写真のAとB、CとD、EとFを見比べてください。それぞれ同一人物です。違いが分かりますか?(出典は下に記載)左の列と右の列との比較です。
左は治療前、右が治療後です。
眼瞼下垂の修復で、ふたえ幅は狭くなる(狭くする)
眼瞼形成後(皮膚たるみとり、脂肪切除、眼輪筋切除など)の特殊な病態(幅の広い二重、目の上の落ち窪みなど)を指摘し、これを修復するという論文です。
◎Clin Ophthalmol. 2019; 13: 2035–2042.Pathology Of “Post-Upper Blepharoplasty Syndrome”: Implications For Upper Eyelid Reconstruction
実際の手技として、眼瞼下垂手術を行いつつ、重瞼(ふたえ)の谷間を低く設定し直すというものです。※これ自体は何ら特殊なことではありません。
内容はさておき、上の写真の左右の違い、分かりましたか?
ここで、重要なポイントがひとつあります。
「眼瞼下垂術後の方がふたえ幅が狭く、皮膚のかぶさりがある」
ということです。
なぜこの写真を引用したかというと、誤解をしている患者さんがたまにおられるからです。
患者さんの誤解とは?
「せっかく眼瞼下垂の手術をしたのに、皮膚がむしろかぶさってきました」
という感想をいただくことがあるのです。
正常なまぶたの開け閉めのためには、
- まぶたの前葉の余裕
- ふたえの谷間の上部の脂肪組織
が必要なのです。
だから皮膚がかぶさってくるくらいで正常なのです。かぶさるくらいで正常に機能するのです。
invaginationとグライディング機構が必要
「なぜまぶたの前葉に余裕が必要なのか?脂肪が必要なのか?」
まずは二重の谷間から奥に引き込まれる現象がありますね。invaginationという動きです。
※invagination;嵌入(the folding in of an outer layer so as to form a pocket in the surface;表層にポケットを作るように外層を折りたたむこと)
このためにも皮膚にゆとりが必要です。
さらに、
まぶたの前葉と後葉とのグライディング(抵抗の少ない、ずれのモーション)があることで、スムーズなまぶたの動きが得られるのです。
◎参考文献:Chen WP: The concept of a glide zone as it relates to upper lid crease, lid fold, and application in upper blepharoplasty. Plast Reconstr Surg.;119(1):379-86. 2007
ちなみに、「まぶたの前葉」とは皮膚と眼輪筋、「後葉」とは挙筋腱膜、ミュラー筋、結膜です。
前葉と後葉との連結は緩く、お互いに”スライド”する遊び(余裕)があるのです。
関連記事:『眼瞼下垂で確認すべきこと。前葉の下垂か?それとも後葉の下垂か?』
前葉と後葉との間を繋ぐ、柔軟な脂肪や結合組織が必要なのですね。
皮膚が被さるのが正常
30歳を超えたら皮膚の伸展収縮の幅も狭まります。まぶたの皮膚は閉じるだけでなく、開くときにも十分な量が必要です。
眼瞼下垂の治療をする場合、皮膚の余裕を残すことがいかに大事かってご存知でしたか?