「過去に他院で手術を受けました。私が二重幅を欲張ってしまって…やっぱり治したいです」
美容外科でまぶたの切開を受けたあとに、このような悩みを抱える人が後を絶ちません。でもどうか自分を責めないでください。今日はそのからまった糸を、一緒にほどいていきましょうね。
広すぎる二重幅を狭く治す
「幅を広げれば可愛くなる」という安易な公式を信じ、解剖学や機能を無視して切り刻む。これで後悔している人は一体何人いるのでしょうか。。。
修正手術は初回手術と異なり、癒着を剥離するプロセスが必要。初回手術は手つかずのプラモデルの組み立てですが、修正手術は接着剤でガッチリ組み立て上げられたモデルを解体するところから始まります。
それに加えて皮膚・筋肉・脂肪がすでに切除されており、部品が不足した状態での組み立て直しをする場合もあります。
つまるところ、初回手術よりも相当難易度の高い手術ということ。
「他院修正」とは前回までの手術が別の医師によるものであり、その修正手術のことを指します。情報不足、材料不足の状態。
手術プラン
(1)まずは外見からの評価
- 皮膚は足りているか?
- 切開線の高さ(二重の谷間の位置)
- 皮下組織は足りているか
- 皮膚のやわらかさ(追従性)
- 瘢痕拘縮
診療情報提供書による、今までの治療履歴も大事。
(2)手術中に行われる評価
- 組織量
- 眼窩脂肪
- 挙筋腱膜は健全に残されているか
- 瘢痕の硬さ
- 癒着の程度
- 瞼板の健全性
- 埋没の縫合糸が奥にないか
診療情報提供書の内容や患者さんの申告は完全には信用しません(ここ大事)。様々な可能性を想定しておきます。
一番のバッドシナリオ:切開瘢痕と瞼板とが、間に組織を介在することなく直(じか)に癒着している場合。組織不足と瞼板の歪み、そして眼窩脂肪が切除(まぶたの厚ぼったさを減らす目的)されているのが観察される。挙筋腱膜も離断されてひっこんでしまっていることも。
ココだけの話、古い外科医に多いです。ごっそり皮膚と組織を切除して…(続きは登録後)⇩
注)前医の手術を否定する意図はありません。初回手術の時点で、患者さんが求める最大の結果を出そうとベストを尽くしていると思うからです。
手術手技
「切開線の高さが高すぎる」=「眉下の皮膚が不足」
これが美容手術系の問題です。「二重幅を広くしたい」という思惑でおこる現象。
二重の谷間部分は奥に滑り込みますよね(「二重ポケット」)。滑り込むためには眉下の皮膚のゆとりが必要なのです。それにもかかわらず、高いところで切開されていると、滑り込む皮膚が足らずに目を大きく開くことができません。(おまけに初回手術で皮膚が切除されていることがほとんど)
手術デザインで、二重の谷間をまつ毛より(低く)に新しく作ります。元の二重の谷間の瘢痕は残し、谷間が滑り込むための皮膚を補います。(この二重の谷間が滑り込む構造を「二重ポケット」と呼んでいます。)

はじめに眼瞼挙筋を探します。ここが出発点。それからミュラー筋の癒着の程度や眼窩脂肪などの評価を行い、修復していきます。
手術の骨格(本筋)は「眼瞼下垂手術」です。挙筋腱膜の連結を復元し、目を開くときに二重の谷間が滑り込む、機能的な二重(ふたえ)の作成を目指します。
そして最後の難関。
新しい二重の谷間を作成するにあたり、「古い二重ラインが消失してくれるのか」という問題があります。
二重の谷間の癒着を無事に剥離できたとしても、その部位直下の組織が不足している状態にはかわりがありません。またそこで癒着をおこし、折れてしまうのでは?という懸念があります。
そのとおりです。正解。
そのため、眼窩脂肪などクッションになる組織を充填します(しかしそれもかなわないことも)。さらに、新しい機能的な二重部分での吊り上げ処置サポート(一週間)を行い、古い二重の癒着を防止します。
参考記事:『眉への吊り上げ法。眼瞼下垂手術後の予定外線予防のために』(内部リンク)
新しい二重の谷間が“機能”するようになると、過去の二重の谷間が浅くなっていく現象が観察されます。
この点は私の想像(期待)を超えており、救われる部分です。(ただ新しい二重の谷間が機能しないとこの限りではない)
本来あるべきカタチのほうが安定するということのようです。「形を整えるのではなく、動きを整える」事が大事。『機能が回復すれば、見た目は勝手についてくる』という真理です。
『形態は機能に従う』 (Form follows function)
アメリカの建築家:ルイス・サリヴァン
手術の結果の見込み
手術の効果がどの程度見込めるのか?という問い。
上の(2)に記載した通り、開けてみないと評価できない項目が少なくありません。加えて、新しい二重(ふたえ)が定着してくれるかどうかについても不確定です。
つまり「やってみないとわからない」。
卑怯な言葉で申し訳なく思います。しかし「絶対よくなる」という表現は、医師として不誠実だし嘘になります。
思ったような結果が得られないこともあります。生じた結果を受け入れる心の余裕も必要です。場合により複数回の手術が必要になり長期戦になる覚悟も。
お互いベストを尽くし、天命を待ちましょう。
もちろん、その天命を少しでも引き寄せる唯一の手段が、「機能回復」こそにあると確信しています。
他院修正モデルケース
モデル
全切開重瞼術後、いわゆるハム目と言われることもある形態です。

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他院での全切開後の状態でした。今回は眼瞼下垂手術で二重を修正。新しい二重の谷間をデザイン。古い瘢痕は切除しません。
術後はつり上げサポート処置を一週間行いました。
ところで、なぜ新しい二重は「安定する」のでしょうか?
それは、新しい二重の谷間のほうが機能的だからです。例えばあなたの「手のひらの生命線」を見てください。これは筋肉の働きによって生まれる谷間です。だから消えませんね。一方、生命線より一センチ親指側を切開したとして、その谷間(折り目)は安定するでしょうか?。すぐに浅くなってしまうのは目に見えています。それは動きと無関係で機能的でないからですね。
「本来あるべきカタチのほうが安定する」ということですね。
サイト内参考記事
他院修正は医師からお断りされることが多いです。その理由を解説。参考記事:『眼瞼下垂の他院修正手術はなぜ敬遠されるのか?執刀医視点で解説』
外科医はより多くの術式や手技を知っておく必要がある。それは術式特有の合併症、トラブルがあるから。参考記事:『眼瞼下垂の他院修正:術式を瞬時に理解することが必要』

修正手術を検討している人へ
手術の際に組織が切り取られることがあります。その程度が、修正可能性に影響を与えます。組織不足は、決定的に修正可能性を低めます。そして回数を重ねるほど後々の修正手術は困難を極めます。可及的に早い段階で、熟練した医師に依頼してください。
そして、修正を繰り返すのはこれで終わりにしましょう。回数を重ねるほど、あなたのまぶたの『可能性』は削られていきます。
よくある質問
- 修正手術はいつからできますか?
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組織が落ち着くまで通常は半年待ちます。3ヶ月程度で最終形態の予測が可能になります。術後早期の修正を提案することはまれですが、心配で心を病んでいる場合は診察にいらしてください。ある程度の見込みや方針をざっくりお話することで気持ちが落ち着くかもしれません。また、早期の場合はまぶたのリハビリケアをご案内することもあります。
- 前医の紹介状(診療情報提供書)は必要ですか?
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あることが望ましいです。情報が多いほど有利です。ですが、「信頼関係がこわれて医院に行くのが怖い」という方は無理しないでください。更に心が傷つくだけです。
他院修正に挑む外科医のマインドセット
外科医が何を考えて戦略を紡ぎ出すのか。その思考の一部を紹介します。
あとがき
修正手術を手掛ける上で思い知らされるのが、初回手術の重要性です。皮膚を取りすぎないこと。組織を切除しすぎないこと。極力低侵襲に留めること。「過ぎたるは及ばざるが如し」とは言われますが、「及ばざる(物足りない結果)」の方が圧倒的により好ましいです。
思えば、ヘアカットは切り過ぎてもまた伸びてきますものね。人体も再生してくれたらよかったのにね。あ、でも私の毛髪はどんどん薄くなっていく一方です。

尚、当記事は特定の手術をプロモートするものではありません。まぶたの生理学を追究するものであり、いち形成外科医が考察する雑記であります。皆さんと情報を共有し、まぶたの真理を追究することが目的です。手術自体はリスク(出血、傷が残る、左右差、違和感など)があり、慎重に検討されるべきです。

