霰粒腫(さんりゅうしゅ)でまぶたにしこりが。赤く腫れることも。

眼瞼下垂術後の霰粒腫
こんにちは、形成外科専門医の金沢です。
まぶたにできるシコリといえば「ものもらい」。
手術後にできるしこり、霰粒腫(さんりゅうしゅ)があります。今回はなかなかに頑固な霰粒腫を経験しました。
目次

まぶたにできるシコリ、霰粒腫(さんりゅうしゅ)

霰粒腫とは、マイボーム腺の出口が塞がって分泌物がたまり、まぶたの中に肉芽ができてシコリになる非感染性の腫瘤です。いわゆる、まぶたにできる「おでき」ですね。

まぶたの手術後に現れることが稀にあります。今回は手術後一年半でした。

関連記事:『眼瞼下垂手術の併発症』

霰粒腫の原因(病理)は?

まぶたには分泌腺(ぶんぴつせん)が多くあります。目の表面を保護する分泌物を出すため。

この分泌腺の出口がふさがります。行き先を失った分泌物がたまり、被膜(ひまく)に包まれたシコリに。

腺の被膜が破れると異物反応を起こし、赤く腫れて炎症を起こします(急性霰粒腫)。慢性化するとジュクジュクした肉芽(にくげ)が育ちます。

毛穴が詰まって「おでき」になるのと同じですね。

上まぶたにも下まぶたにもできます。

ずばり手術が引き金になるのです。まぶたの組織への侵襲により、分泌腺のルートを障害する可能性があります。

埋没法も切開法も同じです。

霰粒腫の治療は?

  • 無治療で経過を観察し、自然に消退するのを待つ
  • ステロイド注射で肉芽を縮小させる
  • 手術:切開して肉芽と被膜を綺麗に取り出す。まぶたの裏側もしくは表側(皮膚)からアプローチする方法があります。

参考:日本眼科学会

急性で炎症が強い場合は、皮膚切開をして排膿(はいのう)すると炎症は落ち着きます。(この場合は炎症を落ち着かせるのが目的なので被膜は残ることがあります。)

まぶた手術後の霰粒腫も例外ではありません。まずは、経過を見ます。自然消退(自然に落ち着くこと)が難しそうであれば切開します。切開した傷が皮膚表面にあるので傷跡に一致させて切開します。(そうすれば傷は増えませんね)

霰粒腫の予防方法は?

マイボーム腺の目詰まりを防ぐ目的でまぶたを温めることは良いかも。湿らせたタオルをあたためてまぶたにのせてください。眼精疲労も取れて一石二鳥ですね。(注意:炎症のあるときは温めないこと!悪化します。)

以下のことは誘因になるので避けましょう。

  • まぶたの縁をメークで蓋(ふた)すること
  • まぶたの縁を乾燥させること

waterline(ウォーターライン)(inline)メークをすると目を大きくする効果はありますが、医学的にはお勧めできません

マイボーム腺の活性化を抑えれば、予防になります。

  • 規則正しい生活
  • 糖質に偏った食習慣の見直し
  • 精神的ストレスを上手にコントロール

ニキビのケアと同じですね。

治っても再発するか?繰り返すか?

残念ながら治癒と再発を繰り返すことがあります。根本的原因に対する治療方法がないから。上に記載したように予防が大事です。まあ、再発するときは再発しますから…あまり自分を責めないでね。

霰粒腫の治療は何科?

眼科です。今回のケースのようにまぶた治療を形成外科で行なった場合はまずは担当した形成外科医師に相談しましょう。注:皮膚科は違います

人に感染る?

ひとにはうつりません。とはいえ、あまり素手でいじると細菌感染(もちろん自分に)を起こすかもしれませんので注意してください。

麦粒腫(ばくりゅうしゅ)とは違うの?

麦粒腫は、まぶたに細菌感染を起こした状態、いわゆるまぶたが化膿した状態です。毛嚢炎やニキビのようなものです。治療は感染のコントロールが主体になります。抗菌薬(抗生剤)や排膿処置です。眼科を受診しましょう。

(参考:日本眼科学会)

二重(ふたえ)のラインが変わることがある?

ありえます。

  • シコリそのものによって二重(ふたえ)の折れる位置が変わる
  • 治癒しても癒着が生じて二重の位置が変わる
  • 切開などの治療によって癒着が生じる

霰粒腫の治療でひと段落したら、形成外科や美容外科で相談しましょう。(健康保険の適用は医療機関の判断によります)

眼瞼下垂症術後に生じた霰粒腫の患者さん

眼瞼下垂術後の写真

眼瞼下垂治療は滞りなく終わっていた

眼瞼下垂症の治療は滞りなく終わったものの、手術から1年半後

「まぶたが腫れた!」と来院されました。

眼瞼下垂術後の霰粒腫

左まぶたが腫れた…

診断:術後の霰粒腫

  • 左まぶたが赤く腫れ上がっている
  • 左まぶたが挙がっていない
  • 境界明瞭な硬結(こうけつ)(シコリ)を左まぶたに触れる。瞼板(けんばん)にくっついているが、皮膚との癒着なし
  • 自覚症状は比較的つらくない(かゆみやいたみはなし)

「霰粒腫です。抗菌薬で様子みましょう。」

この場合の抗菌薬は

  1. 時間を稼ぐ:自然な経過で退縮する可能性を考える
  2. 感染症の可能性に対して

の理由で処方されますが、実質的には1.の理由です。

数日見て改善の見込みがなければ、患者さんも切開することを受け入れてくださるでしょう。

霰粒腫に行なった治療

保存的に経過を見ても改善が見込めなかったので、局所麻酔で処置。肉芽を掻爬(そうは)(掻き出す)しました。

赤みとむくみが長引きました…

1ヶ月経過しても名残が観察されます。

霰粒腫処置後1ヶ月の写真

霰粒腫処置後1ヶ月。

3ヶ月後には跡形もなくすっきり治っていました。 🙂

霰粒腫治癒の写真

霰粒腫処置後3ヶ月。無事に治癒した

何はともあれ、無事に治ってほっと胸を撫で下ろしました。お疲れ様でした

眼瞼治療の啓発目的に写真を使用することに同意いただきました。ご協力ありがとうございます(埼玉県の患者さん)。

まとめ

以上、

  • まぶたにできるしこり、霰粒腫
  • 眼瞼下垂手術後に霰粒腫になることがある
  • 実際のモデル症例

を提示しました。

さて、あなたは、

  • まぶたのものもらいを経験したことがありますか?
  • 赤く腫れても感染ではないものがあるってご存知でしたか?
  • まぶたの手術後に現れることがあり、避けられない併発症だと分かりましたか?

まずは慌てないこと。医師に相談しましょう。

追伸

ものもらい(霰粒腫、麦粒腫)の呼び名:

  • ものもらい(関東)
  • めばちこ(関西)
  • めいぼ
  • めもらい

参照:ロート製薬

地域によって、様々な呼び名があるようです。

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この記事を書いた人

金沢 雄一郎のアバター 金沢 雄一郎 形成外科専門医

医師免許(第400795号)、医学博士。形成外科専門医。大学病院で眼瞼専門外来を設立。2016年からは独立医師に。所属学会:日本形成外科学会、日本美容外科学会。
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