筋膜移植術の限界についてのお話
片側の先天性眼瞼下垂症のメール相談です。
一般的回答としては、
となります。
瞬目(まばたき)の際、「健常」もしくは「術前の先天性眼瞼下垂症」のマブタでは目を閉じる正常な運動が見られます(厳密には少し違う)。
筋膜移植をしていない場合、まぶたを閉じるとき(眼輪筋が収縮)はゆったりとスムーズにまぶたが降りてきます。なぜならば、挙筋自体の弾力性と挙筋腱膜のすべり(あそび)があるためです。
一方、筋膜移植術では瞼板と移植筋膜が固く結合しています。筋膜も挙筋ほどの伸展性はない上に、筋膜が眉毛まで挙上固定されているので「瞬間的に目を閉じる運動」についてこられません。
下方視するときもマブタはとっさに下りて来られません(lig lagという)。
つまりまばたきが不自然に。
動画の最後では、目を閉じたままで眉毛を挙上するように指示しました。筋膜移植をした側のマブタが挙上してしまいます。筋膜が強く牽引していることがわかります。
このことは筋膜移植術の今後の課題であります。
モニター患者さん
本患者さんの右の眼瞼挙筋の動きは術中所見では「ゼロ」です。動画ではマブタの動きが見られますが、これはミュラー筋と上直筋の働きによるものです。ミュラー筋は3mm,上直筋は2mmほどまぶたの挙上力を有しています(松尾先生談)。
今回は目元のみの公開を承諾いただけました。ご協力ありがとうございました。

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追伸
筋膜移植術に関しては、術前術後の写真はあまり過信しないことをおすすめします。
写真と実際の動きにはギャップがあります。もし、写真を参考にするなら下方視の写真を見てください。
(2015年9月15日加筆修正)
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