まぶた治療に特化した形成外科専門医が作った眼瞼下垂情報

眼瞼下垂の他院修正手術はなぜ敬遠されるのか?執刀医視点で解説

こんにちは、形成外科専門医の金沢です。

「まぶたの修正手術を別の先生にお願いしたけど、嫌がられてるんです」

断られることも多いのが眼瞼手術の他院修正です。

他院修正(たいんしゅうせい)とは?

まぶたの修正手術が必要。しかし、初回(前回)手術の執刀医とは別の医師にその手術を依頼することがあります。その修正手術を「他院修正」と言います。医療者側視点の言葉です。

厳密に言えば、「他の医師執刀の修正手術」となります。

眼瞼下垂手術の修正の対象は、低矯正、過矯正、予定外重瞼線、ハム目、重瞼線(ふたえの谷間)の変更です。

一般の外科医は、他院修正手術の執刀はしたくありません。なぜでしょう?

理由は3つあります。

  1. 瘢痕組織を剥離する(さばく)ことが難しい上、組織不足もある
  2. 前回までの手術で何がなされているのかが不明
  3. 修正手術で満足してくれるかどうか不安

修正手術は、仕上がり(結果)を予想するのが極めて難しいのです。

「初回手術」は新しいプラモデルの箱を開けて組み立てるようなもの。モデルの種類のよって難易度は変わりますが、慣れれば仕上がりはある程度は想像できますよね。

しかし、「他院修正手術」はすでに組み立てられたプラモデルが箱に収まっている状態。これを再び分解して組み立て直しましょうということです。

①瘢痕組織の剥離の難しさ、組織不足

想像してみてください。瘢痕組織をキレイに剥離していく作業とは、プラモデルの接着剤を丁寧に剥がしていく工程です。そして各々のパーツを明らかにしていくのです。とくに「まぶた手術の修正」は糊付けされた封筒を、丁寧に破らずに開封するようなものです。

さらに「瘢痕組織の剥離」は、出血を伴うというおまけ付きです。

おまけに、組織不足。つまりパーツが足りないという状態も往々にしてあります。新しいパーツを付け加えることはできません。

「心労甚だしい」ということがお分りいただけると思います。初回手術3人分よりも気力体力を消耗します。

現実問題、剥離の過程でパーツが破損することもあります。そのリスクを回避するルート、もしくはその損害を最小限にして、かつリカバリーの効く方法を模索します。

修正手術にお決まりのレシピ、術式はありません。もちろんテキスト、教科書もありません。ひたすらに術者の経験に依存します。

②開けてみるまで分からない

皮膚切開するまでは「封をされた箱に収まった状態」です。したがって、術前情報が極めて乏しく、曖昧なんですね。箱を開けてみたら、「うわ!こんなになっていたんだ!」です。

縫合の糸がくちゃくちゃに絡まっていることもありました。前医の四苦八苦が読み取れます。ベストを尽くして結果を出そうと頑張ったんだなあと感じます。

一方、「何も無い」こともありました。「眼瞼下垂手術されて無いね。皮膚切っただけだね」。でもこう思うようにしています。「少なくとも術者がまぶた手術に精通していない状態で、無理な侵襲を避けたんだな」と。実際、このようなケースは修正手術が楽です。

③満足が得られるかどうか?

患者さんのキャラクターに不安を覚えることもあります。

100点満点をお望みなのでは?そうなると修正手術の無限ループに突入します。

前医との信頼関係を失っているケースもあります。前医を攻撃する患者さんを前にすると、自分もそのうち攻撃の対象になるのかなと心配になるのです。

修正手術を得意とする医師とは?

修正手術に「王道」はありません。残された、限られたパーツを利用して再建するのです。足りないパーツで再建するのが現実ですが。

修正手術を得意な医師とは、多くの修正手術を行った医師です。修正手術を手がけるたびに、彼らの頭に「データベース」が蓄積されていきます。そのデータベースを元にさらに修正技術に磨きがかかります。

トラブルケースは論文になりません。学術集会などでも情報が共有されにくいのです。だから若い医師は修正手術の技術を習得する機会に恵まれません。

もし、あなたが修正手術を希望していたら?

修正を担当する医師に言われるでしょう。

  • 結果は保証できない
  • さらに追加手術を必要とする可能性もある
  • 完璧を求めない

以上のことを十分に納得、理解して臨みましょう🤔厳しい現実です。

より安全に修正するためにできること

今までの治療内容、経過を把握することです。前医の紹介状(可能なら手術記録)を持参しましょう。

そして、これから初回手術を受ける人も、手術内容をよく覚えておきましょう。

例えば

  • ミュラー筋を触ったか
  • 皮膚、脂肪を切除したか
  • 何箇所で腱膜を留めたか

などです。

実際のモデル患者さん1 4度目の正直に挑戦

左の眼瞼下垂。過去に3回も眼瞼下垂手術。過去に「どのような内容の手術を受けたか、私にはさっぱり分かりません」という、まあよくある状態😓。

話では最後の手術は10年以上前とのこと。まぶた専門の医師でもなかったとのことで、修正手術で改善する可能性があると判断しました。

前医がまぶた専門の形成外科医だと、やるべきことをすでにやり尽くされている場合が多いので改善の余地が少なくなります。

術中所見で、眼瞼挙筋に数本の糸が絡み付いていたましたが、挙筋の動きは認められました。

挙筋腱膜を無事に修復。

眼瞼下垂の他院修正の手術
左の眼瞼下垂修正をした。眉の高さも揃ったのがわかる

術後に左眉の位置が下がったの分かりますか?その結果、目を閉じやすくなったのです。

他院修正後
目を閉じやすくなった
実はこのパターン、皮膚を取られすぎて皮膚不足な患者さんに有効なのです。

経過の詳細はこちらの記事へ「治療困難が予想された他院修正」

実際のモデル患者さん2

「また、まぶたが下がってきたんです。左が重いんです」

4年前に眼瞼下垂症手術を受けた50代の女性。「左眼瞼下垂症」「他院術後」と診断しました。

「結果が保証できない」ことの了承を得て、左の手術に挑みました。

手術所見

前回の手術切開部位より皮膚切開(皮膚の瘢痕は切除)しました。眼輪筋の中に縫合の糸の塊が3個埋まっており、これを摘出しました。この糸は瞼板には固定されていない状態。

挙筋腱膜および瞼板前組織は比較的きれいに保たれています。

改めて挙筋腱膜固定を3点で行い、眼窩脂肪が奥へ退縮(引っ込んでいた)していたのでこれを前転しました。

眼瞼下垂他院修正。左のみ
眼瞼下垂他院修正。左のみ

結果、無事に経過をしました。興味深いのは右の挙筋機能も回復していることです。「挙筋スイッチ」が入ったのです。

関連記事

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挙筋スイッチをオン

ただし、左の挙上が右に比べてやや大き目であることも気になります(過矯正)。今後注意深く経過を見守る必要があります。

まとめ

以上、

  • 他の医師が執刀した眼瞼下垂手術の修正は難しい
  • 他院修正が敬遠される理由
  • 実際のモデル症例

を提示しました。

さて、あなたは、

  • まぶた手術を二回以上経験していますか?
  • 修正を検討していますか?
  • 100%の仕上がりではなく、80%の仕上がりで満足できますか?

あなたのまぶたは有限です。大事にしましょうね。

サイト内参考記事

外科医はより多くの術式や手技を知っておく必要がある。それは術式特有の合併症、トラブルがあるから。参考記事:『眼瞼下垂の他院修正:術式を瞬時に理解することが必要』

頻度の高い、しかし難易度の高い修正手術。参考記事:『広すぎる二重(ふたえ)を狭く治す他院修正』

 

他院修正に挑む外科医の頭の中

どんなことを思考して戦略を練り、提案し、術中に何を考えているか。一部を動画で紹介します。

追伸

1週間に2人、3人の「他院修正」をすることがありますが(2023年現在)、私の体力(気力)は限界に達します。「燃え尽きた灰色の明日のジョー」状態です。

金沢のイラスト
かなざわ
でも辛いのは患者さん本人。頑張ります。😤

参考:

『他施設手術後の変形症例とその修正手術の実際』 山下健 PEPARS No.160

 

他の症例写真は続きページへ…

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