「頬がビリビリするんです…」
そう訴えるのは他院で眼瞼下垂手術をした患者さん。ぱっと見は綺麗な仕上がりです。
眼瞼下垂症手術の併発症としての異和感(違和感)
傷を作れば、かならず傷跡になります。少なからず感覚にも影響を及ぼします。しかし、病的に異常感覚を伴う場合もあります。
その原因の一つに、「過剰な前転」があります。眼瞼下垂の手術では挙筋腱膜を引っ張り出して固定するのですが、引っ張り出しすぎてるケースがあるのです。ズボンがずり落ちるのでベルトの穴を一つ分締めれば良いところを、二つ三つ締めてしまうようなものです。これでは眼瞼挙筋が引っ張られ過ぎになり、まぶたが悲鳴をあげるのです。
なぜ、「過剰な前転」をするのでしょうか?
- 目を大きく仕上げたいという患者さんのリクエスト
- 左右差を減らすため
- 開瞼抵抗を解除していないため
諸般の事情で過剰な前転が行われます。大多数の人は問題なく経過しているようですが、一部に敏感な人がおり、まぶたの悲鳴を感じ取っているのです。
冒頭の患者さん
よく観察すると下まぶたの眼輪筋(がんりんきん)の緊張が見られます。眼輪筋は目を閉じる筋肉です。目が開きすぎるので、反射的に眼輪筋のチカラが動員されているのでしょう。神経生理学的には、眼瞼挙筋が引っ張られるとミュラー筋が刺激され、眼輪筋の収縮シグナルが生まれます。
「眼輪筋のけいれん」が頬のビリビリ感の原因と推察されました。過剰な前転もその時に疑いました。しかし、過剰に前転されたものを元に戻す手術は簡単ではありません(再癒着の問題)。
まずは、ボツリヌス毒素治療で経過をみることとしました。目周りにボツリヌス毒素注射を行い、眼輪筋の痙攣を取り除きました。頬の異和感も消失しました。まさに診断通りです!
しかし、ボツリヌス毒素の効果が切れてくる(正確には筋肉の動きが復活してくる)と頬の異和感が再発しました。
結局のところ、患者さんの強い希望により手術を行いました。つまり、挙筋腱膜の連結を解除する手術です。
挙筋腱膜に縫合の糸を見つけ出し、丁寧に慎重にこれを摘出します。挙筋腱膜の連結を外してそのまま皮膚を閉じました。結果、見事に頬の異和感が消えたのです。
そして傷が落ち着くのを待ち、改めて腱膜固定を行いました。頬の異和感の再発もなく、ことなきを得たのです。
「他院修正」は予測できないことが多く、正直手術自体も強くお勧めできるものではありません。患者さん自身もその点を十分に理解し、そして挑戦する気持ちになっていただく必要があります。
患者さんの勇気に感謝です。
眼瞼下垂術後でお悩みのかたのために、写真を使用することを承諾いただけました。心より感謝申し上げます。
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