眼瞼下垂症に対する腱膜修復術で、眼瞼挙筋の収縮能力が復活するという学術論文

サボリモードの筋肉を覚醒させる
サボリモードの筋肉を覚醒させる

サボリモードの筋肉を覚醒させる

2011人におよぶ眼瞼下垂症患者の治療の論文(Matsuo K.)です。

目次

「腱膜性眼瞼下垂症やホルネル症候群の患者さんに対する手術で、眼窩隔膜を利用した挙筋腱膜前転を行うことにより、眼瞼挙筋の不随意的な持続的収縮が回復する」

Scand J Plast Reconstr Surg Hand Surg. 2003;37(2):81-9.Restoration of involuntary tonic contraction of the levator muscle in patients with aponeurotic blepharoptosis or Horner syndrome by aponeurotic advancement using the orbital septum.Matsuo K.

要約:

腱膜性眼瞼下垂症患者やホルネル症候群(交感神経の働きがブロックされ、ミュラー筋の収縮が無くなっている)の患者は眼瞼挙筋の裏側にあるミューラー筋(これが機械的伸展受容器を持つ)の感度が鈍くなっている。

正常な状態では、ミュラー筋からのシグナルによって眼瞼挙筋が無意識のうちに持続的に収縮させられており、このために開瞼を維持することができる。

ミュラー筋の感度が鈍くなるとシグナルが減少し、眼瞼挙筋の収縮も弱くなってしまう。

腱膜性眼瞼下垂症患者やホルネル症候群患者に対して挙筋腱膜固定を行うとミュラー筋の感度が復活し、眼瞼挙筋の収縮が戻るという仕組み。

私の眼瞼下垂症手術もこの概念に則って行っています。眼瞼挙筋の収縮能力が出てくる最低限度の挙筋前転で行います。単純に引っ張りだして吊り上げ固定するというものではないのです。

※ホルネル症候群(Horner syndrome)

頚部交感神経が傷害されるなどして交感神経の働きがブロックされることにより、傷害された側の目の縮瞳、眼瞼下垂、顔面発汗減少、眼球陥凹(見かけ)の症候が出現すること。

教科書的には、「眼瞼下垂が生じるのは交感神経支配であるミュラー筋が麻痺するため」とされています。

論文によると、

ミュラー筋の麻痺により伸展受容器としての感度が低下し、ミュラー筋からの求心性シグナルが減少、眼瞼挙筋の収縮自体も弱くなることにより眼瞼下垂が生じる。

と記されています。

ホルネル症候群でも、ミュラー筋の収縮能力が弱るだけではなく、眼瞼挙筋の収縮能力も弱くなってしまうのです。

ホルネル症候群の患者さんの腱膜修復を行うと、眼瞼挙筋の収縮能力も復活するのです。

ホルネル症候群の関連記事:『ホルネル症候群のまぶたに起きていること』

(2015年7月9日 加筆修正)
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この記事を書いた人

金沢 雄一郎のアバター 金沢 雄一郎 形成外科専門医

医師免許(第400795号)、医学博士。形成外科専門医。大学病院で眼瞼専門外来を設立。2016年からは独立医師に。所属学会:日本形成外科学会、日本美容外科学会。
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