「切らない眼瞼下垂手術の経過が思わしくない…」
「切らない眼瞼下垂手術」って?
ざっくりいうと、
- まぶたの下がり(眼瞼下垂症)を治す手術
- まぶたを持ち上げるスジを縫い縮める
- まぶたの裏側からアプローチする
まぶたの皮膚表にキズができないメリットがあります。
「切らない眼瞼下垂手術」による改善効果が一時的な事が多いのはなぜか?
まぶたを持ち上げる動力を伝える材料としてミュラー筋や結膜を利用します。理論的には効果はあります。しかし、ミュラー筋はふやけた昆布のようなやわらかい組織。糸で縫い縮めても緩みやすく、再発しやすいのです。
物理学でなく、神経生理学的にみても一時的には改善効果が出やすい
縫合糸がミュラー筋を刺激し、ミュラー筋のスイッチが入ります。ミュラー筋自体の収縮力および挙筋自体の収縮能力がアップするためと思われます。時間が経過してミュラー筋が緩むとミュラー筋スイッチがオフになり、ミュラー筋と挙筋の収縮能力が落ちて眼瞼下垂が再発します。
緩みが起こらなければ、効果は持続します。うまく挙筋腱膜が瞼板まで固定されていれば再発リスクは低くなります。(理論的には埋没法では難しい。)
しかし、再発のリスクを考慮しても、表にキズを作らないとか、ダウンタイムが短いというメリットは魅力ですね。

切らない眼瞼下垂手術の修正手術は可能だろうか?
「再発してしまった…」
としたら、通常の眼瞼下垂手術をお勧めします。
その際、通常の眼瞼下垂手術に加えて、ミュラー筋の瘢痕(手術によってもたらされる、組織が線維化した部分)を外す処置を行います。
可能であれば縫合の糸を摘出しますが無理はできません。ミュラー筋や眼瞼挙筋を必要以上に損傷するリスクがあるからです。
実際のモデル症例(他院修正)
他院で「切らない眼瞼下垂手術」を受けるも経過が思わしくないとのことです。

まぶたが重そうなのが伝わってきますね。彼女も「切らない手術」直後はまぶたが軽くなったと実感したそうです。すぐに下がってしまいましたが…
今回は、いわゆる腱膜固定による眼瞼下垂手術を行います。
この際、瞼板前およびミュラー筋の前面を剥離し、ミュラー筋にかけられた糸を確認しました。すじばった瘢痕を確認し、これを外して動きの自由度を回復させました。
そして、挙筋腱膜を瞼板に固定。
すっとまぶたが開くようになりました。
一年経過しても後戻りはないようです。
このケースは、いい意味でミュラー筋に過度な侵襲がなかった(片方に一本ずつの縫合の糸)ので再手術は比較的楽にできました。もし、ミュラー筋全体が瘢痕化するほどに操作されていたら修正手術は困難を極めたでしょう。
傷跡の比較。どちらが切る手術の後か分かりますか?

正解は、
上が「切らない眼瞼下垂症手術」の後。下が「切る眼瞼下垂症手術」の後。
です。
まぶた治療の啓発活動目的に写真を使用することに同意いただきました。ご協力ありがとうございます。(埼玉県の患者さん)
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あとがき
最近モノクロの可能性を考えています。モノクロ(白黒)の方が輪郭や質感の表現に有利と思われます。
カラー写真てみてて疲れませんか?情報が多すぎるのです。
このブログのように「形態」を主題として扱う場合はモノクロの方が合ってるかもしれないと感じる今日この頃です。