眼瞼下垂の手術をするなら……
「せっかくだから元気な目にしたい!もっともっと大きな目にしたい!」
私の回答は「No」です。
それはなぜか?
眼瞼下垂の手術の後に「目のツッパリ感」を感じる人がいるからです。他院で治療を受けた患者さんから相談を受けることが多いのです。

眼瞼下垂症手術では目を大きくしすぎないように注意
まぶたが開かれる時、綱引きが起きている
まぶたを開く時、眼瞼挙筋が収縮してまぶたを引っ張り持ち上げます。一方、まぶたが閉じる方向に働く抵抗もあるのです。
ゴムを引っ張ると縮んで戻ろうとしますよね。まぶたも同じです。開きすぎると元に戻ろうとするチカラが働くのです。まぶたの緊張がフリーな状態は薄目が開いている状態(視線は下向き)。
それよりも大きくなると、目を閉じる方向の抵抗が生じます。(逆に目を閉じると目を開ける方向の抵抗が生まれます)
目を大きくするほど抵抗が強くなります。スタートラインから3ミリ持ち上げるのに必要なチカラを3としたら、そこからさらに2ミリ持ち上げるのに「10」のチカラが必要になります。そんなイメージ。
だから、目を大きくするというのは抵抗に打ち勝ってまぶたを持ち上げるということになるので、負担が大きくなるのですね。
とくに「ギョロ目になって、違和感(ツッパリ感など)がつらい」と訴える患者さんは挙筋の前転が強すぎるのです。目が開きすぎるので、目を閉じる筋肉(眼輪筋)が不随意に(勝手に)収縮します。
それだけで、「綱引きが起きている」ということが分かりますよね。その綱引きをツッパリ感に感じるのです。

以上の理由から「目は大きくしすぎないこと」に注意を払います。どちらかと言えば「低矯正かなあ(もう少しあげてもよかったかなあ)」という程度。物足りないくらいが安全です。
低矯正(控え目)に仕上げることのリスク
左右差です。軽いチカラでまぶたが上がるということは、眼瞼挙筋のチカラのわずかの差が「まぶたの開き加減」に影響するのです。
チカラを入れた時、抜いた時、様々なまぶたのポジションがあるのです。それが自然なんです。わずかなチカラの差で表現できるというのは魅力ですよね。
一方、左右差は避けられません。
左右差を無くしたかったら、目を大きめに仕上げるのが確実なのです。前転を強めるほど開き加減は上限に近づくので差がなくなるのです。
実際のモデル患者さん

皮膚切除なし。シンプルな挙筋前転法(腱膜固定)による眼瞼下垂手術です。一見するとちょっと下がり目かな?と感じますが、無難な位置なのです。チカラが抜けてリラックスしているのが分かりますね。
ツッパリ感が感じられにくい仕上がりになります。
関連記事:『眼瞼下垂の治療をしても、顔の印象を変えたくない!』
※眼瞼下垂症啓発目的に写真を使用することに同意いただきました。ご協力ありがとうございます😊
眼瞼下垂手術のリスク、併発症(合併症)
| 短期的なもの | 腫れ、出血、感染、傷の離開、目の閉じにくさ、視力の変化、ふたえの線の乱れ |
| 長期的なもの | 眼脂(めやに)・涙の増加、眩しさ、まぶたの腫れぼったさと赤み、稗粒腫、霰粒腫、縫合糸の露出、目の違和感・ツッパリ感、皮膚の痺れ・痛み、目立つ瘢痕、低矯正・過矯正 |
| 仕上がりに関するもの | 左右差、眉毛下垂・顔貌の変化、まぶたの見かけに対する違和感、眼瞼下垂の再発、眼瞼けいれんの顕在化・悪化 |
詳細は別記事をご覧ください。『眼瞼下垂症手術の併発症(リスク)をあらかじめ知っておきましょう』
尚、当記事は特定の手術をプロモートするものではありません。まぶたの生理学を追究するものであり、いち形成外科医が考察する雑記であります。皆さんと情報を共有し、まぶたの真理を追究することが目的です。手術自体はリスク(出血、傷が残る、左右差、違和感など)があり、慎重に検討されるべきです。


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