方法とは?
- 開瞼抵抗(まぶたを持ち上げる際のブレーキになる構造;下位横走靭帯、隔膜、挙筋腱膜外角など)をリリース
- 挙筋腱膜は前転(前方に引っ張り出すこと)をせず、redraping(そっと敷き直す;腱膜にテンションがかからないように)して挙筋腱膜を腱板へ固定
その結果…
眼瞼挙筋の余計な収縮が不要になります。前頭筋もリラックスして眉が降りてきます。まぶたの重たさから解放される一方、目は極端に大きくなることはありません。自然な顔つきになります。むしろ開瞼量(上まぶたと下まぶたの間の距離)が小さくなることすらあります。
眼瞼下垂症手術とはたるみをとって吊り上げるとかそんな単純なものではないのですね。
物理学、機能解剖学、神経生理学に基づいた機能的眼瞼形成手術です。
このことは平成24年に
金沢雄一郎:開瞼量を増大させない眼瞼下垂症手術、第35回日本美容外科学会総会、東京ドームホテル
で報告しました。私の説明が上手くなく、少々理解しにくい概念だったと思われ、反応がイマイチでした😭
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実際のケースを見てみましょう。60代女性。
術前でも瞳孔はしっかり出ており、視野が狭くなるまでには至っていません。しかし、まぶたの重さと、疲れがひどく起こります。おでこの力をフル動員しているのが分かりますね。(ちなみに若い時は目がこぼれ落ちそうと言われるくらい大きな目をしていたそうです)
手術後、おでこの力が緩み、眉が下がってます。一生懸命にまぶたを持ち上げようとしていたのが嘘のようです。
ゆるい力でまぶたが開くようになりました。
眼瞼下垂症治療啓発目的での写真使用に承諾いただきました。ありがとうございました。